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 遂に「真・神様のテスト」が姿を現した。それは選択肢のどちらを選ぼうとも不正解となるテスト。神様が“例の賭け”に必ず勝つテスト。ゆえに人類滅亡を100%もたらすテストだったのだ。


「うわあ、一体どうすりゃいいんだ」


 俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。


 ふたつの選択肢のもたらす結果が分からないんじゃない。その逆だ。分かってる。分かってるんだ。どっちを選んでも不正解だってことが。


 ちきしょう! こんなテスト、いったいどこのどいつが考えやがったんだ。神か。神様が考えたのか。人類を滅亡に導くこのテストを。俺や奥名先輩を破滅の淵へと投げ込むこのテストを。


 そいつは果たして“神”と呼べるのか。人類に不幸をもたらす存在なんかを“神”などと呼んでいいのか。


 人類に幸せをもたらす存在を“神”と呼ぶべきならば、悪魔の久梨亜のほうがよっぽど神らしいじゃねえか。俺はなんどあいつに助けられたか。確実に片手の指じゃ数え切れない。もしかしたら両の手でも足りないかもしれない。


 悪魔の久梨亜を“神”と呼ぶのがいけないのなら天使の美砂ちゃんはどうだ。俺は彼女にもなんども助けられている。それにあの“変身”だ。あれなどまさに“女神さま”じゃねえか。もし“美砂ちゃん教”というのがあるのなら俺真っ先に入信するよ。


 いやいやそうじゃない。俺に幸せをもたらす存在を俺の“神”と呼ぶべきならば、そんな存在はほかにもいる。俺に無限の幸せをもたらしてくれる存在はふたりのほかにもいるじゃないか。

 そうだ、奥名先輩だ。先輩こそが俺の“神”だ。究極の、至高の、そして最上位の“神”だ。


 だけれど俺が3人を大切にするのは“神”だからじゃない。“人”だからだ。彼女らは決してあがめる対象なんかじゃない。共に生きていく仲間なんだ。美砂ちゃんと久梨亜が天使と悪魔だってことなんか関係ねえ! たとえ今この瞬間に彼女らから力が失われたとしても大切な存在なのに変わりはない。奥名先輩を加えて3人こそが俺の大切な、俺の“神”なんだ。

 天界にいる神様なんぞくそ食らえだ。神様の賭け? そんなの知ったことか!


 だから俺の答えは選択肢の“1”と“2”のどちらでもない。天の神もどきが用意した選択肢なんぞは選ばない。そんなものは無視だ。


 俺はすっくと立ち上がった。そして後ろを振り向いた。そこには俺の3人の“神”がいる。悪魔の久梨亜。天使の美砂ちゃん。そして大好きな奥名先輩。


 先輩は唇を噛みしめていた。芯から悔しそうだった。先輩にはわかっていた。ハンドルを切っても切らなくても大惨事になるってことは。そしてもはや自分にそのどちらも止める力がないってことが。


 美砂ちゃんはおどおどしていた。どうしていいのかわからないようだった。だって彼女はこの世に誕生してからまだ1ヶ月とちょっと。そのうち純粋に天使だった期間はわずか2週間。たぶんすごい力を秘めてるんだろうけど絶対的に経験不足。


 そして久梨亜はムスッとしていた。腕を組んで不機嫌そうだった。でも彼女にはわかっているはずだ。俺が今考えているこの“正解”が。しかし彼女からそれを言い出すことはできない。俺から言い出さない限り彼女は動けない。


「久梨亜、美砂ちゃん、頼みがある」


 俺は静かに、しかしいくらか早口で言い始めた。もう時間があまりない。


「君らの力でバスを停めてくれ。もうそれしか方法はないんだ」

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