脇役とはなんぞや
三部作位になりそうなので、連載にしてみた。
今回は脇役の描き方について、説明したいと思う。
作家の皆さまは脇役とはなんだと思っているだろうか。
物語の彩り? それとも主人公を引き立たせる咬ませ犬? もしくは主人公の友人?
どれもこれも大正解である。脇役とは主人公と共にある人間、それでいて、自由なロールの効く便利な奴である。
脇役とは主人公の人生と共に歩んだ誰かの人生であり、別の物語の主人公でもある。そっちでは主人公が脇役となる、忘れなければスピンオフでも出場できるぞ!
さて、読ませる努力シリーズと銘打った今回、諸兄らはこう思っているだろう。
「脇役なんて人気に関係あるの?」
あるのである。
物語が好きな読者達には一定量の脇役好きがいる。
あなたの小説が読まれるようになって、ブックマークも多めにもらえるようになれば、そう言った読者層を開拓する事を考えなければならない。
それにだ、脇役は主人公の出来ない事を出来る。
どう言う意味かわかるだろうか?
わかった人間はもう読まなくていいだろう、わかってもどうやって描けばいいか分からない人は読む事をお勧めする。
さて、本題だ。
脇役は主人公がやらない事をできる。
これはどう言う意味かと言うと、能力的な話ではなく、性格的な話になる。
例題を出そう。
例えば、善人の主人公が居るとする。
彼は殺しなんてしたくないし、困った人間が居ればとにかく手を差し伸べてしまう人だ。偽善者とも呼ばれるし、悪いやつだって殺さないで放っておいてしまう、ちょっと困った奴だ。
それでだ、彼は村を壊滅させて、女をさらった山賊達を殺さないと言い出してしまう。山賊達は命乞いをし、主人公に助けを求める。こんな感じだ。
「もう殺しも盗みもやらねぇ。自首して今までの罪を償う」
ボロボロの姿で跪いて、そんな事を懇願する。
優しい主人公は哀れに思って、彼らを開放しようと考える。そこに待ったをかけられるのが、友人でもあり同等の存在でもある脇役だ。
脇役はこう言う。
「自首してもどうせ死刑だ。それに、こいつらが自首する保証はない」
こう言われてしまえば、主人公は悩んでしまう。
どっちにしても死ぬし、本当にそんな保証はない。
ではどうするのがいいのだろうか。
どうだろう、主人公の人間性も、脇役の人間性にも深みが出たような気がしないでもないだろう?
うちの主人公達はサーチアンドデストロイな人間ばっかりなので、こんな話にはならないから、初めて書いてドキドキしている。
私の事はどうでもいい。
この話は、たったこれだけの事で主人公を成長させられる、と言う利点がある。
この例題の主人公は善人で無くてもいいのだ。例えば、平和な日本から来てしまった、ごく普通の学生でも、命乞いする彼らを殺すと言う行為は躊躇する。
殺そうとしてくる相手を恐怖から殺す事は出来ても、無防備な人間を殺す事は躊躇する、と言うのが至って普通な感性を持つ人間なのだ。
これで文句を垂れてくる読者とかは、無視した方がいい。
こんな話は一度やれば十分なので、二度目を書くことはない故に、異世界に来たばっかりの主人公のそんな行動に文句を垂れる奴は、たぶん、どこかがおかしい。
その狂気に他の読者が引く前に、いなくなるようにスルー推奨である。
さて、脇役の魅力は解ってもらえただろうか?
次は描き方である。
まず決めるのは、その脇役が居る立ち位置だ。
彼はどんな仕事をしているのか、して、その仕事は主人公と対立する立場なのか、協力する立場なのか。
その仕事で、彼は偉いのか、それとも偉くないのか。
どこで主人公と出会って、彼と共にあるようになったか。
この三つを世界観に照らし合わせて、まず決めてしまおう。
次は、ロールを決めよう。
友人か、ライバルか。
友人であっても、ライバルであっても、結局、取り合わせは無限大である。
例えば友人であるなら、酒場で知り合って徐々に仲良くなった冒険者とか。
戦場でばったり遭遇、一緒に逃げていたら冒険する羽目になったとか。
ヒロインの護衛で敵視していたけど、主人公に好感を抱くようになって友人になったとか。
ちょっと考えただけでも、三つの組み合わせが浮かんでしまう位には、無限大だ。
ロールを決めたら、次は初対面の時の出会い方だ。
敵として出会うのか、味方なのか、ただの偶然か、同僚か、もともと友人なんてパターンもある。
これは、最初に決めた設定を守っていれば、どの出会いもドラマチックな出会いとなる。
後は設定の赴くまま、筆の乗るまま書けばいいだけの話だ。
バトルが多い物語ならば、ここぞと言う時にライバルを出し、恋愛の物語ならば、恋を応援してくれる友人だったり、ヒロインを取り合う男だったりと、様々なムーブが出来る。
勇ましい主人公と共にある弱気な脇役だったら、主人公が離脱してしまった時に漢を見せればよい。
弱い主人公を導く強い脇役だったら、主人公を庇って戦闘不能になり、勇気を出す手伝いをすればいい。
主人公と切磋琢磨していた脇役なら、最終決戦の後、お互いボロボロの姿で決着をつければよい。
どれもこれも忘れてはならないのは、脇役も主人公と同じくらいかっこよく書くべきなのだ。
「情けなくてー、どうしようもなくてー、せこくて足が臭くて、格好つける割にはすぐにやられる情けない奴、主人公SUGEEEEEEE」
はいダメ!
そんなのなろうには溢れてる、しかも、殆ど読まれてない小説だ。
「情けなくて、どうしようもなくて、せこくて足が臭い割には根性のある奴、でも弱い」
だったら、ギャップにもなって、脇役人気もでる。
弱い人間には弱い人間なりの戦い方があり、譲れないものの一つや二つ、誰にだってあるものだ。
あまり長くなっても、面倒くさくなるだけなので、今回はここまでにしよう。
では、これを利用して楽しい小説ライフを送ってほしい。