表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第1章 俺が人類滅亡の可否を背負わされることになったわけ
6/134

6

 だたっ広い屋上には俺ひとりだけ。ほかには誰もいない。

 のはずが、不意に声がした。


「あれっ、あの矢、男の人に当たってるー」


 可愛らしい声。思わず上を見上げた。声が“上のほう”からしたからだ。

 しかし変だ。ここは屋上。この方向は大きな道路に面してる。上に人がいるはずがない。


「へっ?」


 思わず変な声が出た。自分でも変だと思ったんだから、他人からしたらよほど変な声だっただろう。


“上空”にふたつの人の姿があった。いや、人間であるわけがない。“彼女”らは空中に浮いているのだから。色と形は違えどふたりとも背中から翼が生えているのだから。


 向かって左側の“彼女”は黒かった。頭から足の先までを黒いテープを巻き付けたような衣装がおおっていた。頭にはふたつのねじれたつの。そしてコウモリのような翼。先が矢尻のようになったしっぽまである。

 真っ先に目線がいってしまう胸。それに続く見事なくびれと腰つき。それらは高めの身長とあいまって、まさしく“ナイスバディ”だった。


 対する右側の“彼女”はその色だけでなく存在自体が白だった。輝いていた。肩に届かないくらいの髪がふわりキラキラ広がっていた。

 小さめの身体を包む白いシルクのような衣装。そこから伸びるやはり白い両手足。小さな丸っこい顔。それらはその翼の形状と相まって、まさしく“天使”のようだった。


 大きく見開いた目。びっくりしたような顔。両の手のひらが口元を覆っている。どうやら声を発したのは白のほうらしい。


 俺は声も出せずにただ彼女らを見ていた。口はいていたかもしれない。すると黒のほうが空中を飛んで俺のすぐ横に立った。俺の背中に心なしか冷たい氷のような感覚が走った。黒のほうはそのまま俺の体をあちこちまさぐり始める。


「ちょっ、ちょっとなにするんですか。やめてください」


 あわてて後ずさりしようとした。しかし両のあしは硬直したかのように動かない。しかもナイスバディの“おねえさん”に触られて、“別の箇所”が硬直しかけてるのだ。


 ボディチェックは入念だった。やがてひととおり触り終えた黒のほうが顔を上げた。そして背後の白のほうへと上体をひねる。その曲線がエロい。


「間違いないね。こいつに当たっちまってる」

「どうしましょう。帰ってぬし様に報告したほうがいいでしょうか」


 離れていても白のほうがおどおどしているのが俺にもわかる。

 そのうち白のほうも空中をすべるようにして俺の目の前に降り立った。なんかいい香りがした。かわいい。


 黒のほうがやってきた白のほうに向かって話しかけた。


「いいんじゃね。おめえは『矢が誰に当たったかを見届けて監視しろ』って言われてんだろ。矢はこいつに当たった。だったらこいつを監視すりゃいい。何も問題はない」

「で、でも本当は女の人に当たるはずだったのに」

「ゴチャゴチャうるさいね。神の野郎は『女がよかろう』って言ったんだ。女がよかったのかもしれないけど、別に男じゃダメってことじゃねえだろ」

「そうなんでしょうか」

「そうさ。それにまずければ神のほうから何か言ってくるさ。そうじゃねえのか」

「そ、そうですね」


 ようやく白の彼女からおどおどしたようすが消えていった。

 一方の俺のほうは美女と美少女にれんばかりに接近されてカチンコチンに“かたく”なっていた。もちろん“全身が”、だぞ。勘違いするな。

2017/07/14 ふたりが現れた方向を修正しました。従来は「後ろ」でしたが「上」にしました。矢を追ってきたのだから同じ方向から現れないとおかしいかなと思ったのが理由です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ