水曜日〜努力〜
醤油をボトルで初めて買った。
卵は2パック買ってきた。
ついでに米5kgも買ってきた。そして炊いた。
これで準備は万端だ。
炊飯器はあるのに米がなかったからな…
チンのやつは非常用に取っておこう。
「よし、やるか」
炊けたご飯を茶碗に盛り、卵と醤油を持ってちゃぶ台へ。
もう一度本をよく読み、復習する。
俺は何をやってるんだ…と一瞬思ったりもしたが、今日の山下くんの話を聞いて、俺は出来ないんじゃなくてやってなかっただけだと。
俺だって出来るということを証明せねばな。
そして嫁がいない今、あいつの味が出せるくらいまでレベルを上げると!
卵を1つ持ち、そして…
コンコン…
「ふぅ」
ひびは入った。
ここまでは完璧だ。
問題は次だ。
親指をひびに当てて、ほんの少し力を…
ぐじゃ…
oh…
(む、難しすぎる…!)
力加減が微妙に出来ん。
どうしてもひびに指が食い込んでしまう!
「くそっ…一体どうすれば…?」
俺は本に再び目をやる。
ーー?
【卵を上手に割るポイント!】
『ヒビが入ったら、そこに両手の親を当てて、広げるように割ります。感覚としては割ると言うより左右に広げる感じになります!』
「な、なん…だと…⁉︎」
衝撃だった。
そんな事で良かったのか?
割るんじゃないのか!
そ、そうか…広げる感じか。割ってはいけないのか。
と言うか、先にここを読んでおけばっ…
「…くっ」
俺はあまりの事に頭を抱えた。
昔からこうだ。
重要なところを見逃してしまう節がある。
俺の悪いところだ。
でもまぁ、ポイントも分かったことで次だ次。
コンコン…
「…………」
ごくり、と生唾を飲む。
(左右に、開くように…)
…ぐ……ぱかっ。
oh!
「出来た…出来たぞ!」
そこには、真っ白なご飯の上に鮮やかな黄色の卵が乗っていた。
これが、卵かけご飯!
何という色合い。いいじゃないか。
さて。
これに醤油を垂らしていただこうではないか。
「ふんふんふ〜ん♪」
初めての卵割りに、俺は舞い上がっていた。
どばどばどばどばっ…!
oh…
…なんてこった。
一瞬で茶碗の中は醤油まみれになった。