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俺はあらためて超至近距離でふたりを観察した。
黒のほうは人間で言うと歳の感じは俺と同じか少し上くらいに見えた。奥名先輩と同じくらいか。全体の印象をひと言で言うと「エロい」。
白のほうはその小ささもあって俺よりずっと年下に見えた。中、高校生くらいか。全体の印象をひと言で言うと「かわいい」。
いやいやまてまて。このふたりは断じて人間なんかじゃない。人間の尺度が通じる相手なんかじゃないかもしれない。
「き、君たちはいったい……」
どぎまぎしながらようやく声を絞り出した。
「ああ、説明がまだだったね。あたしは悪魔。正確には悪魔メフィストフェレス様の配下の悪魔」
黒のほうが俺に顔を近づけてニヤッと笑う。にやつきながら頭をひねるなよ。顔に角が当たりそうじゃねえか。
「えっ、悪魔」
「おや、お兄さんは悪魔を見るのは初めてかい。そしてもう分かると思うけど、こっちは天使」
黒のほうが白の彼女を指さす。
「て、天使って……」
思わず白の彼女のほうを見つめた。言われてみれば確かに彼女の頭の上には天使の光るリングがある。
「そんなに見つめないでください。恥ずかしいです」
天使の彼女は真っ赤になってうつむいてしまう。かわいい。
「ああ、あたしのほうはもう何度も人間に憑いたことがあるけど、たぶんそっちはあんたが初めての相手なんだろう」
「えっ、俺が“初めて”の相手……」
黒の悪魔のひと言にドキッとする。思わず体の一部が縮み上がる。どこかは言わないぞ。
俺は天使の彼女から慌てて目を逸らした。その目に新たに飛び込んできたのは黒の悪魔の大きなふたつの“ふくらみ”。いや、“ふくらみ”なんかというレベルじゃない。俺にとって未知の、でっかい何かだった。
「で、おっぱい大好きお兄さんに説明すると、あんたはこれから人類滅亡の可否を左右する存在になる」
黒の悪魔のおっぱいに吸い寄せられていた俺に浴びせられたその言葉。とっさにはまったくもって意味不明。
「えっ、どういうこと?」
「言葉通りさ。こっちの天使のご主人様の思いつきで、あんたのこれからの行動で人類が滅亡させられるかが決まるんだよ」
黒の悪魔が天使の彼女のほうを指し示しながら言う。俺は反射的に天使の彼女のほうを見た。彼女も小さくコクンと頷く。
「俺のこれからの行動と人類滅亡とがどう結びつくかよくわかんないんだけど……」
「まあ、あんたがこれから取る行動が神の御心ってやつにかなうかそうでないかで、人類が存続するのにふさわしい存在かを判定するってことらしいよ」
黒の悪魔の言葉に天使の彼女もコクコク頷いている。
冗談じゃない!
そんな責任を背負わされるなんてまっぴらごめんだ。
とにかくこんな状況から一刻も早く逃げ出さなくては。
「あっ、昼休みが終わっちまう。早く行かないと」
そう叫ぶと、俺はふたりを振り切るようにダッシュで屋上から逃げ出した。