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異世界の流離人~俺が死んでも世界がそれを許さない~  作者: えいりずみあ
第四章:魔の手に堕ちしダーテ王国
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138:レーゲンブルート

「レーゲンブルート……?」

『コードネームのようなものだと思ってくれればいい』


 レーゲンブルートと名乗ったそいつは、リチェルカーレに促されてか急に砕けた口調になった。

 どうやらこちらの方が素らしいが、大元を知らない俺からすれば別にどっちでもいい。


「実はコレとは結構長い付き合いでね。互いの目的のために昔から協力し合ってるんだよ」

『長い付き合いなのに、コレ呼ばわりはないだろう』

「正体を隠しているキミとしても、『彼』だとか『彼女』だとか性別に言及するような呼び方は嫌だろう?」

『むむ、だからと言ってな……』


 二人の気軽なやり取りは、確かに付き合いの長さを窺わせるものだ。

 リチェルカーレはしばらく引きこもっていたと聞いていたが、おそらくはそれより前からの……。

 そこでふと思い出す。確か以前、協力者がいるみたいな話をしていたな。


「……そいつが、以前言っていた『協力者』か?」

「正解。こんなナリだけどかなりの事情通でね。時々条件と引き換えに色々聞いているのさ」


 わざわざ『条件』と言う辺り、単純に金銭などでは動かないタイプなんだろうな。


『彼女の言い方で察したと思うが、私は金銭では動かないタイプでね』


 やっぱりか。こういう手合いは動かし方が難しいし厄介なんだよな。正直、金で動く方が使いやすい。


「今回は久々に『発散したい』と言うものだから、しばらく異空間で相手していたんだよ」


 俺達が侵攻を続けている間、ずっと出てこなかったのはそれでか……。


『ふふ、楽しい一時だったよ。最後の最後で外へ蹴り出されてしまったのは残念だが』

「外は外で事が進んでいるから、あまり時間をかける訳にもいかなかったのさ。ちょっと遅かったけどね」


 ちょっとどころかタイムオーバーにも程がある。何せ、ラスボスどころか真ボスまでも撤退させた後だからな。

 まさか隠しボスを引き連れてのご帰還だとは思わなかったぞ……。しかも急激に敵のレベルが上がるし。


『ただ、その残念を補うように面白い者達と戦う事も出来たし、最終的には満足と言った所だな』

「そっちは満足かもしれないが、俺と王は一回殺されてるし、エレナとレミアも危ない所だったんだが……」

『キミとリッチに関しては殺しても蘇るから問題ないとリチェルカーレが言っていたぞ』

「……おい」


 リチェルカーレを睨みつけるが、白々しく目線を反らしやがった。こいつめ。


『あと、女二人の方も力量を把握した上で全力で防御すれば死なない程度にはしておいたぞ』

「さらりととんでもない事を言ったな……。下手したら死んでたって事かよ」

『もしそれで死んだのなら、絶体絶命の危機にもかかわらず力を出し切らない愚か者であったという事だ』


 酷い物言いではあるが、確かに余計な所で変な何かに固執して力を出し惜しんでしまい、助かるはずの命を無駄に散らしてしまった例は存在する。

 自分が散るのならまだしも、それで守るべきものを守れなかったりしたら最悪の結末だろうな……。


『こんな事を言っておいて何だが、あのリチェルカーレが『仲間』だと言った存在だ。残念な事にはならないとは思っていたよ』


 俺が来るまではずっと研究室に籠りっきりで、ほとんど他に関心を示さなかったリチェルカーレがそんな事を言ったのか。

 当の女性陣二人はと言うと、俺達の少し後ろで完全にへたり込んでいた。レーゲンブルートの言葉に反応しない程に疲労しているようだ。

 そもそもこの話を聞いているかどうかも分からない。どちらにしろ後でミーティングはするから良いのだが……。


『さて、そろそろ本題と行こうか。まずは私についてだが――』

「……魔族だろう?」


 俺の指摘に、言葉を止めるレーゲンブルート。


『へぇ、察しがいいじゃないか』

「魔族は強大な力ゆえに結界を超えられないと聞いているからな。充分に遠隔操作の人形を使う理由があるだろう?」


 加えて俺達に向けたあの力だ。死者の王すらも一瞬にして破壊してみせたあの力は尋常じゃない。

 だが、世界のバランスを崩す程の力の持ち主ともなれば、その断片ですら強大な力を有しているのにも納得がいく。


『随分と物分かりの良い人間だな、リチェルカーレ。こちらとしても話がしやすいから助かる』

「話しておいた事情の通りさ。リューイチは、異邦人の中でもかなり理解力が高くて頭が回る方だと思うよ」


 褒められてるのか……? 事情ってのは、おそらく俺の能力や本当の年齢の事だろうな。

 そんな事まで話してしまえる程、リチェルカーレはレーゲンブルートという存在を信用しているのだろう。


『なるほど。では、私の目的も察する事は出来るかな?』

「以前レミアが言っていたんだが、彼女と同等の実力者が五人がかりでも勝てなかった存在が居たそうだ。リチェルカーレの推測では魔族らしい。おそらくそいつが関係してるんじゃないか?」

『ふむ、確かにそこの彼女レベルの五人を圧倒できるとなると、魔族である可能性が高いな。稀に居るからな、力を失った事でこちらの世界に流れてきてしまう魔族が』

「流れてきた魔族の始末、あるいは捕獲……それが目的だと推測する」

『ほう?』

「今思えば、エリーティにおける最終決戦で少し不自然な所があったんだよな……。あの時、俺達は奴に明確なトドメを刺す前にさっさと転移させられた。しかも、リチェルカーレだけ少し遅れて転移してきたしな。今になって考えると、俺達だけを先に飛ばして、あそこで密かにあんたとやり取りをしていたんだろう」

「……相変わらずリューイチは勘がいいね。そんな些細な所から辿られてしまうとはね」


 リチェルカーレが割って入るが、それは正解だと言っているようなものだな。


『推測通りだ。私は自身の所属する陣営の魔物や魔族の始末及び回収を目的の一つとしている。ホイヘルはそれに該当したのでな』

「さっき倒したフィーラーって奴は良いのか? 人間界を魔界へと変えるべく遣わされた瘴気生命体――とか言ってたが」

『それは聞き覚えが無い存在だな。異なる陣営の存在である場合、私は特に気にしない。先述の流れてきた魔族に関しても同様の事だ』

「目的の一つ……って事は、他にも何か目的があるという事なのか?」

『あぁ。だが、こちらに関しては、すまないが黙秘させてもらう。代わりと言っては何だが、一つ情報提供をしよう』


 レーゲンブルートが、残った片腕で人差し指をピンと立てる。


『先程までここに居た異邦人……彼らについての話だ』

「彼らだと? 奴は単独行動している存在ではなかったと言うのか」

『奴――浜那珂蓮弥は、ある組織の一員だ。その組織は、世界の裏から闇を撒き各地に混乱を引き起こしている』


 うわ。この世界にはそんなコテコテの悪の組織があるのか。お約束と言えばお約束だが……。


『闇が満ち、混乱によって荒れた世界は邪悪なる神が望むもの。彼らは闇の力を与えられ、邪神のために働く眷属だ』

「闇の力……そうか、シルヴァリアスが『本能的に忌避する』と言ったのはそれでか」


 ミネルヴァ様はどう考えても光としか言いようがないくらいに神聖な存在だった。

 そんな方が作った存在であるシルヴァリアスは、いわば光の化身とも言える。

 闇の力や邪神と言った存在は、まさに対極の存在だろう。言わば、生まれながらの敵性存在。


「先んじて言っておくけど、ここで言う『闇の力』は『闇属性』とは異なるからね。魔術的な闇の力は、邪神の力なんかじゃない」

『邪神の持つ闇の力は、君達が知るどの力とも異なる。魔力、法力、闘気の力の源泉である『原初の力』とは大元を異にする『別の原初の力』とでも言うべきものだ』

「それはつまり、奴らの使ってくる魔力や法力、闘気は俺達のものとは似て非なるものという事か……」

『いわば光対闇のようなものだ。互いに弱点となるから、通常以上にダメージを与えられる反面、受けるダメージも大きくなるぞ』


 俺の場合、受けるダメージが小さかろうと大きかろうとあまり関係ない気がするな。

 だが、そうやって慢心した結果とんでもない事態を引き起こす可能性もある。油断は禁物か。


「ちなみに、その組織には名前とかあるのか?」

『あぁ、その組織の名は――』

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