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233:目的達成、そして

 セレモニー終了後、俺達は王城の広間に集まっていた。

 そこには俺と共に旅をしていた者達と、統一国の領主達が集められていた。


「お待たせいたしました。では、今後の打ち合わせと行きましょう」


 最後にやってきたのは、統一国の盟主となったシャルロッテだった。

 民衆に演説をした後で汗を湯で流し、衣装を変えての登場だ。

 表舞台とは違い、見た目の派手さは抑えられたシンプルな衣装となっている。


「まずはリューイチ様。初対面時の非礼をお詫び致しますわ。貴方は最高の形でこの国を救ってくださいました」

「いや、こちらも挑発するような真似をして申し訳ありませんでした。それに、この結果に至ったのは皆のおかげでもありますので」


 あれほどツンツンだった王女が、素直に謝罪を述べてきた。

 だが、あれは俺の方もイラッときて悪態を付いてしまったからこじれてしまったんだ。

 そこはきちんと謝罪させて頂こう。悪かったと思う部分は筋を通さないとな。


「えぇ、もちろんですわ。リューイチ様と共に、各国を巡り問題解決をして頂きましてありがとうございます」


 仲間達の方に向けても一礼する。ある意味、王より立場の上なリチェルカーレはともかく、他の人達は臣下のようなものだ。

 そんな相手にすら、一人一人深くお辞儀をして返すとは、本当に王女は器が大きくなったんだなと思う。

 リチェルカーレはともかく、他の皆が恐縮しちゃってるじゃないか。特にメイドという立場のセリンは大慌てだ。


「問題解決……なぁ。ワシの国はこれでもかと言うくらいボコボコにされた訳だが」

「あら。そちらもわたくしの国をこれでもかと言うくらいボコボコにしておりますわ。お互い様ではありません?」


 コンクレンツ領のヘーゲが皮肉を言ってくるが、シャルロッテもまた皮肉で返す。

 元々はコンクレンツ側が幾度となくツェントラールへ進軍を繰り返し、少なくない被害を出してきたのだ。

 俺達がコンクレンツに対してやり返した分は、決してやりすぎではない範囲に留まっている。


「ほぅ、怯まぬか。その度胸があれば、盟主も問題なかろう」


 もちろんヘーゲも本気で言っている訳ではない。既に俺達が仕掛けて降伏させた時点で、既にその辺は話がついている。

 コンクレンツの受けたダメージは全力でツェントラールが支援し、今までにツェントラールが受けたダメージはコンクレンツが支援する。

 お互い様と言う事で話がまとまった今、本来は改めて蒸し返す必要はなかった事だ。あくまでも、ヘーゲの戯れに過ぎない。


「とりあえず、最初の目標は各領地の状況改善ですわね。国が結束するには、まず地盤を整えなければなりませんし」


 俺達がダメージを与えてしまったコンクレンツはもちろん、他の国も様々な要因で少なくないダメージを受けている。

 エリーティは首都と国境沿いの町以外は魔族によって滅ぼされており、そもそも領民の数自体が大幅に減少してしまっている。

 ダーテは前体制により平民が虐げられていた影響で、平民達自身が積極的に活動するための土台が出来ていない。


 ファーミンはそもそも国土が過酷な砂漠を含んでいるためか、未だ疫病や飢餓に苦しむ地域もある。

 統一国となった事で、他の領地にある豊富な食料を積極的に回し、魔術なども駆使して土地改善を試みる事になった。

 そんな感じで実際に各国を見て回った俺達と、各地方の領主達で今後における状況改善の計画を話し合った。


「そう言えば、統一国の名前は古の王国と同じにはしなかったんですね。あえて違うものにしたんですか?」

「仰る通りですわ。今回成し遂げたのは『古の王国の復活』ではなく『新しい国の誕生』ですもの。過去への回帰ではなく、未来への前進ですから」

「ヘーゲさんはそれで宜しかったので? 古の王国ヴィンドゥングの復活は悲願だったのでは……」

「盟主も言っているであろう。これは未来への前進なのだ。むしろ古の王国の復活よりも大きな夢を見せてもらっておるよ」


 今回統一国の名として付けられたエルガシアは『協力し合って一つの目的に向かっていく』ような意味合いがあるらしい。

 五つの国が協力して一つとなり、共通する目的に向かう様からは相応しいネーミングだとは思うが、国と言うか組合みたいな感じだな。

 とは言え、古の王国の名前をそのまま付けて『古代の大国が復活した』とかやられるよりも、よっぽど前向きで良いとは思うが。


 俺達が何処かへ旅立った後も、しっかり国として機能してくれることを願うばかりだ。

 とにもかくにも、これで俺の目的もようやく達成されたわけだ。ようやく自由に世界を巡れるな。



 ・・・・・



 統一国のトップ会議が終わり、俺達はリチェルカーレの魔導研究室に集まっていた。

 この場に集まっているのは俺と部屋の主であるリチェルカーレ、後はレミアとエレナとセリンとハルだ。

 ツェントラールを救った後、俺の望みである『世界を巡る旅』についてきてくれるのだという。


 レミアは冒険者に復帰し、エレナも冒険者として登録した。セリンは俺の専属メイドとして旅への同行を希望した。

 ちなみに動きやすいように冒険者登録もしているとの事。ハルは『邪悪なる勇者』から離反し、俺達に同伴しつつ懺悔の旅をするらしい。

 リチェルカーレは相変わらずだ。知の探究者である彼女にとって、俺は好奇心をそそられる異邦人という『未知』の塊だからなぁ。


「……本当にいいのか? ここから先は単なる俺の願望なんだぞ」


 改めて皆に問いかける。今までは明確な目的があったが、この先はそう言ったものが無い。

 現時点ではまだ、何処へ行って何をするかすらも決めていない段階なのだ。

 そんな当てもない旅に巻き込んでしまって良いものか。改めて皆に意思を確認する。


「私は既に冒険者に戻り、今は『流離人』の一員です。既に騎士団からは脱退していますので問題はありません」

「この国から滅びの危機が去った以上、私の力はもはや必要ありません。この過剰なまでに大きな力は、世界のために使ってこそでしょう」

「私は専属メイドに選ばれた時から、力不足で序盤に同行できなかった事が悔しかったんです。これからはずっと付いていきます」


 元々ツェントラール王城に仕えていた三人は、既に身辺整理をして上にもその旨を伝えてあるとの事だ。

 レミアの後釜は、前任のリュックさんが復帰している。エレナの力は、国が危機だったからこそ必要不可欠であっただけ。

 セリンは国を出る身である俺の専属メイドを貫くらしい。そのため、国にではなく俺自身に対して帰属するという。


「アタシについては聞くまでもないよね。キミはアタシのターゲットなんだ。逃がしはしないよ」

「私はもう行く当てもないのよ。アンタについて行って、行く先々で『邪悪なる勇者』時代の罪滅ぼしをしていくつもり」


 ありがたい事だ。これからは六人パーティでの旅路となる訳か。

 今のところ俺以外のメンバーが女性ばかりだが、別にハーレムを狙って女性に絞った訳ではないぞ。

 もし今後の道中において気が合う者が居れば、男性だってパーティに誘うつもりだからな。


「それで、リューイチは何処か行ってみたい場所はあるのかい?」

「異世界に関して無知な俺にそれを聞くのかよ……。場所は全く見当もつかないが、俺としては本格的に冒険者っぽい活動が出来る場所が良いな」

「冒険者っぽい活動か……。だったら、先日保護した『邪悪なる勇者達』の子達の斡旋も兼ねて、あそこにするかな」


 リチェルカーレが『邪悪なる勇者達』の拠点に乗り込んだ際に下した幹部四人は、現在異空間内に棲み処を作って保護しているらしい。

 今では邪神の力から解放されているとはいえ、ハルとは比べ物にならない程の悪事を重ねてしまっているが故、表に出さないようにしているとの事だ。

 被害を受けた者達は当然彼らの事を知っているだろうし、元々彼らを勇者として召喚した国も、再び遭遇してしまうのを良しとしないだろう。


「とりあえず、明日の朝を目途に出発としようか。今日はみんなゆっくり休んでおいてくれ」

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