永遠フラフープ
幼馴染が夢にでてきた。
「フラーフープを回しなさい。永遠に回し続けることができたら、願いを一つ叶えてあげる」
そんなことを言われても、フラフープはいつかは落ちるものである。人間の体力には限界がある。人型のロボットならば、電力が続く限りは、フラフープを回し続けることができるだろう。でも、電力だっていつかは尽きる。いつかは、地球だって太陽に飲み込まれて消滅する。
幼馴染は、昔から無茶をいう奴だった。そのくせ、私ができないと言うと、髪を逆立ててこう言うのだった。
「できないなんて言葉を吐かないで。『できなかった』、なら許してあげる」
寝ぐせがついたまま、車を走らせ、海道沿いの大型スポーツ用品店に行った。フラフープを買って、すぐに駐車場で試みる。腰を前後に動かす。フラフープが回る。
永遠とは行かないまでも、五分間ぐらいは回せただろうか。
「できなかったよ」
アスファルトに反射した熱が渦巻いている駐車場から、硬質な青空を見上げて、私は言った。
幼馴染はもういない。この世には、もういない。
私はもう一度、フラフープの永遠を試みる。