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人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん  作者: 金屋かつひさ
第1章 俺が人類滅亡の可否を背負わされることになったわけ
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1 天界にて その1

最初の4話は導入部。なぜこの物語が始まることになったのか、そのきっかけとなった天界での出来事の紹介です。

「むかしむかし、あるところに」

 というのは昔話の決まり文句だけれど、これは昔話なんかじゃない。

 また「あるところに」みたいに場所があやふやなわけじゃない。少なくともこの物語の最初においては。


 ではあらためて。


 ときは現代。場所は地上から高く高く、はるかに高くのぼった……


 といっても空を行く飛行機の中とかじゃない。ましてや国際宇宙ステーションなんかでもない。


 その場所の名は、“天”。


 天、すなわちいわゆる“神様”の住まうところ。


 そしてまさに今、その“神様”が大きなあくびとともにゆっくりと目を開いた。

 ちょうど昼寝から覚めたところだった。


 だいたい神様というのは暇なものなんだ。

 天としての仕事のほとんどは天使を中心に作られた優秀な官僚機構とでも呼ぶべきものがやってくれる。

 人間が作った同じような組織の場合は、最後に組織のトップが承認のはんこを押したりするものだ。しかし天の組織の場合は神様がそんなことをする必要すらなかった。


 むしろ天の組織からしたら、神様が急に思いつきでいわゆる“天変地異てんぺんちい”なんかを起こされるのは迷惑でしかない。いつもと同じようにこなされているタスクに、突然予定外のものが放り込まれるなんて勘弁してほしい。

 神様にはノータッチでいてもらいたい。仕事については口を挟まれたくない。


 だから天の組織は神様がなにもする必要のない体制を作り上げていた。神様におうかがいを立てることは、よほどのことが起こらない限りあり得なかった。


 そういうわけで神様は暇だった。

 昼寝をしても誰もとがめる者がいないくらいに。そして昼寝から起きてもなにもすることがないくらいに。


「暇だ」

 神様はぼそっとつぶやいた。


 でもそれにこたえる者はだれもいない。大きな真っ白い部屋の中にいるのは神様ただひとりなんだから。


「暇だ」

 また神様は同じセリフをつぶやいた。

 暇で暇でもう死んでしまいそうなくらいだった。もちろん神様だから死ぬことはできないのだけど。


 とにかく何かしたかった。でももう大抵のことはやってしまった。

 この部屋の床に敷き詰められたボードの枚数はもう1千と563万9752回も数えたし、ベッドの位置も32万6975回も変えた。

 運ばれてくる食事の皿で皿回しをやったのなど億を超える。今や両手両足に顔や腹まで使って百を優に数える皿を一度に回せるのなんかは、実は神様のひそかな自慢だったりするのだ。


 しかし今はそんなちっぽけなことじゃない、もっと大きな、ものすごく大きなことをやりたいという気持ちがふつふつといてきていた。


「そうだ、人類、滅ぼそう」

 神様はぼそっとつぶやいた。

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