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第一話~竜~

どうも、作者です。前回から続けて連続投稿しても良かったのですが、最初のうちに投稿しすぎて後々エタるという事態を恐れて間空けました。今後もこのスタイルでやっていきます。


それでは、第一話、どうぞ!

 キーンコーンカーンコーン……


「よーうジョーってうおぉ!? どうしたその腕!」


 現在、学校。結局は包帯でグルグル巻きにした上に三角巾で釣って、骨折のフリをすることにした。我ながら良案だとは思うんだが、片腕使えないというのは少し辛い。そういえば以前、右手の親指を骨折した事があったが、あの時は色々と本当に大変だった。その事を考えると、白骨化したのが利き手でなかっただけマシか……。


「あ、あぁ、ジン、おはよう。いやー、昨日転んじまってな」


「またお前にしては珍しいな。寝不足でボーっとしてたのか?」


 ……先程の親指の件しかり、俺って昔っから結構おっちょこちょいだったと思うんだが……。最近、コイツを親友と呼ぶのに不安を感じる事がたびたびある。


「あー、うん。階段でずっこけた」


「うわダッセー。気ぃつけろよ?」


 いつものように自席へ戻るジン。すまんな我が親友、嘘をつくのは少し心が痛むが、堪忍しろよ。



 学校が無事終わった。俺が懸念していたような事は何も起こらず、最初友達に左腕について質問責めを受けたくらいで後は平穏に一日が過ぎた。


 しかし本当、片腕でも使えないってのは大変だな。疲労が右手の親指骨折した時の比じゃない。しかも、片腕めっちゃ軽くなったせいで体のバランスがとりづらい。おかげで肩が凝ってしまった。


 一瞬かっこいいとも思えたこの左腕だが、これは今後の学校生活が心配だな……元に戻るのだろうか?


「ジョー、今日もお疲れさん。片腕で大変そうだったな」


 腕の事で色々考えていると、ジンが労いの言葉をかけてきてくれた。先行きが不安で気持ちが沈んでいたが、いつも通りに接してくれるジンに少し安心する。


「気づいてたんなら手伝ってくれても良かっただろ……」


「いやー、ここで俺が手を出したらお前が成長できないと思ってな」


 何がだよ。


「まぁ、お前らしいといえばお前らしいが……」


「寝不足なんだろ? さっさと帰って休んだ方がいいぞ。じゃあなー」


 肩掛け鞄を持ち、走って教室を飛び出していくジン。そういえばさっき、今日頼んでいたパソコンの基盤が届くって言っていたな。我慢が苦手なあいつの事だ、待ちきれないんだろう。俺も物作りは好きだし、気持ちは良くわかる。俺もコンピューターの勉強、してみようかな……。


「さて、俺も帰るか」


 下校中、今後どうするかについて思案する。


 正直、マジでこのままだと辛い。あまり長いことこのままだと骨折という言い訳も使えなくなるし、なにより公共の場での行動が大きく制限されてしまう。


 いっそ病院へ行って見せてしまおうか? ……いやいやいや、そんな事をした日には、実験台コースまっしぐらだろう。人権を保障されている日本であっても、今まで通りの生活が送れなくなるのは明白だ。


 とすると、やっぱり……。



 トントントントン……


 台所に、リズミカルに具材を刻む音が響く。もう包丁も慣れたものだ。


 それにしても……本っ当に骨だけだな。刻んでいるキャベツにそえた左腕を見て、つくづく思う。


 ……どの程度動くのだろうか?


 ふと、そんな事を考える。普通に動くので今まで試さなかったが、力なんかは変わっているのだろうか。そして右手には……包丁。思い立ったが吉日、これは試すしかない。


 前に右手親指を骨折した時、利き手である右手が使えなくて料理ができず、大変な思いをしたことがあった。それを教訓として左手での包丁練習を始め、今ではそれなりに扱えるようになったのである。……こうやって改めて考えると、やっぱり俺って料理好きなんだな。


 コン。


 包丁を左手に持ち変えると、無機質な物どうしが触れる音がした。半分千切りにされたキャベツへと、再び刃を当てる。そして動かし始めた……のだが。


 トトトトトトッ!


「うぇ!?」


 凄まじく驚いた。俺は普通に動かしたつもりだったのだが、この左腕はとんでもないスピードで動き、キャベツを細切れにしてしまったのだ。あと少し反応が遅かったら、自分の手まで細切れにするところだった。


 この腕……っ、スペックが半端じゃない。ただ早いだけならいざ知らず、まるで機械のように見事に同じ幅で千切りにしてしまったのだ。


「マジかよ……」


 つい独り言を呟き、はぁと一つため息をつく。正直、これは反応に困る。さっきの感覚を見るに、筋力(筋肉が無いため筋力という言葉が正しいかわからないが)もだいぶ上がっているようだ。ただただ厄介なだけの腕だと思えばまだ割り切れたものを、こうもスペックが上がっているとそうもいかないではないか。


 ……まぁいい。今はこの腕の事で悩むのはやめにして、料理が捗るとよろこんでおくとしよう。料理は楽しくやりたいからな。さぁーて、今日はメニュー増やすぞ!



「ごちそうさまー」


 ふぅー、旨かった。調子に乗って少々作りすぎたかと思ったが、思いの他完食できた。……もうこれ以上入る気はしないが。


 さて、左腕のおかげでペースアップしたものの、いかんせん品数を多くし過ぎたため料理に時間がかかってしまった。もう寝る時間だ。


 そう、寝る時間。俺の今後が決まる、重要な夜である。


 俺が何を考えているか、もう言わずともわかるだろう。そう、あの黒い物体ともう一度話をするのだ。


 自分一人で解決できない、かといって他人も頼れないとなると、もう望みはアイツしかいない。どうやら今回の一件の元凶というか、原因もアイツみたいだし。


 ……正直、今でも自分がこの腕をどうしたいのか分からない。さっきまではただうっとうしいだけだと思っていたけど、料理の時は悪くないとも感じた。それに……一つ引っかかっている事がある。


 それは、昨夜あの黒い物体に会った時に言っていた、あの言葉。


“我が力を主のものに”。


 恐らくだが、アイツの言うところの“主”というのは、俺の事なのだと思う。もしそうだとすると、これはアイツが俺のためにした事なのではないか? あいつが自分の力を俺に与えた(?)のだとしたら、腕のスペックがはね上がったのも合点がいく。


 以上の事を考えると、文句を言うにしろ何にしろ、やはりもう一度あの黒い物体と会って話をする必要があるだろう。他にいい案も浮かびそうもないしな。


 俺は、もやもやする気持ちと若干の不安を抱えて、眠りについた。



《先日は説明もなしに済まなかった》


 現在、夢の中。もうこの夢が見られないのではないかという懸念は杞憂におわったようである。


 そしてまぁ、いつもの如く目の前にあの黒い物体がいるわけだが……姿がだいぶ変わっている。黒いもやの中から赤く光る二つの点――恐らく目だろう――が覗いており、巨大な大理石のような角が、頭と思われる所から二本、どんと生えている。


「いや、別にいいんだけどさ……」


 良くはないんだが、今ここで文句を言って機嫌を損ねては元も子もないからな。


《まずは自己紹介だ。我が名はスカル。竜種、不死竜(アンデッドドラゴン)の一角である》


 ……え? 今、何て言った? ドラゴンがなんたらって聞こえた気がしたんだけど……。


《ふむ、やはり、信じられん、という顔であるな。無理もない》


「いや、信じるとか信じないとかそういうの以前に、状況が全く理解できてないんだが……」


《そうか……詳しい事は説明できんのだが、我は異世界より渡ってきた、という事が解れば十分であろう》


 その後、いくつかこの黒い物体ーースカルと話をした。曰く、とある理由から彼(?)は異世界から魂のみでこちらの世界へやってきて、自分と魂の波長とやらが近かった俺に憑依したのだという。


「それじゃあ、俺の腕が白骨化してたのは……」


《いや、それは我の憑依との直接的関係はない。その変化は、我が主の竜への生まれ変わりに準ずる変化だ》


 ……今、聞き捨てならない事をいいましたな? 俺が……ドラゴンに?


《如何にも。先程も言ったように、我がこちらへ来た理由は明かせぬが、我はそなたを主と定め、肉体を共有させていただく事にしたのである。我自身はこうして夢の中でしか主に干渉できぬが、代わりに我の竜の力を存分に使ってもらうべく、肉体の改変を行わせてもらった。即ち、主は竜に生まれ変わったのだ》


 な、なるほど……。要するに、同じ体に同居させてもらう家賃として、ドラゴンにしてあげましたよ……ということか。


《我ら不死竜は、竜種の中でも特にエネルギー内増量が多い種。それを完全に人間の姿に閉じこめる事自体、無理があるのだ。むしろ左手のみで済んで良かったと考えるべきであろう》


 どうやらこのスカルさん、ドラゴンの中ではなかなかお偉いさんのようだ。……そんなドラゴンの上位存在が、こんな極々フツーの中学生に憑依するのでいいのだろうか?


《今は人間の姿であるが、任意で“竜化”できる。どこで使うも主の自由だ》


「それはつまり……世界征服とかそういうのに使っても文句は言わないって事か?」


 無論、そんな常識外れな事をする気はないが。


《つまりそういう事だ。……む、そろそろ時間切れだ。それではまたいずれ会おう、我が主、神山条一郎殿》


 スカルが恭しい一礼(とはいっても頭だけなので雰囲気だけだが)をすると、俺の意識は回転しながら遠ざかっていったのだった。



「竜……ドラゴン……」


 夢から覚めて改めて考えてみると、“異世界からやってきたドラゴンに憑依されて自分がドラゴンになった”だなんてどう考えてもあり得ない話だ。人に話したりなんかしたら、中二病か危ない人認定されてしまうだろう。


 だが白骨化した腕が動いている時点で理解の度を超えているし、いまさらぐだぐだ言ってもしょうがない。


 一時期、インターネットの小説投稿サイトで転生や憑依モノの小説を漁っていた事があったが、それらは大抵主人公が転生、憑依を行っていた。自分が憑依されるなんて話、自分は見た事がない。まぁ、自分もドラゴンになったんなら、自分が憑依したのと大して変わらないけど……。


 そしてもう一つ、俺が今まで読んできた小説達と決定的に違う点が一つある。そう、ここが魔獣やら何やらが闊歩し、剣と魔法が物言う異世界だったらまだ良かったのだ。しかしここは、俺が今まで生活してきた、ドラゴンなぞ空想上の産物と決まった、科学が支配する世界。振る舞いにくいったらありゃしない。


 しかしまぁ、自分で自分の力を知らないというのも問題があるだろう。これはどこかで試す必要があるかな……。

本小説の最重要キャラクター、スカル君登場です。まだまだ謎多きキャラクター、自分でも今後どうなっていくかワクテカです。


それではまたいずれ。

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