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4話同時投稿の4話めです(4/4)

 俺はひとり苦悩していた。どれが正解かまったくもって見当がつかない。


 どの選択肢にもそれを選ぶに足るまっとうな理由があるように思う。そして同じようにどの選択肢にも人類滅亡に繋がりかねない理由があるように思えるんだよな。


 だめだ。長所や短所から推測する方法じゃ、いつまで経っても結論は出せない。

 全然違った方向から考えるしかない。でもあるのか、そんな方法が。


「英介さん……」


 美砂ちゃんの声がした。かすかに震えてるような気がした。ああ、俺が人類滅亡のがけっぷちに立っているのを心配してくれているんだな。ありがとう美砂ちゃん。俺、たとえ間違って人類滅亡になったとしても「精一杯考えた」って堂々と胸を張って言える回答をきっと見つけ出すよ。


 そのとき俺の頭の中に閃光が走った。そうだ、それだ!


「わかったぞ!」


 思わずガッツポーズを決めていた。道行く人々の冷たい視線が痛くてすぐに引っ込めてしまったけれど。


「えっ、わかったんですか。すごいじゃないですか」

「さすが英介。あたしはあんたがいざって時は“やるおとこ”だと思ってたよ」

 ふたりが口々に俺のことを賞賛しょうさんする。ちょっとはずかしい。


「いや、わかったのは答えじゃなくて考え方。でもこれでたぶん正解を導き出せると思う」

 答えがわかったわけじゃないと知ってふたりはちょっと落胆してるようだが構うもんか。


 考えてみる。


 もし“2”を選んでダメだった場合、こちらに弁解の余地はない。法的にも道徳的にもダメな選択肢なんだから。

 “3”で放置に成功した場合なら多少弁解の余地はあるかな。でもできるのはせいぜい“弁解”程度。「人類の法や正義に対して無実と言えるのか」と言われたら黙るしかない。

 その点、“1”ならたとえ相手が神であろうと堂々と「法と正義に反した行いはしてない!」ってドヤ顔で言えるだろ?


 やっぱり“1”か。

 でもなあ……。


 できることなら人類滅亡は避けたい。奥名先輩が犠牲になるのはどうしても回避したい。

 あとちょっと。あとちょっとだけでいい。“1”を選ぶよう俺の背中を押してくれる“なにか”が欲しい。なにかないか。あとほんのちょっとだけなんだ。


「あのう、英介さん」

 また美砂ちゃんの声がした。なにか言いたそうなようすだ。でもゴメン、こいつは俺ひとりの力で導き出さないといけないんだ。


「英介さん、お悩み中のところを申し訳ないんですが……」

 再び美砂ちゃんの声。うん? 助言したいとかそういうのじゃないのかな。


「なに?」

「英介さん気がついてないみたいなんで……」

「えっ、何を」

「電車が……」

「電車がどうかしたの?」

「電車が出発する時間を過ぎちゃってるんですけど……」


 その瞬間、遅刻を回避できる可能性を持っていた選択肢“2”と“3”は崩れ去った。

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