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４話同時投稿の３話めです(3/4)

　さてどうする？　あらためて俺は考えた。

　取りうる選択肢をもう一度挙げておくと次の通り。

　１．警察へ届ける

　２．もらっちゃう

　３．再び路上に放置する

　どれを選ぶべきか？　どう行動すべきなのか？

　まあオーソドックスに考えたら“１”だな。法律でもそうだし、常識からいってもこれしかあり得ない。

　でもこういった“皆が当然選ぶ選択肢”に落とし穴があるってことも案外考えられる。

　例えば“１”を選ぶと今日は確実に遅刻する。待たされた営業のやつは怒るだろう。打ち合わせが充分できなかったせいで対象の顧客や、さらにはうちの会社に迷惑がかかるかもしれない。

　そこで神様が「他人に迷惑をかけて平気なような人類は滅亡すべき！」などと言い出すかもしれない。

　またこのお金が手に入らないことで給料日までの間の食事が貧しくなったとする。すると神様が「天使にひもじい思いをさせるとは何事か！」と怒って人類滅亡を決断しちまうかもしれない。

　“２”を選んだ場合はどうか。美砂ちゃんにひもじい思いをさせる心配は当分なくなるな。今から早足で行けば遅刻せずにすむ可能性はまだある。

　でも“泥棒”だから法には反するし常識としても×。正しくない行いをしたということで確実に人類滅亡のポイントにはマイナス。ひいては実際に人類滅亡に繋がっちまうかもしれない。

　では“３”か。

　俺はまわりを見回した。通勤時間帯の駅への道なので人通りがそこそこある。俺が財布を落とすところを見られる可能性はかなりありそうだ。

　じゃあだめだ。

　俺が財布を落としてそのまま会社へ行ければいい。遅刻もしないで済む。でももし俺が落とした財布を誰かがすかさず拾って「落としましたよ」って声かけられたらどうすんだ。拒否するのもおかしいから「ありがとうございます」って言って受け取ることになる。そしたら当然“お礼《れい》”が発生する。取得物のお礼は確か最大２割だっけ。その後で俺が財布を警察に届けて持ち主が現れたら「お金が減ってる！」ってなるよな。必然的に俺が疑われる。説明が信じてもらえなきゃ哀《あわ》れブタ箱行き。

　会社は当然クビ。今以上に金がなくなるから久梨亜や美砂ちゃんにひもじい思いをさせることになる。その結果、神様を怒らせて無事に人類は滅亡しましたとさ、めでたしめでたし。

　めでたしなんかじゃねえ！

「うわあ、一体どうすりゃいいんだ」

　俺は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。思わず久梨亜と美砂ちゃんのほうを見る。しかしふたりは顔を左右に振るばかり。彼女らの助けは期待できない。

　わからない。正解がわからない。どうやったら人類滅亡を阻止できるんだ。

　人類滅亡っていったら奥名先輩も巻き込まれるんだよな。それはダメだ。それだけはダメだ。絶対に阻止しないと。でもその方法が見つからない。

　どうしたんだ俺。まだ“第１問”だぞ。これをクリアしてもこれからまだ何問も出題されるんだぞ。こんなところで敗退しちまってどうすんだ。