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 幽霊の記憶2

 車は男子組と女子組に分かれて乗ることになった。行きは女子組が陸が、男子組は美由が運転する車に乗り、帰りは入れ替わることになった。

 助手席に優実が座り、後ろの真ん中に千穂、右隣にあかり、左隣に壱華という布陣だ。陸は滑らかに車を走らせていた。

「ねえねえ」

陸はそう四人に声をかけた。なんだろうと、四人の注意が陸に向く。

「武尊って彼女とかいるのかしら」

突然の質問である。しかし、陸は気になって仕方がない様だ。

「私の知ってる限りいませんけど」

優実がそう答える。陸はそうなの?と眉をハの字にした。

「あの子、ちょっと性格に難があるけど、基本的にいい男でしょ?」

自分の息子にいい男とはこれいかに。陸は親バカなのかもしれないと四人は思った。

「確かに、武尊はきれいな顔してますよね」

優実がそう言う。

「時々ドキッとするときがあります」

「でしょう!あの子、顔はいいのよ!」

私に似ちゃって、と陸は笑う。自画自賛のオンパレードである。

「私に似て、勉強もできるし顔もいいし、運動もできるでしょ?」

そう言ったところで、少し顔を雲らせた。

「本当はもっと貴昭たかあきさんに似たほうがよかったと思うんだけど」

「貴昭さんて、武尊のお父さんですか?」

「そうよ~とってもいい男なのよ」

くすくすと陸は笑った。

「優しくて、誠実で、頭も切れて」

「じゃあ、基本的に似てると思いますよ。武尊」

「貴昭さんに?」

「話だけ聞くと」

まあ、もっと人に優しくしてもいいかなと思う時もありますけど、と優実は続ける。

「武尊、時々意地悪」

「それは千穂が自分で予習しないからじゃない」

千穂の言葉に壱華がそう言った。千穂はむくれる。

「だって、分からないんだもん」

「せめて授業はちゃんと聞いて」

寝てるって、武尊に聞いたわよ。と続ける。

「武尊が寝てるのに!?」

「武尊寝てるの?」

陸はキランと目を光らせた。その問いに、優実が答える。

「武尊は大概寝てます」

起きてるのは休み時間と数学くらいですと付け足す。

「あの子、小さい時から算数が好きなのよね」

陸は前を向きながらそうつぶやいた。

「じゃあ、武尊って好きな子とかいるのかしら」

「分からないですけど、千穂とは仲良しですよ」

「やっぱり!」

「何がやっぱり何ですか!?」

陸と優実の会話につい千穂は突入してしまう。陸はからからと笑った。

「貴昭さんが言ってたのよね。千穂ちゃんと仲良くなると思うって」

―確か、武尊のお父さんって、銀の器のことも、黄金の剣のことも知ってるのよね。

壱華はそう思いだす。剣が現れたら迷わず取れと息子に言えるくらいだ。もしかしたらこっちより詳しいのかもしれない。

―だったら、銀の器と金色の使い手の関係も知ってる可能性があるのね。

先生は、二人が相思相愛になると言っていた。その気配はまだ見えないけれど。そのことを、武尊の父親は言っているのか。

「なんでそんなこと言ったんだろう」

千穂は考え込んでしまう。千穂は何も知らないから。考えこむ千穂を壱華は複雑な目で見つめた。

「貴昭さんて凄いのよ。未来が見えてるかのように話すんだから」

「じゃあ、私は武尊と仲いいって事ですか?」

「悪くはないじゃん」

優実が会話に入り込む。

「千穂、男子苦手じゃん。でも武尊とはよく話すよね」

「そうなの?」

陸は興味津々と瞳を輝かせた。

「だって、武尊は席が隣だし、予習見せてもらわないと板書できないし」

「あははは。勉強で頼られちゃってるのね」

陸は笑った。

「でも仕方ないわね。勉強できる人間の宿命ね」

くすくすと陸はやっぱり笑った。

「武尊も陸さんみたいにたくさん笑ったら怖くないのに」

「千穂、武尊が怖いの?」

「怖い?怖いとは違うかな?でも笑ってた方が可愛いよ」

「でしょう!あの子、笑うと可愛いのよ!」

陸は飛びついた。ずっと笑ってればいいのにね。と陸は続けた。その言葉に、あかりがうーんと首を傾げた。

「でも、ずっと笑ってるともてすぎて大変そう」

「ああ~そうかもね」

否定しない陸はやっぱり親バカだと四人は認定した。


「ごめんね、美由さん。母さんが強引で」

「いえ、いいんです」

美由は笑いながらハンドルをぎゅっと握り直した。

―ハンドルって、軽く持つのがいいって聞いた気がしたけど。

言っていいものかどうか迷って、武尊は何も言わなかった。

「母さん、ここに無理やり連れて来たんじゃないですか?」

「そうですねー、私は子供だけで遊んだほうがいいんじゃないかとは思ったんですけど」

「でも、美由さんたちがいなかったら俺ら遊びが無くなって困っちゃうところだったよ?」

暗に樹が礼を言う。

「そうだな!水族館も楽しみだし!」

「水族館初めてなんでしたっけ」

「そうなんです」

啓太の言葉への美由の質問に、樹が答えた。

「珍しいよね。遠足とかでも行かなかったの?」

武尊の言葉に、兄弟は苦笑した。

「地元が田舎過ぎたし、あんまり村の外には出なかったからな」

「そうなんだ」

助手席に乗っていた武尊は首を後ろに巡らせた。

「じゃあ、楽しみだね」

「そりゃ心底」

啓太が力強く頷く。その言葉に、武尊はふっと笑った。

「良かった」

その笑顔に、つい兄弟も見入ってしまう。

「あれだな、武尊って笑うと陸さんの子だなって思う」

「あ~まあ、外見とか母親似だから」

武尊は苦虫を噛み潰したような顔をした。せっかくの笑顔は消えてしまった。

「陸さんと仲良くないの?」

樹が武尊の表情にそう質問を投げる。武尊は前を向くと唸った。

「・・・・悪いわけじゃないけど。ていうか、あっちが積極的に関わろうとしすぎ。ここまで押しかけてきたりとか」

「でも、保護者がいたほうが安心だよな」

一応俺らまだ未成年だし、と啓太が言う。

「押しが強いから避けたくなるって事?」

樹は啓太の言葉を無視して確認の言葉を述べる。

「まあ、そんな感じ。今の学校は寮があるから、離れられてよかったかも」

「確かにそれもあるかもな」

「兄ちゃん、勉強しろって怒られてばっかりだったもんね」

「うるさいぞ」

男子の会話に、美由はくすくすと笑った。

「仲がいいんですね」

そう言えば、三人は首を傾げた。

「そうですか?」

「「そうかな」」

兄弟はここにきてまたシンクロした。武尊は吹き出しそうになるのをこらえた。

「とても仲良しなんですね」

美由があまりに嬉しそうに言うから、誰もその言葉を否定することができなかった。


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