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プロローグ~憑依~

どうも、作者です。こちらのサイトでは初めての作品投稿となります、どうぞよろしくお願いします!

それでは……どうぞ!

 ――何も無い、真っ白な空間。俺はその中に立っていた。いや、漂っていたという方がいいかもしれない。なにせここは、上も下も分からない……例えればそう、星の無い宇宙空間の色を反転させたような……。


 ふと目の前に、黒い物体が現れた。そして、真っ白な空間の中で一際目立つその物体に……俺は見つめられているような気がした。


《あと少しだ》


 頭の中に声が響く。おそらく、あの黒い物体から発せられたものだろう。あと少し? 一体何の事だろうか。


《暫し待たれよ、我が主》


 再び声が響くと、俺の意識が暗転していく。一体これは何なのだろうか、この“夢”は……。



キーンコーンカーンコーン……


「よーうジョー、なーに死んだ魚みたいな目してんだよ」


「んぁ? あぁジンか。おはよー」


 俺の名前は神山条一郎コウヤマジョウイチロウ。フツーの公立中学に通う、これまたフツーの中学二年生だ。たぶんこれからもフツーの人生を歩んでいくと思われる、サラリーマン予備群の一人である。


「もっ、もしやジョー……よし分かった、恋の相談ならいつでも俺が……」


「ちげーよ阿呆」


 この馬鹿言ってるメガネは桐谷仁(キリヤジン)。親友であり、幼稚園からの幼馴染でもある。所謂腐れ縁ってやつだ。学力その他は俺とたいしてかわらない(パソコン知識だけはずば抜けているが)んだが、それなりに顔がいい上に面白いため女子受けがいいという、俺との決定的な差がある。まぁ、べつにどうでもいいんだが……若干嫉妬している自分がいるのも事実だ。


「なに? それは俺に対するイヤミ?」


「いやいや違うって。で、真面目な話どうした?」


「……まぁいい。実は最近寝不足でな」


 おかげで今朝、玄関で躓いて顔面を強打してしまった。ポケットに手を突っ込んでいたのが失敗だったのだ。……無論、その事をコイツに言うつもりは無いが。


「寝不足ねぇ、お前の事だから遅くまで勉強してんだろうが、無茶はするなよ」


 なんで俺がガリ勉みたいなイメージになってんの? むしろ俺、サボり性なんだけど……。


「いや、昨日の勉強時間は10分だ。寝れないのはそうじゃなくて、その……夢でな」


「うなされてんのか」


「そんなとこ」


 さっきのおちゃらけた顔から一変、真剣な顔で俺の話を聞くジン。俺のために色々考えてくれるのは嬉しいんだが……その端正な顔で女子を引きつけているのかと思うと、そのありがたみも吹き飛ぶというものだ。


「カウンセリングでも受けた方がいいんじゃねぇの?」


「そうだな……週末にでも行ってくるわ」


「無茶すんなよ、何かあったらすぐに言え」


 そう言い残し、一時限目の準備へと向かうジン。なんだかんだ言って、コイツには何度も助けられてるな。今度何かおごってやるとするか。



「ただいまー……」


 赤い夕日の燃える中、学校から帰宅した俺は玄関の扉を開け、返事のあるはずのない暗い空間に向かいそう言う。寂しいと思うだろうが、俺には慣れた光景だ。


 さっさと宿題を終わらせた俺は台所へ向かい、夕飯の準備を始める。


 両親が仕事でなかなか家に帰ってこられなくなってからというもの、俺は毎日家事の全てをこなしている。夕食も以前はレトルト食品ばかり食っていたのだが、ふと思いつきで料理をしてみたところ案外上手くいったので現在は自分で作っている。最近は栄養や見た目にもこだわるようになって、毎日カラフルな夕食が食卓に並ぶようになった。……自分以外に食べてくれる人がいないのが残念だけど。


「いただきます……」


 一人で食事をするには少し広すぎる食卓。流石に半年も一人でくらしていれば慣れてはくるが、ふと寂しいと思うのはこういう時だ。料理という楽しみを見つけたのも、こうした寂しさを少しでも紛らわせようとした結果なのかもしれないな。手製の豆腐ハンバーグを食べながら、いつになくそんな事を考えた俺だった。


 そういえば先日、テレビで孤独死について特集をやっていた。見れば見るほど自分との共通点が多くて、つい笑ってしまったのを覚えている。この歳で孤独死について考える事になろうとはね……。


 ふと時計を見れば、夜11時半。そろそろ寝なければと思いベッドへ向かうが、俺の心は憂鬱だった。


 あの夢、そうあの夢が悪い。ここ連日、俺はある夢を見ていた。あの夢の中では自由に動けるし、目が覚めてもいつまでも覚えている。調べたところ明晰夢というらしいその夢は、始まってすぐに終わる。そして終わると、目が覚めてしまうのだ。また、一度目が覚めると3時間は寝付けない。これが寝不足の原因である。ふと、孤独死なんて事を真剣に考えてしまったのも、こいつのせいである。


「しょうがない、よな」


 今週末にカウンセリング受けるって言ったし、それまでの辛抱だ。



 ――もはや慣れつつある白い空間。いい加減やめてほしい。今日はあの黒いやつに文句でもいってやろうか。


 いつも通り目の前に現れた黒い物体。それにしても、つくづく変な奴だ。大きさは分からないが、全体を黒いもやのようなものが覆っている。どこぞの錬金術アニメで似たようなのを見たことがあるが、それはどうでもいいだろう。


 そして俺は初めて……この夢の中で声を発した。


「なぁおい、いい加減勘弁してくれないか? この夢のせいで寝不足なんだよ」


 小さく震える黒い物体。


《申し訳ない。主の魂に我の魂を同調させるのに少々手間取ってしまった》


 こいつ、普通に返事してきたし……。ダメ元で試してみたけど、まさか会話が成立するとは思ってなかった。


《だがそれも今日で終わる。待たせたな、我が主》


 そう言うとゆっくりと俺にちかづいてくる黒い物体。あぁコイツ、人の頭くらいの大きさだったんだ。今まで白い空間に一つ黒い物が浮かんでるって感じだったから、遠近感が狂って分からなかったんだよね。……ってそうじゃなくて! え? 嘘こっち来んの!?


《我が力を主の物に》


 焦ってまともな思考ができていない俺に、その黒い物体が触れ……入っていった。そう、まるで通り抜けるかのようにスーッと、俺の胸のあたりに入っていったのだ。


 てっきり何か怖い事をされると思っていた俺がキョトンとしていると、突如体に変化が起きた。全身が凄まじい熱を持ち、燃えているような感覚に襲われる。その時俺は、まるで“体が書き変わっていく”ような感じを覚えた。そして体の熱さがピークを迎えた時、俺の体が、“崩れた”。


 両手、両足などの体の末端から、肉が塵になって散っていく。骨格が露出する。俺はその光景に恐怖するも、目を離すことができなかった。


 自分の肉体が崩壊していく。そんな光景を見せられて平静を保っていられる人など相当珍しいと思うが、夢の中だからか、俺は恐怖しながらも頭は変に冷静だった。


 そして肉の崩壊が手足の根本まで来た時……俺の意識はブラックアウトした。



「う……うーん……」


 朝、まだ日が昇って間もないくらいに目が覚める。早いと思うかもしれないが、今まであの夢のせいで凄まじい早起きを強いられてきた俺には寝すぎと言えるくらいである。


 鈍痛のする頭へ手をやる。すると、頭に何か固い物が当たった。


「ん?」


 頭へやったその左手を見る。未だぼやける視線でじーっと見つめる。骨。


「えーっと……」


 状況がよく分からない。骨? なにこれ。なんか動いてるし。っていうか、俺の手どこ?


「……え?」


 ここで、先ほどの夢が思い出され、俺の脳が一気に覚醒する。崩れる自らの肉体、露出する骨格。そして、今の状況。


「…………え?」



 よし、とりあえず状況を整理したいと思う。ん? 随分と落ち着いているように見えるって? 馬鹿言え、一時間くらい騒ぎ倒したわ。


 ええっと、まずは現状の確認。骨になっていたのは左腕だけで、右手両足は無事だった。とりあえずはその事に一安心。


 そしてこの左腕……動く。肩から先全て白骨化していて筋肉なんて微塵もついてないのに動くのだ。理系の俺としては解せないが、今重要なのはそこではないだろうからとりあえず放置。


 そして今回のこの事態の原因として考えられるのは昨夜の夢。今までと大きく違う点は、あの黒い物体との会話が成立したことと、奴が俺に入った途端起きた肉体の崩壊……。


 なるほど、わからん。


 流石にまだ情報が足りなさすぎる。一応はこの腕も動くのだから、情報が集まるまでは今まで通りの生活を送るのがベストだろう。まぁとりあえず今は、学校どう行くかだな……。

典型的な中二病作品ですよね……(^_^;)

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