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人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第4章 とあるデパートでのできごと
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 とにかく急げ。スピード重要。早く答えを出さないとまた先輩に誤解される。


 まずは“1”の利点からだな。これは明確。奥名先輩の誤解を解くことができる。住んでいるところを教えることで“先輩に対してなにも隠し事はありませんよ”と示すことができる。これは高得点。

 じゃあ欠点はどうか。うわあ、これはまずいぞ。下手すると美砂ちゃんと久梨亜が俺と一緒に住んでるってことが先輩にばれかねない。


 どういうことかというと、これまでの話の流れから考えて俺が住んでいるところを先輩に教えたらほぼ間違いなく“次”がある。「じゃあ今度行ってみようかな」ってやつだ。

 住んでるとこを教えておいて来るのを拒むっていう選択肢はないから「歓迎します」って言うしかない。そして先輩がやってくる。アパートの中を見る。美砂ちゃんと久梨亜が俺と一緒に住んでる証拠が見つかる。先輩は激怒。当然俺との仲もそこで終了。ジ・エンド。世界の終わり。


 ダメだダメ。“1”は却下。“2”だ。これなら先輩がアパートに来る心配はない。美砂ちゃんと久梨亜が俺と一緒に住んでる証拠が見つかることもない。先輩との仲は安泰あんたい。これまでどおり。


 いやこっちもダメだ。先輩は言うだろう、「ふたりには教えられて私には教えられない理由は!」って。俺は答えられない。先輩をうまく誤魔化す自信がない。結果として先輩は俺と美砂ちゃんや久梨亜との間には人には言えない“何か”があるって思ってしまう。いや、確信する。先輩は激怒。当然俺との仲もそこで終了。ジ・エンド。世界の終わり。


 あーっと、どっちを選んでも同じじゃねえか!


「うわあ、一体どうすりゃいいんだ」


 俺は3たび頭を抱え込んでしまった。もう嫌だ! こんなテストなんてもうまっぴらだ!


「ちょ、ちょっと瀬納君! さっきからどうしたの」


 奥名先輩が戸惑ってる。そりゃこの短い時間の間にこんなようす3度も見せられたら混乱するわな。先輩の心の平穏のためにも、俺は答えを出さなきゃならない。


 諦めるな、考えるんだ。どっちのほうがよりリスクが少ないのかを。

 どっちだ。どっちのシナリオのほうがリカバリー可能だ?


 システムの場合は工程数が多いほど前段でのミスや遅れを取り戻せる可能性が高くなる。もちろん各工程に余裕があることが前提だけど。そしてそれは今回のシナリオでも同じだろう。どっちのほうが必要な工程数が多い?


 “1”だ。断然“1”だ。もしかしたら先輩は「じゃあ今度行ってみようかな」って言わないかもしれない。言っても実際には来ないかもしれない。来てもアパートは外観を見るだけで中には入らないかもしれない。中に入っても決定的な証拠を見つけないかもしれない。いや、俺が事前に証拠を隠しておくことだってできる。これは賭けだ。俺の人生を賭けたでっかい賭けだ。


 顔を上げる。先輩の心配そうな顔がそこにある。こんな顔させちゃいけない。この天女さまの心の平穏は俺が守らなくっちゃいけない。


「もちろん喜んで教えますよ。教えないわけないじゃないですか」


 笑うんだ。俺のできる最大限の笑顔を見せるんだ。こうなったらやってやる。どこかのでっかい河のドラマじゃないけど、大博打おおばくちの始まりじゃあ!

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