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4話同時投稿の2話めです(2/4)
さてどうする? 俺は考えた。
取りうる選択肢はざっと考えて次の3つ。
1.警察へ届ける
2.もらっちゃう
3.再び路上に放置する
どれを選ぶべきか? どう行動すべきなのか?
その瞬間、俺は頭を鈍器でぶん殴られたような衝撃を感じた。いや、これまで頭を鈍器でぶん殴られたことはないし、これからもご遠慮願いたいから同じかどうかはわかんないんだけど。
「待て、あわてるな、これは孔明の罠だ!」
思わず俺は叫んでいた。
「『孔明の罠』? なんだそれは」
「ごめん、単なる最近のはやり文句。この場合違う言いかたで言うと『これは神様のテストだ』ってこと」
「神様の?」
久梨亜も美砂ちゃんも俺がなにを言いたいのかわかってないようす。
「つまりここで俺がどう行動するかによって人類滅亡のポイントが上下するってこと。この財布をここに置いたのも実は神様で、俺はそれに見事釣られたって寸法。畜生、なんですぐに気づかなかったんだ。そうなんだろ、美砂ちゃん」
俺は美砂ちゃんの両肩をつかんで揺さぶった。かわいい顔が憎らしく思えた。財布を拾ってきたことからいっても彼女がこれをテストだって知ってたのは確実。そのくせにのうのうと「もらっちゃえ」みたいなことを言いやがって。
しかし美砂ちゃんの反応は思っていたのとは違ってた。
「ええっ? 私なにも聞いてませんけど……」
明らかに戸惑っている。目を逸らしたりするようすもない。もしかして本当になにも知らされてない?
「久梨亜、お前は知ってたのか」
横の久梨亜のほうを見る。彼女も顔を左右に振っている。どうやらこっちも知らされていないらしい。
えっ、もしかして本当に「孔明の罠」だった?
テストでもなんでもないのに俺が勝手にテストだと思い込んでしまった?
俺は美砂ちゃんの肩から手を下ろした。一気に力が抜けてしまったみたいだった。なんだ俺、バカみたいじゃねえか。いや、本当のバカか。
「ちょっと美砂よ、もしこれが英介の言うように『神様のテスト』だとしたら、あたしらが助言するのはまずいんじゃねえのか」
「そうですね。私たちの意見で英介さんの行動が変わってしまったら、英介さんの行動で人類を滅亡させるか決めるっていう意味がなくなりますよね」
久梨亜と美砂ちゃんがなにやらふたりだけで相談してる。ふたりともゴメン。どうやら俺の勘違いみたいだ。
「それに私たちが助言したって主様に報告したらきっと叱られます。やっぱりここは英介さんが……」
美砂ちゃんのこの言葉を聞いて俺はハッと気づいた。そうだ、俺の行動は神様に報告されるんだ。たとえこの財布の件が神様が企んだことじゃなかったとしても、人類を滅亡させるかどうかの神様の判断に影響しないわけないじゃないか。
テストだろうがそうでなかろうが結果は一緒。あーあ、いろいろ考えてしまって損した。バカじゃねえのか。いや、だから本当のバカなんだって。




