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第七話~仲間~

最近ペースアップしすぎてストックが無くなった作者です。頑張って書かないと……。


活動報告にて再び絵を投稿しました! 見る方は本編を読んでからをお勧めします。

《――――》


 う、うぅ……あれ?


《―――じ、―――よ》


 ここは――


《我が主よ!》


「うわぁ!?」


《む、ようやく精神がこちらへ来たか。大丈夫であるか?》


 あれ? スカル? というか、ここ精神世界? どうしてここに……。


《ふむ……。一時的に記憶が混濁しているようであるな。まぁ、目が覚めれば思い出すであろう》


 安心したような仕草をするスカル。


「スカル、一体何があっ……」


《む……やはりエネルギーを使いすぎたか。早くも時間切れだ》


 話聞けよ!


《それではまた会おう、我が主。仲良くするが良いぞ》


 いつも通りの声色でそう言うスカルだったが、その赤い眼光は若干笑っているように見えた。それも、何かを楽しむような。


「えっ、ちょ、仲良くって誰……と……」


 勝手に話し初めて勝手に去ろうとするスカルへ俺が質問しようとすると、意識がブラックアウトしていく。頭の中に大量のクエスチョンマークを浮かべたまま、俺はこの精神世界から退場した。



「うー……」


 外からそそぎ込む光で意識が戻る。ここは……何処だ?


 うっすらと目を開けると、見慣れた自分の部屋が写る。……って、あれ? おかしいな、確か俺は堤防の上にいたはず……。どうして自分の部屋に?


 ……だんだん抜けてた記憶が戻ってきたぞ。目の前に来た高潮に絶望してたらいきなりスカルの声が聞こえて、勝手に体がレーザー砲っぽいのぶっ放して、そしたら魔法陣が現れて……。


 ハラリ。


 少し頭を動かすと、目の前に髪の毛が垂れてきた。……あれ? 俺の髪の毛って、こんな色だったっけ? いや、どう見ても違うよね。俺の髪は真っ黒だが、この髪は……。


「すー、すー……」


 ……そういえばさっきから、自分以外の息が聞こえるぞ。気のせいかと思ってたんだけど……これは違うな。それに、背中に何か温かい物が押しつけられている気がす……。


「……にゃははー……」


「ふおぉっ!?」


 首を後ろへ回した俺の目の前に現れたのは……ヨダレを垂らして寝る、一人の少女の顔だった。


「……んむー……ふぁ?」


 俺の奇声で目を覚ます少女。手で目をクリクリと擦っている。


「え……あ……」


 対して、硬直する俺。ここは俺の部屋であり、このベッドは俺が寝る場所だ。だから俺がこの場で寝ている事には何の問題もないわけで、本来ならばここで俺と一緒に寝ているこの少女の方に問題があるはずだ。はずなのだが……。全力でパニクっている俺に、そんな事を考える余裕などあるはずもなく。


「すっ、すんませんっ!」


 ハイスピードで少女と反対側へ体をスライドさせ、半身を起こしてビシッと謝罪する。何がすいませんなのか? 俺にも分からないよそんな事。


「んー……おはよー、りーだー……」


 ……へ?


 まだ目が醒めきっていないのか、呂律が回っていない様子でそう言う少女。ふあぁ、と可愛らしい欠伸をすると、ニコッと笑顔を向けてきた。なっ、なんという破壊力……っ!


「……起きないの?」


 不思議そうな目で俺を見てくる少女。え? と言って改めて自分の今置かれている状況を確認する。“美少女と一緒にベッドに入っている”。うわぁー、すっごい状況だぁー。……え?


「す、すいませんっ!」


 大急ぎでベッドから跳び起きる俺。まさか目が醒めた直後に二度も謝る日が来るだなんて思ってもみなかった。というか、本当俺は何を謝ってるんだ? 誰か教えてくれ。


「……?」


 再び不思議そうな目をする少女。流れるようなオレンジ色の髪が、肩からサラサラと落ちる。


「え、あ、ええっと……」


 マズイ、テンパってまともな思考ができない! 落ち着け、落ち着くんだ俺! すぅー、はぁー、すぅー、はぁー。……よし、色々と問題はあるが、問題ない。


 どっちだよ、という脳内セルフツッコミもできるくらいに落ち着いた俺は、目の前でベッドから上体を起こし延びをする少女を改めて見る。


 とんっでもない美少女だ。歳は俺と大して変わらないくらいで、髪は長くてオレンジ色。服装はセーラー服で、スカートはミニだ。さっきまで寝ていた事もあり、着崩れていて色々とヤバい。


「……リーダー?」


 可愛らしく首をかしげる少女。と、とにかくこのままじゃろくに話もできないし、リビングへ移動する事にしよう。



「まぁ、とりあえず座ってください」


「はーいっ」


 うん、元気な返事で大変よろしい。って、そうじゃなくて。


 自室を出る時に日時と時間を確認すると、朝の5時だった。確か高潮止めに行ったのが1時だったから……軽く15時間は爆睡(気絶?)してた事になる。つい最近まで極度の睡眠不足に悩まされていたかと思えば、今度は異常なまでの長い睡眠。全くもって忙しい体である。


「まず、名前を聞いても?」


「あっ、はい」


 真剣な俺の顔を見て、楽しげだった顔を引き締める少女。……マジメな顔しててもかわいいな。


「ええっと、私の名前はアクア。竜種、水竜ウォータードラゴンの一匹ですっ」


 ビシッという効果音がつきそうな様子で言い放つアクアさん。……え、あなたもドラゴン? というか、水竜って……。


「うん! スカルに呼ばれて、リーダーを助けるためにこっちの世界に来たんだ! よろしくね!」


 再び花のような笑顔を咲かせるアクアさんだった。


 ……スカルに対しても言える事だけど、水竜だからアクアとか、ネーミングがかなり安易な気がする。というか、同じ種類のドラゴンだって沢山いるだろうに、カブりまくって大変じゃないのか?


「ところで、リーダーって俺の事だよね? どうしてそう呼ぶんだ?」


 最速、俺はそんな柄じゃないと思うんだが。


「んーとね、元々スカルは私たちのリーダーだったの。で、リーダーはスカルの力を受け継いだ。だからリーダー」


 んー、と首を傾げて少し考えた後に、相変わらずの満面の笑みで説明してくれるアクア。やっぱりスカルは竜のお偉いさんだったようだな。


 その後、アクアから色々話を聞いた。曰く、あの高潮を止めてくれたのは彼女だという事。曰く、気絶した俺を家まで運んだのも彼女だという事。曰く、高潮を止めるという俺の望みを叶えるために、スカルが大量のエネルギーを使って彼女を“召喚”したのだという事。


「あぁ、それで精神世界にいられる時間が短かったのか……」


 こじ開ける時もそうだが、精神世界はその状態を維持するのにも大量のエネルギーを消費する。彼女の召喚によってスカルの持つエネルギー総量が減っていたのならば、昨夜のあのスカルの対応も頷けるというものだ。俺が長い時間爆睡していたのも、やはりこれが原因なんだろうか?


「召喚の時のエネルギー消費は精神世界うんぬんの比じゃないからね……」


 アクアも腕を組んでうんうんと頷く。……組んだ腕に乗り上げた大きめのソレから思わず目を反らす。


「……ん? そういや、アクアが俺をこの家まで運んでくれたんだったよね? どうやって場所を知ったの?」


 突然こちらの世界へ呼び出されて、召還した当の本人は気絶。俺の家の場所を知る手段は無かったと思うんだが……。


「それなら、こっちの世界へ来る瞬間にスカルに教えてもらったよ!」


 アクアの言う所によると、世界間召還によって呼び出された場合、こちらの世界におけるある程度の常識は魂に刻みこまれるのだそうだ。しかし今回の“神山条一郎という一個人の家”のように一般常識とは程遠いけれどもこちらで生活する上で大切な知識は、召還した張本人であるスカルが手動で刻んだのだそうだ。相変わらずマメな奴である。


「あっ、そうだ! リーダー、まだ私の人間の姿しか見てないよね。今竜化するね!」


 突然思い出したようにそう言うと、すっと立ち上がって数歩下がるアクア。ってちょっと待て! こんな所で竜化されたら、家が……。


 それを伝えようとした俺の努力空しく、どこからか現れた水……ではないな。輪郭がはっきりとしていない、幻のようなものだ。あれが俺で言うところの黒い霧なんだろうか? とにかくそれに包まれていくアクア。俺と違って、水みたいに具体的な能力だとああなるのか……。


 数秒の間の後、渦を巻いていたその幻の水のようなものが少しずつ消えていって……って、あれ? もしかして、そんなに大きくなってない?


「クオッ」


 そこから現れたのは、一匹の猫のような動物だった。とは言っても、ヒョウくらいの大きさはある。筋肉質とは無縁そうなその細くきれいな流線型を描く体が、美しい猫のように見えたのだ。


 その体も瞳も透き通るような水色で、ピンと立った耳の横に魚のヒレのようなものがついている。また、立ち上げてゆらゆらとさせているその尾は自身の体よりも長く、こちらも先端にウナギなんかによく見られるような細長いヒレがついていた。体は体毛の代わりにとても細かくて全体にツルツルした鱗が生えていて、美しく光を反射している。背中にはトビウオの胸ビレのようなものが畳まれており、どうやらそれが翼のようだ。シルエットは完全に哺乳類だが、それらの特徴かられっきとした水棲の竜なのだという事が見て取る事ができた。


《改めて、初めまして! 竜種、水竜ウォータードラゴンのアクアです! よろしくね、リーダー!》


 いつも精神世界でスカルが使っている精神対話テレパシーで話しかけてきつつ、竜化してなおも可愛らしい顔を再び綻ばせるアクアだった。



「んー……」


 うろうろ……。


「えーっと、国語と……」


 ガサゴソ……。


「むー……」


 じー……。


「……えっと、どうしたの?」


 さっきからうろうろしたり凝視してきたりしてすっごい気になるんですが。


「……出かけるの?」


「うん、今日月曜日だし。学校行かなきゃ」


 いくらドラゴンになったとしても、俺は一日本人としてちゃんと学校へ行くつもりだ。例えそれが、かわいい少女の居候いそうろうが突如来た日でもである。


「私も一緒に行っちゃダメ?」


「いや、流石にそれはマズいでしょ。申し訳ないけど、留守番、頼める?」


「……わかった」


 渋々、本当に渋々という様子で了承してくれるアクア。本人には申し訳ないけど、留守番がいるっていうのは本当に助かる。何せこんな大きい家な上に実質俺の一人暮らし、まさに空き巣ホイホイと言っても過言ではないのだ。これで、外出のたびに神経を尖らせて細心の注意を払って戸締まりするストレスからも解放されるのだ!


「できるだけ早く帰ってくるからさ。それじゃ、行ってきまーす」


「……うん! いってらっしゃーい!」


 結局開き直ったのか、玄関で見送りをしてくれる時にはすっかり元気になって、眩しいくらいの笑顔で送り出してくれた。……ヤバい、ちょっと幸せかも。


「さぁーて、今日も頑張るか!」


「おー、そーだなー。頑張ろうなー」


 ……ん?


「って、ジ、ジン!?」


「よっ、ジョー。寝不足はすっかりみたいだな」


 突然家の門の裏から現れたジン。その口元はニヤニヤとしており、それを見た俺は硬直する。


「……聞いてた?」


「逆にこの距離で聞こえないわけないだろ。いやー、ちゃんとカウンセリング行ったのかどうか心配で来てみりゃ、なるほどなぁ、寝不足ってそういう事か」


 うんうん、と頷くジン。って、ちょっと待てぇい! お前、今盛大に誤解してるよな!? 違うからな!?


「ほー、そうですかい。ま、お幸せにな」


「だから違うと言ってるだろ!」


 ……ゴホン。さて、まさか早々にアクアの存在が他人に知れるとは思わなかったが、まだそれがジンで良かった。こいつなら変に噂を立てまくるような事はまず無いだろうし、何より一番信頼のおける友だ。こいつになら、まぁいいか。……妙な誤解をされるのは御免だが。


「……念のために言っておくが、誰にも言うなよ?」


「わーってるっつーの。お前が不利になるような事、俺がした事あったか?」


 強いて言うなら、お前というイケメンのせいで過去に一度フラれた事があった。まぁ、わざわざ言うほどの事でもないし、イケメンなのはコイツ自身の意志じゃないから仕方ないがな。



「ふいー……」


 帰りのチャイムが鳴り、盛大にため息をつく。やっぱり片腕での活動は疲れる事この上ない。


「ため息つくと幸せ逃げるぞー、折角リア充なんだから大切にしろよ」


「うっせぇ」


 やはりいつものように接してくれるジンに安心しつつ、さっさと帰りの支度を済ませる。


「早く帰るって約束しちまったからな……」


「くっそー、のろけやがって。羨ましいぞ俺は!」


 拳で俺の側頭部をグリグリしてくるジン。言うの何度目か分からないが彼女とはそういう関係じゃないし、大体今まで学年の女子からの人気を全て掻っ攫ってきたお前にだけは言われたくなかった。


「まっ、これで俺も安心できるってもんさね!」


 俺は独身サラリーマンか何かか、と内心ツッコミを入れつつ校舎を出ると、校門の所が何やら騒がしい。どうやら数十名の生徒達が、遠巻きに何かを見ているようだった。


「おい、あのコ誰だ……?」


「かわいー……。あの髪の色、外人さんかなぁ?」


 みんなの呟きを聞くに、どうやらその中心に注目を集めている人物がいるようだ。完全に油断しきっていた俺は、ジンと共にそこへ近づく。そしてそこにいたのは……。


「あっ、リーダー!」


 オレンジ色の長く美しい髪をした、一人の美少女だった。


 こちらに気づいたアクアの姿を確認してニヤッとこちらを見てくるジンだったが、こちとらそれどころではない。顔が青ざめ、全身から冷や汗が吹き出すのが分かった。あれっ、もしかして俺、今後の学校生活の分岐点に立たされているんじゃないか?


「にゃはー!」


「のおぉっ!?」


 俺をロックオンするや否や、まさに猫のように飛びつき抱きしめてくるアクア。だ、ダメだ、テンパりすぎて思考が……っ。


 それを見る周囲の目は、まさに唖然としたもの。男子の中には強く握り拳をつくって震えているものもいた。当然だろう。これほどまでの絶世の美少女が、フツメンである俺に嬉々として抱きついたのだ。横にいるジンは十字を切っている。ご愁傷様ってか? いや笑えねぇよ!


「とっ、とりあえず一旦離れて!」


 アクアの両肩を掴んで体から引き離す。一瞬キョトンとした顔をしたアクアは、再び俺を見てニパッと笑顔をつくった。いや、可愛い、可愛いんだけど、とにかくこのカオスな状況を切り抜ける方法を考えたいんだ俺はぁっ!


「おい神山、これはどういう……」


 近くにいた生徒の一人が尋常じゃない目で聞いてくる。


「完っ全に誤解だ! 恐らくみんなが考えているであろう関係では全く持ってない!」


「ほう? それじゃあどういう関係だ?」


「……い、居候いそうろう?」


「よっしゃ、シメよう」


「かっ、勘弁してくれぇぇぇ!」


 色々と大変な事になっている中、諸々の原因であるアクアはその可愛い頭にクエスチョンマークを乗せて、飽くまで傍観者を貫くつもりらしいジンはニヤつきながら、俺が各方面から攻撃を受ける所を見ていたのだった。

新キャラ登場! アクアさんです。ようやくヒロインが出せました……。


ここからは多少コメディ色が強くなりますので、ご注意ください。

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