お嫁さんのひかりさん
栗毛のふわふわな長い髪。
タンポポ色のワンピース。
ワンピースもニットでふわふわ。
上には焦げ茶色のダウン。
靴は、リンドウのような青みがかった薄むらさきの長靴をはいている。
子どものような無邪気な雰囲気で、口角が上がるとえくぼができる。
眉上で切られたぱっつん前髪が似合うお嫁さんだ。
僕はそそくさとこたつに戻った。
「さみいさみい~」
息子さんも、お土産を仏壇に置きに中へ入る。
「ひかりさん、ゆっくりしていってねえ
ここらの冬は寒さで凍みるからねえ、部屋あっためてあるからねえ」
お嫁さんの名前はひかりさん。
「ありがとうございます、これ、うちでつくったのでお裾分けですー。あとくろちゃんにお土産です。」
僕へのお土産!きらきら星のひかりさんから。
なんだろなんだろ
そわそわするけど、それで出ていくと恥ずかしいから待っている。
「凍み豆腐!」
息子さんが台所へ行ってお鍋のふたを開けていた。
息子さんの大好物。僕のかのじょはしっかり覚えていて、この時期には毎回、味のしっかり染みた凍み豆腐を煮るのだ。
「あらっ!手え洗ったの? もう、こらっ」
玄関に居た かのじょと、ひかりさんも中に入ってきた。
僕は お裾分けじゃない方のお土産をじっと目で追った。ひかりさんの手提げを。
臭いはしないし、食べものじゃないな?
おもちゃ、か。僕を満足させるものはだいぶ難しいぞ。
と思ってそっぽを向くが、やっぱり気になる。
息子さんとひかりさんが、息子さんの部屋にいったん荷物を置きに行った。僕はそろそろとかのじょに近づく。
「くろ太~お土産だって~ 何かねえ、美味しいといいねえ」
「ナアァ」ひかりさんのはたぶんおもちゃだ、と思いながら返事する。
息子さんたちが二階の部屋から降りてくると、3時のお茶になった。
「レッツティータイム!ひかりっ」
謎なテンションの息子さん。
なんだかやばそうな気がする。
こういうのには関わらないのが一番、と居間からちょっと離れた台所の床暖房の上へ避難する。
「いつもの饅頭と、ちょっと変わったケーキ買ってきたー」
やばいのはケーキだな、きっと。
いつもの僕への大好物はあるかな?
「あれ?ケーキ買ってたんだね、気づかなかった」
とひかりさん。
こっそり買ったと思われる。
「じゃあ紅茶を入れるからねえ、座って待っとってね~」
お湯が沸いてダージリンを入れると、茶葉のいい匂いがしてくる。僕はこの匂いが嫌いじゃない。
かのじょがケーキ皿とフォークを一緒に、おぼんに乗せて紅茶を運ぶと、待ってましたと息子さんが立ち上がる。
「じゃあ箱開けるねー」
ひかりさんがケーキの箱を開ける。
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