18
2話同時投稿の2話めです(2/2)
勤め人の朝は慌ただしい。
たいていはギリギリまで寝ていて、起きたら大急ぎで身支度。朝食を詰め込んで駅へとダッシュ。
そんなただでさえ忙しいのに、今俺の目の前には居候の天使と悪魔がいる。こいつらの面倒も見なきゃならん。
しかしそこはさすが俺、いいことを思いついた。
「魔力とかそういうやつでパッと朝食を準備できないのか。そしたら助かるんだけど」
身支度中の俺のお願いに顔を見合わすふたり。
「私は人間の料理は知らないんです。ごめんなさい」
申し訳なさそうに美砂ちゃんが言う。うん、生まれて2週間の君は仕方ないね。
「あたしはできるよ」
自慢そうに久梨亜が言う。さすが伊達に400年以上生きてないな。いや、悪魔でも“生きて”って言っていいのか?
「そりゃありがたい。じゃあよろしく」
「任せときな。人間用のメニューがいいんだろ。じゃあ『フィッシュアンドチップス』でいいな」
「えっ!」
俺は思わず動きを止めた。
“フィッシュアンドチップス”、イギリスにおける定番料理。実は俺はこいつにあまりいい思い出がないんだ。
学生時代に友人と金を出し合ってイギリスのロンドンに行った。ビートルズや某アニメ作品で有名な“アビーロード”ってとこを見るのが主な目的。
学生だから金はない。宿も食事も贅沢はできない。
そんな俺らの主食となったのが“フィッシュアンドチップス”。
まあたぶん、通った店が良くなかったんだとは思うが。
「なんでフィッシュアンドチップスなんだ」
「おや? 前に言わなかったかい。あたしが最後に憑いたのがイギリス人だったんでそのときに覚えたのさ。私の力を使えば一瞬にして本場のやつが出せるよ」
「うわあ、すごいですね。楽しみです」
自信満々の久梨亜に興味津々の美砂ちゃん。
「いや、いい。やっぱ俺が用意するわ」
俺は手を振りながらそう言うと棚から食パンを取り出す。3枚しかない。ひとり1枚だけど仕方ない。帰りに買うのを忘れないようにしなくちゃ。
「遠慮しなくてもいいのに」
「いや、ありがたいんだけど今そういうの食べたい気分じゃないんだ。また今度頼むわ」
気のない返事をしながら食パンをオーブントースターに放り込む。飲み物はコーヒーでいいか。久梨亜は大丈夫だろう。美砂ちゃんはミルクと砂糖をたっぷり入れればいいかな。
3人でテーブルを囲んで朝食をとる。そういえばこれから食費は3人分かかることになるのか。キツイな。天使と悪魔だからって食事なしってわけにはいかないらしい。
俺は大急ぎでトーストを詰め込んだ。幸いにして俺は今までトーストを口にくわえたままで家を飛び出した経験はない。そんなかっこの悪いことは絶対だめだ。まあもちろんトーストを口にくわえたままの美少女がぶつかってくるのなら大歓迎。当然こちらも経験なし。