表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第1章 俺が人類滅亡の可否を背負わされることになったわけ
4/134

4 天界にて その4

「いいでしょう」

 神様の提案に今度はメフィストフェレスも同意した。そしてこう続けた。


「で、その者の観察ですが、我らがするわけにもいかないでしょう。いくら神様が暇だからといっても」

 メフィストフェレスはまたも神様をあおるように言うとフフッと笑った。


 この言葉に再び頭に血がのぼる神様。

(繰り返しになるが、神様に血があるかどうかはこの際考えないことにする。)


「な、何を言うか、わしが暇なはずがないであろう。わしはこの天の主であるぞ。わしがこの天の中で一番いそがしいのだ」


 そして自分の背後に向けて大声で呼びかけた。

「誰か、誰かおらぬか」


 しかし応える者はいない。

 実は天使たちは物陰から神様らのやり取りの一部始終を聞いていた。しかし「また厄介事やっかいごとを持ち込んでくれて」と嫌がって誰も応えようとしなかったのだ。


「誰か、誰かおらぬのか」

 再び神様が大声で呼びかけた。

 こうなるとさすがに誰かが出て行かざるをえない。


「あのう、お呼びでしょうか」


 現れたのはかわいらしい少女のような天使だった。

 神様はその天使の姿を一瞥いちべつするや不審そうな顔になる。


「なんだミサエルか。いつもの用聞きの天使はどうした」

「はい。みなさま急用とかでお出かけになられていて、今は私しかおりませぬ」


 もちろん事実ではない。だれも神様の用を押しつけられたくないので、一番下っの彼女にそう言うように言って押し出したのだ。


 神様は少し不満そうに見えたが、やがてひとつ咳払いをするとミサエルと呼ばれた天使に向かっておごそかにめいを発し始めた。


「よいか、わしは今からこの矢を地上へと放つ。お前はこれを追ってこれが誰に当たったかを見届けるのじゃ」

「えっ、私が、ですか」

「そうじゃ。それだけではない。その後のその者の行動を監視し、適宜てきぎわしのもとへ報告するのだ」

「……わかりました」


 そこへメフィストフェレスが割り込んだ。


「ちょっと待った。報告者がそちら側だけでは不公平。こちらも監視を送らせてもらいます」

「なんだと」


 神様が文句を言おうとするのを無視して、メフィストフェレスは空中に輪を描いた。たちまちその輪の中が黒くなると、まるでトンネルから出てくるようにそこからひとりの悪魔が現れた。

 ボンキュッボンの若い女性風の悪魔だった。黒い翼としっぽがあり、頭には二本の曲がった角が生えている。


「お呼びでしょうか、メフィストフェレス様」

 女悪魔がメフィストフェレスの前にひざまずく。


「うむ。ヴァルキュリヤよ、いまからわしが命じることを確実に履行りこうするのだ」

 メフィストフェレスは彼女に近づくと、なにやらそっと耳打ちしていた。


「では矢を放つぞ」

 神様はそう言って一同を見回した。


「対象は女がよかろう。歳は幼くもなく、適度に若いのを。では行け」

 神様が矢に向かってそう言うやいなや、矢は空中に浮かび上がった。


 矢はしばしどこへ向かおうか考えるようなそぶりを見せた。やがて目標が決まったらしく、一直線に地上めがけて文字通り“矢のように”飛んでいった。

 それに続いてミサエルとヴァルキュリヤがその後を追って飛び出していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ