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人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第1章 俺が人類滅亡の可否を背負わされることになったわけ
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8

 夢中でどうにか自分の席までたどりついた。頭の中はなにも考えられない。


「何だったんだ、あれは」


 椅子に座りながら俺はつぶやかずにはいられなかった。


 奥名先輩に振られただけでも充分衝撃なのにあれは何だ。

 天使だ? 悪魔だ?

 俺のこれからの行動で人類が滅亡させられるかが決まるだと?

 もうわけがわからん!


「とにかく仕事だ。今は仕事に集中しよう」


 衝撃を振り払うように頭をひと振り。PCに向き合い仕事の続きに取りかかる。


 しかしダメだ。集中できない。目はモニターを見、手はキーボードを打っているからはたから見たら仕事しているように見えただろうけど。

 頭の中では奥名先輩と天使と悪魔がひたすらグルグル回ってた。


 不意に肩越しにすぐ後ろから声がした。


「何をしているのかな」


 女性の声。社内の誰でもない。思わず振り返った。そこにあった顔に驚いた。

 黒の悪魔と天使の彼女がそこにいた。


「な、なんでお前らがここにいるんだよ」


 まわりの同僚に気づかれないよう小声に抑えた。なんとか理性が勝ったらしい。


「ああ。さっきは言い忘れたけど、あたしらはあんたの行動を監視して上に報告しなくちゃいけないんだ。だからここにいるのは当然だろ」


 黒の悪魔は「上に」と言いながら文字通り上のほうを指し示す。


「そういうことじゃなくて。なんで部外者のお前らが堂々と社内を歩いているんだ……って、えっ!」


 その言葉を発しながらも俺の目はふたりの姿に釘付けになっていった。

 だってふたりともうちの女子社員の制服を着ているんだもの。


「ああ、これかい。どうだ、似合うだろ。まあちょっとばかし胸のあたりが窮屈なんだけどね」


 黒の悪魔が制服の胸元あたりを引っ張って中をチラチラ見せるようにする。うわあやめてくれ。


「私、人間の服を着るのは初めてなんです。なんだか不思議な感覚ですね」


 白の天使ちゃんはちょっとずかしそうだ。かわいい。


「いや、似合ってるよ」

「そうですか。ありがとうございます」


 天使ちゃんが顔を赤くして頭を下げる。うん、かわいい。


「って、そうじゃなくて、その制服、どっからかっぱらってきたんだよ」

「人聞きの悪いことを言うねえ。これは盗んだんじゃないよ。あたしらの力をもってすりゃあ、服の1枚や2枚、作り出すなんてのはわけないことさ」

「私も初めてだったんでうまくできるかどうか不安だったんですけど、似合ってるって言ってもらえてうれしいです」


 天使ちゃんの笑顔。思わずのぼせそうになる。いかんいかん、まだ聞きたいことがあったんだ。


「いや、いくら制服を着てたって見慣れない顔があったらまわりから不審がられるだろ。もしかしたら俺以外からは見えてないのか」

「見えてないなら制服を用意する必要はねえだろ」

「あ、確かに」

「心配しなくてもまわりの連中からもあたしらの姿は見えてるさ。ただちょっとばかり連中の記憶をいじらせてもらっただけで」


 恐ろしいことをサラッと言うなよ。


 そういえばふたりから翼が消えている。黒の悪魔からはつのやしっぽもなくなってるし、天使ちゃんの頭の上のリングも見当たらない。

 それもみんな「姿がまわりからも見えている」からその対策なのだろう。


 しかしこのとき俺は気づいていなかった。

 奥名先輩が少し離れた席から俺たちのようすをじっと見つめていることに。

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