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「じゃあ次は第2の質問に移るけど、これはすなわち奥名先輩の記憶をいじってお前らの名前を植え付けただけでなく、存在を不審がらせないようにしたってわけか」
「そのとおり。ようやく頭が働くようになってきたようだね」
久梨亜が上機嫌そうに笑う。こいつ俺のことをからかってやがる。
「じゃあ続いて第3の質問。これが一番重要。笑ってないでしっかり答えてもらうぞ!」
俺は精一杯ドスを効かせて声を低めにそして強めに発してみせた。気分はまるでTVドラマかなんかの凄腕取調官。お遊びはここまでだ。
しかし俺の付け焼き刃の迫力は本職の久梨亜に簡単に躱される。なんせこいつは悪魔だ。人を脅すのなんか数え切れないほどやってきただろうからな。
「第3の質問? なんだっけ?」
「とぼけるな! 『どうして俺が人類滅亡の可否を背負わなくっちゃならないのか』だ!」
思わずテーブルをたたいて立ち上がっていた。演技じゃなかった。本当にちょっとむかついてた。
しかし久梨亜のやつは動じるようなそぶりをさっぱり見せやがらない。
「悪い悪い。でもこの質問に答えるのは美砂のほうがいいだろう。実を言うとそれが決まったときにあたしはその場にいなかったんでね」
またすっとぼけやがって。俺は久梨亜を睨みつけた。悪魔ってやつは昔から嘘つきと相場が決まってる。そしてこいつは悪魔。ならこいつも嘘つきに違いない。完璧な三段論法だ。
ところがそのときガタッという音がして美砂ちゃんが立ち上がった。
「はい、私はそれを少し離れたところで見て聞いていました。ですから私から説明します」
どうやら久梨亜の言ってることは本当らしい。俺はしぶしぶまた席に座った。
美砂ちゃんが語った内容はすぐには信じられなかった。天の神様、悪魔メフィストフェレス、それらの間で取り交わされた賭けの内容。そして俺を貫いたあの光の矢の正体。
「というわけです。以上です」
言葉もなかった。頭の中で“人類滅亡”の4文字が強烈な音とともに無限ループで響き続けていた。彼女が座ったのもしばらく気がつかないほどだった。
「しかし神様が賭けをするとはな。『神はサイコロを振らない』っていう言葉は間違っていたんだ」
ぼそっと言った。ジョークのつもりだった。もしかするとそれはあまりにも重たい現実から逃れたいという本能が発させた言葉だったのかもしれない。
しかしジョークを理解できない相手というものはいる。特に生まれて2週間の存在には難しいだろう。
「サイコロ? なんですかそれは」
「いや、知らないなら気にしないでくれ。知ったために俺を拉致して深夜バスに乗せようなどと考えでもされたら堪らんからな」
俺は意識的に笑みを浮かべてフフッと笑ってみせた。“ジョークを言ってるんだぞ”ということを俺なりにわかりやすく表現したんだ。
どうやら美砂ちゃんは俺が冗談を言っているらしいことは理解してくれたようだ。
ただ内容はよくわかってないみたいで小首を傾げている。それがまたかわいい。




