新犯罪者の思案
どこから人は犯罪者になるのだろう
血に染まった己の手を見つめ誰とは言わずボクは問う。
誰も答えない。当たり前だ。ここで心臓の動いている人間はボクしかいない。周りにはさっきまでボクと同じように動いていた人間が転がっている。
とりあえずボクは犯罪者だな
ボクはボクが犯罪者になった原因を見つめながら頭をかいた。右手には数分前まで活躍していたナイフが握られている。
人は刺しても血がふきでるのか
いや違うな、これは引き抜く時に出るんだな。
でも出すぎではないか、せっかく初陣だと思って一張羅着てきたのに。
完全に裏目に出たな。
こんなに返り血浴びようとは思わなかった。なんてこった、とんだ誤算だ。もったいない。こんなことなら血が出ない方法でやれば良かった。
もうこの服はさすがに着れない。
ボクは肩を落としながら、念のため持ってきた服に着替えた。そのままボクは流れるような手つきで一張羅に火をつけ、さっきまで動いていた物と一緒に燃やした。
そろそろ逃げねば
真夜中といえど人が来てしまう。ボクは鼻歌を奏でながら、しかし足早にその場を去る。
そういえば、どこから人は犯罪者になるんだっけ
ボクは思い出してもう一度問う。誰にとは言わない。答えも返ってこない。今はそれでいい。まだまだ殺らねばならない人間はたくさんいる。そのうち答えも返ってくるだろう。
気軽に行こう
とボクはボクにつぶやいた。