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4話同時投稿の1話めです(1/4)

 駅へ向かう最中にそれは起こった。


 あわただしく支度したくを済ませてアパートを出ようとして今日は燃えるゴミの日だったと気づいて部屋へとっ返してゴミ袋をピックアップ。無事ゴミ出しも終えて3人で駅へと向かってた。

 なんやかんやで時間がかかってしまったので駅への到着予定はかなりギリ。まあしかしたぶん大丈夫。今日は朝一で営業と打ち合わせがあるんだ。遅れるわけにはいかない。


「魔力で会社まで瞬間移動ってできねえのか? そしたら朝はゆっくり寝てられるし、定期代だって浮くんだけど」

「できるけど瞬間移動ってのは人間には負担が大きいのさ。2度や3度くらいなら大丈夫だけど、これから毎日ってなるとそのうち大変なことになるからねえ」

 うんうんうなずきながら久梨亜が言う。


「もしかして過去にそういう実例があったとか……」

「まああんときゃあたいも若かったからねえ。人間にはやっちゃいけないって学習するのに何人犠牲にしちまったか」

 ハハハと笑いながら久梨亜が言う。おいおい、笑い事かよこれは。


 そんなことをしゃべりながら駅へと歩いているときに俺は“それ”を目にした。

 道に落ちている大きな黒い財布。


 正直スルーしようとした。だって電車の出る時間まであまり余裕がないから。しかしそいつに気づいたのは俺だけじゃなかったんだ。


「あれっ。あれはなんでしょう」


 美砂ちゃんが目をキラキラさせて財布を指差す。そしてひとり駆け出す。

 案の定(あんのじょう)拾ってそいつを俺んとこへ持ってきた。こうなるとスルーはできない。


「財布だな。お金を入れて持ち歩くための道具。“お金”ってわかる?」

「あ、お金ならわかります。人が生きていくのにすごく大事なものなんですよね」


 美砂ちゃんの声を聞きながら俺はその財布を受け取った。明らかに高級そうな長財布。大きくて黒い。それにどうやら革製だ。

 ちょっと待て。「黒革の財布」しかも「長財布」と言えば「金持ちの持ち物」と相場が決まってるものじゃなかったっけ。それになんだか財布にしては結構ずっしりと重みを感じるんですけど。


 恐る恐るその財布を開いてみる。


「うわっ、めっちゃ入ってんじゃんこれ」


 中には諭吉さんがぎっしり。

 どうしようか、これ。


「よかったですね」

 俺の右側から美砂ちゃんが笑顔でしゃべりかけてくる。


「えっ?」

「だって英介さん朝言ってましたよね。『これから食費が3人分かかるのか。お金足りるかな』って」


 ありゃりゃ。思ってただけじゃなく口に出してしまってたか。


「こんなにあったら私たちの食費、大丈夫ですよね」


 心配そうな目で見つめてくる美砂ちゃん。思わず守ってあげたくなる。でもなんかちょっとおかしくないか。


「なに言ってんだ美砂。こういうのは警察ってとこに持って行くのが人間界のルールなんだよ」

 俺の左側から久梨亜が渋面しぶつらで口をはさむ。


「えっ、そうなんですか。でも英介さんお金足りないって困ってるし……」

「ダメダメ。ちゃんと警察に届けんだろ、英介」


 左右から天使と悪魔が正反対のことを俺に勧める。こんな場面、何度かマンガやアニメで見たぞ。まさかそれが現実になろうとはな。ただちょっと違うのは「もらっちゃえ」って言うのが天使で、「警察に届けろ」って言うのが悪魔だってこと。

 普通反対だろ!

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