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4話

「俺が泣いてるかとかそんなのはどうでもいいからさ!俺にも進展があったんだよ!少し」


「ホントかなぁ〜」


 こいつ…信じてないなぁ。

 フランのテキトーな対応っぷりに、俺は少々苛立ったが、まあ、それは計算内。

 ここで、セリーヌさんを紹介して、フランをびっくり仰天させてやる!


「なにせ、俺にもやっと友達一人目が作れたんだからな!」


「へぇー。妄想とかじゃなくて?」


「ちっ、違うよ!」


 これで、セリーヌさんの存在が俺の妄想でしたー。とかなったら、今まで俺はとてつもない変人っぷりを見せつけていたことになるじゃん!

 そんなことはない…と思う。絶対に。


 そう、妄想ではないはずだよ…ね?


 俺は少し不安な気持ちのまま、セリーヌさんのいるはずの俺の背後に振り返った。

 そこには、もちろんセリーヌさんの姿が…。


「お兄ちゃん?」


 突然、フランがニヤニヤした顔で俺に迫ってきたが、今はそれどころじゃない。

 なぜなら…セリーヌさんの姿が、ここにいたはずのセリーヌさんが…。


いない!!!!どこにもいないんだよぉ!!


 もしかして、今まで俺が見ていたセリーヌさんは本当にフランの言ってた通り妄想だったんだろうか…。

 でも、俺の目にはちゃんとセリーヌさんの金髪の似合った整った顔も俺より長身な体も全部写ってたはずだし…。

 いや、だからそれが妄想なんじゃ…。


「ザックちゃんが欲しそうにしてたので買ってきましたよ!パフェ!」


 突如、妄想かと思われていた、透き通るような声が俺の脳内に響き渡る。

 この声は、この落ち着くような響きの声は…


「セリーヌさんっ!!」


 俺は今まで発したことのないぐらいの大きな声でセリーヌさんの名前を呼んだ…

 って、またザックちゃんって…。

 いや、いいんだけどさ、いいんだけど、なんか納得できないんだよな。この呼び方。


「ほら!見ろフラン!驚いたかっ」


「…ホントだ。今のは真面目に驚いた」


 フランは信じられないとでも言うような顔をしたままセリーヌさんのもとまで近づき、自分とセリーヌさんの身長差のせいか、フランは顎を90°じゃないかと思うぐらい上に傾けた。

 俺とセリーヌさんでも身長差あるけど、俺より小さいフランとセリーヌさんが並ぶと、当たり前だけどもっと身長差あるなぁ…。

 俺は、セリーヌさんから受け取ったパフェを食べながら、うんうんと一人頷いた。


「って、ん?セリーヌさん?だっけ。

セリーヌさんって…隣の国の王様の娘じゃなかったっけ」


「ありゃ、バレちゃいました!?まさか見破られるとは…」


 本当に身長差すごいなぁ…って、え?

 俺は2人の会話に若干ついていけない感じのまま、内容を確認した。まだほんの少ししか会話してなかったけど。

 …えーと、セリーヌさんが隣の国のお嬢様ってことだっけ?

 あー、セリーヌさんの服、確かに気品のありそうなドレスだし、まあわかるかも…


「って、えぇぇ!?」


「お兄ちゃんうるさい。それでもコミュ障か」


 いや、それでもコミュ障かって…コミュ障じゃない方がいいし、ツッコミ方おかしいだろ。

 それより、セリーヌさんがお嬢様だったなんて…。


「まあ、とりあえず私はフラン。で、そこのコミュ障のお兄ちゃんはザック。よろしくっ」


「私はセリーヌです。よろしくお願いしますフランさん」


 2人の自己紹介が終わり、俺たちはそのまま今日は解散するということになった。ついでになんか俺も自己紹介されてるけどそれは置いておこう。


 セリーヌさんが別れる際に手を振ってきたので俺も振り返そうとしたが、腕が思うように動かず、手首だけを少し動かすような形で手を振り返すことになった。セリーヌさんに対してあまりコミュ障っぽくならなくなってきたと思ってたのに…、やっぱりまだ俺のコミュ障は改善できそうにない。


「お兄ちゃん。なにあの手の振り方、あと少しで笑い吹き出すとこだったよ」


 フランはケラケラと俺を馬鹿にするようにそう言うと、まだ残っていた俺のパフェを目にも留まらぬ速さでぶんどった。

 俺のパフェはそのままのスピードでフランの口の中に入り込むと、残ったスプーンとガラスの入れ物だけが俺の手の平に戻ってきた。

 まだ半分以上残ってたのに…、全部ペロッと食べたぞこいつ…。


「俺のパフェぇ!!」


「うるさいなぁ。後で作ってあげるって、これ限定パフェじゃないし。

あー、あとお兄ちゃん。もし、セリーヌさんと会話できるようになったとしても、それでコミュ障が治ったーとか調子に乗っちゃダメだよ。

どうせ他の人には上手く話せないんだろうし」


「わかってるよ。要するに、このまま友達を増やしていって、知らない人とでも難なく会話できるようにすればいいんだろ?」


「まあ、そうなればいいけど…」


 フランはため息を吐きながらそう返すと、「それができるようになるまであと何年かかるんだろう…」と一言追加した。

 まあ、確かに俺、まだセリーヌさんともまともに話せてない状態だし、他に友達を作れるかどうかもわかんないし、フランがそう思うのも仕方ないと思う。

 まあ、あんまり考えすぎるのもよくないし、とりあえず今日は家でゆっくり休もうっと。


 俺とフランはそのまま大きな城の建物から何十分かけて外に出ると、次は広い街のど真ん中に出た。

 この建物から出るだけでも時間が掛かったのに、次はこの馬鹿広い広場を横断しないといけないなんて…。

 俺は、その場で大きくため息を吐くと、隣にいたフランも同じようにため息を吐いていることに気づいた。


「ダメだぞフラン。これくらいでため息吐いちゃ」


「いや、お兄ちゃんもため息してたでしょ」


 あ、結構地面の方に顔を向けて、ため息吐いてたから気づいてないだろうと思ってたけど、どうやらフランも俺がため息を吐いていたことに気づいていたらしい。


「おっ、お兄ちゃんだからいいんだよ」


「あっそ。じゃあそこのクレープ屋さんで私とお兄ちゃんの分のクレープ買ってきてよ、お兄ちゃんでしょ?」


「すみません。今のなしでお願いします」


 俺が1人でクレープを買えるわけないだろ。俺の弱点をこの妹が何個も知っているせいで、俺は今までフランとの口喧嘩で一度も勝ったことがない。

 今のはもう口喧嘩でもなんでもなかったけどさ。


 街にあった噴水広場を抜けると、そろそろ街の端まで近づいてきたことになる。

 俺とフランはようやくその噴水広場まで辿り着くと、歩きっぱなしも疲れるので、ひとまずそこで休憩することになった。

 そして、噴水の前にちょこんと座ってから数分経つと、その俺とフランの座っている噴水の端の前に、何人かの歳の近い子供たちが近寄ってくる。

 そして、その子供たちは迷わずフランの周りに集まった。

 こういうのは、本当にやめてほしい。

コミュ障の俺のメンタル的にもヤバイし、かなり気まずくて死にそう…


「フランちゃんっ!どうしたの?いつもなら商店街の近くにいるのに、噴水広場にいるなんて珍しいね」


 そう言った1人の男子は、その後に俺がいることに気づいたのか、キッと俺を睨みつけた。

 あのね、俺こいつの彼氏さんとかじゃないから。兄だから。君がもし俺の妹を狙ってるんだとしたら俺許さないよ…とか、言ってみたいね。

 そういや、よくみたら集まってる大半の人が男性な気がする。俺の妹、人気ですね〜。

 まあ、確かに兄の俺から見ても可愛いし、しっかりしてるし、若干Sっぽいところを抜ければいいと思うよ…うん。あ、シスコンじゃないです。


 因みに、ここでは14歳以上からは一応成人と見られることから、城の依頼なども14歳から受けれるようになる。俺は依頼なんか受けなくても自分で勝手に外に出ていろんな奴を狩ってたけど…。

 まあ、大人というのも形だけで、ほとんどの家庭は18ぐらいになってから、子を家から追い出すらしい。

どうでもいいだろうけど、俺の家に親がいない理由は2人共俺が小さい時に行方不明になったからだ。代わりに保護者になってくれた俺のおばあちゃんも去年他界した。

 フランはコミュ障の俺と違い、いろいろと手伝いなどができたため、他の親戚に引き取ってもらえるようになっていたのだが、何故か…いや、金のために俺の方についてきている。


 …と、だいぶ違う話になってきてたな。

 えーと、なんだっけ。今は確か、フランの周りに沢山の男たちがまとわりついていたんだっけ。

 で、そいつらからすごーく怖い目で見られてるんだっけ。

 …えっと、どうしよう。めちゃくちゃ逃げたい。

 でもなぁ。そしたら兄としての威厳が…もとからないけど。


「あー、ごめん。今日忙しいから」


 フランは男どもにそう素っ気なく対応すると、スタスタと俺を置いて歩きだした。

 いや、ちょっと待って…。俺を1人にしないでよ!なんだか1人にされると周り囲まれて立ちづらいじゃん!

 ん?周り…を囲まれて?

俺は念のためもう一度確認するように回りを見渡した。

 すると、俺の周りには、ズラリと顔を鬼のように変えた男どもが立ちふさがっていた。


「あ…えっと…。えぇ〜…」


 どうしようかな…。フランの兄って言えばいいんだろうけど、コミュ障な俺が急に言えるわけないし…

 いや、言わなきゃいけないんだけど…


「なあ、お前。フランちゃんのなんだよ」


 …少し離れたところで「げっ…」と声を漏らしたフランの声が聞こえてきた。


 一方、ちょうどその頃、セリーヌさんは重度の方向音痴のため、城の兵士たちにより大騒動の末、やっとのことで保護されたらしい。


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