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火曜日〜挑戦〜


「ただいま」


いそいそと帰ってきた俺は、とりあえず鞄を置き、ネクタイをさっと緩めると、買ってきた本を取り出した。


(やっとだ…やっと読めるぞ)


晩メシのことなどいざ知らず。

本屋を出た俺は、そのまま寄り道せず帰ってきた。


「よし、読むぞ」


早速表紙をめくった。

目次?そんなものどうでもいい!

次のページ。


「料理のさしすせそ?」


思わず声に出していた。

何だこれは?

料理をするのにこんなものを覚えなくてはならんのか。



『料理のさしすせそ』

さ・砂糖

し・塩

す・酢

せ・醤油

そ・味噌



「…ちょっと待て」


俺は突っ込まずにはいられなかった。


「何故『そ』が味噌なんだ?おい!『そ』はソースだろうが!」


もういい!

こんなページ見ても仕方がない。

次のページだ。



【レベル1ー卵かけごはんー】



「……」


これが料理?

あれが料理に含まれるのか?

俺を馬鹿にしてるな。

冴えない中年サラリーマンだと思って馬鹿にしてるな!

ようし、いい度胸だ。

そんなもん、10秒で作ってやる。

俺はスッと立ち上がると、冷蔵庫へと向かいーー

卵と醤油を…


「醤油⁉︎」


ないぞ?

大体が普段からコンビニ常連のこの俺が、醤油なんてもんを常備しているとでも…


「これでいいか」


そこにあったのは、コンビニ弁当に入っていたが使わなかった小っさい醤油。

それを手に取ると、卵と一緒に取り出した。


「米…はないからチンで温めるやつを…」


くそっ。

たかが卵かけごはんでさえも、既に『料理のさしすせそ』が入っているだと…⁉︎

手強いな、料理の世界…


温めたごはんを茶碗によそい、箸を持って机の元へと向かった。

改めて本を見直す。

するとそこにはーー


『慣れてきたら卵の片手割りも挑戦してみましょう』


見逃さなかった。

俺は見逃さなかったぞ。

良く読まないとスルーしてしまいそうな小さな文字で、ページの隅っこの方に書いてあったこの文章を。


(どこまでも俺を馬鹿にしてるな)


卵の片手割りくらい簡単だということを、今ここでハッキリせねばな。

何せ、レベル1だ。

これくらい楽勝にーー


コンコン…………ぐじゃ。


oh…


白い米の上に白い殻が。

恐るべしレベル1!!!


俺はベトベトの手を洗ったあと、米の上に散らばった卵の殻を、箸で丁寧に取り去った。

あとに残ったのは見るも無残な卵(少量)と、それに見合わない醤油。


「なるほど…卵かけごはんも立派な料理の1つ、か」


そう呟くと、箸でそれらを混ぜ合わせ、久々に麺以外のものをこの時間に食した。


(明日は卵と醤油を買ってこよう…)



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