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人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第4章 とあるデパートでのできごと
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 俺はうなだれてしまった。それは“美砂ちゃんや久梨亜と待ち合わせしてる”ってことがばれたからだけじゃない。先輩が新たに“人類滅亡の可否を背負う存在”にされちまう恐れがなくなった、ってことで気が緩んだからだ。


「どうなの? 図星でしょ」


 先輩のドヤ顔が続く。いや俺うなだれてるから先輩が本当にドヤ顔してるかどうかはわかんないんだけど。


「はい、ご推察の通りで」

 自然と言葉が出た。素直な気持ちから出た言葉だったと思う。


「あっ、でも決して『デート』とかじゃないですよ。ふたりが『デパートに服見に行きたい。でも場所とかよく知らないから案内して』って言うから俺ついてきただけですよ。第一デートだったら俺もふたりについて売り場まわってるはずじゃないですか。ふたりは今売り場をまわってます。お邪魔な俺はひとりここで待ってるってわけで」


 顔を上げて弁明する。そんな俺の目の前に先輩の顔が再び突き出される。大きな目で俺の目を探るようにのぞき込む。俺は嘘はついてない。そりゃあ若干脚色はしてるよ。ふたりは「服見に行きたい」って言ったんであって「デパート」を勧めたのは俺。ふたりは「案内しろ」とは言ったけど「でも場所とかよく知らないから」とは言ってない。そのあたりは脚色。嘘ってわけじゃない。


「ふうん。まあどうやら本当に『デート』ではないみたいね」


 先輩の顔がフッと離れた。どうやら渋々ながら納得したらしい。よかった。どうやら誤解は解けたみたいだ。よかった。般若はんにゃの顔を見ずに済みそうだ。


 しかし先輩の次のひと言は俺の予想の中にはなかった。


「わかったわ。私もここで一緒に待っててあげる」


 えっ、なに? じゃあ場所変えなくてもいいってこと?

 と言うか、場所変えに同意するか拒むかの選択肢の答え、俺が出すまでもなく先輩が決めちゃったってこと?


 いいのか、これで。「神様のテスト」だったんだろ、これ。俺回答してないよ。それでもいいのか? これで人類滅亡が決定されるなんてことないよな。


 先輩が俺の横に並んで壁にもたれかかる。肩が触れそうだ。俺と先輩が平和のうちにこんなに接近したことが今だかつてあっただろうか。そう思うと心臓がドキドキする。


「でも私、まだ完全に『デートじゃなかった』って納得してるわけじゃないからね」


 先輩が静かに発した言葉に心臓が胸を突き破って飛び出そうになる。えっ、あの件まだ終わってなかったの?


「そんな……」

「だって瀬納君の言葉は軽々しく信じちゃいけないっていう“前科”があるからね」


 「前科」だって? 昔の俺、いったい先輩になにをした!


「前科だなんて……」

「ないとは言わせないわよ。あなたが私に告白したあの日、あの後すぐに美砂ちゃんを口説いてたでしょ」


 ちょー、それかよ!


「違いますって。口説いてませんって」

「そう? 他にもあるわよ。珍しくあなたが遅刻したあの日。遅刻したんだからひとりで申しわけなさそうに入ってくればいいのに、なんで横に美砂ちゃんと久梨亜が一緒にいたの? あれどういうわけ?」


 いや、もう“言葉”ですらなくなってるし。

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