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雪降っちゃったなぁという話

お久しぶりです。

「意外と降っちゃうもんなんだねぇ、雪」

 窓の外へと視線をやりながら、礼奈がぽつりと呟く。そうだねぇ、と返す。

 わたし達の間には、ほかほかしたお家の空気が鎮座している。しっかりと寒さ対策を施してある我が家ゆえの空気だ。

「せーっかくあたしの仕事がお休みだってのに。これじゃあねー」

「ねー。ま、雨でも出る気起きないけどさ」

 今日は礼奈のお仕事がお休みの日。せっかくだから、どこかにディナーでもという話をしていたのだ。しかし、天気予報に目をやると、なんだか雲行きが怪しいようで。案の定、わたし達を遮るように悪天候はやって来たのだった。外に出なかったわたし達は、現在こたつでぬくぬく。対面で座りながら、だらっとした時間を浪費している。

「雪ねぇ。前までは好きだったんだけど。社会人になっちゃってからイメージ変わったわ〜」

 虚空を見据える礼奈から出る言葉は、少しだけ儚げ。あまり、彼女のこんな姿は見たくないなあ、とか思ったり。

「ふぅん、随分夢がないことを言うようになっちゃって」

「瑠美はあんまし外出ないから、そういうこと言えるんだよ」

「むっ、最近は出てる方だよ?」

「わざわざ雪の翌日には出ないっしょ」

「まあ、そだね」

 雪の翌日といえば、社会人にとって地獄だ。電車が動かないだとか、路面凍結だとか。空からロマンチックに降り注ぐ白銀の尊さも軽く吹っ飛ばす煩わしさである。礼奈がそう思うのも、仕方ない。

「でも、冬は好きなんだよねぇ」

「へえ。寒いのは同じなのに」

「だって、冬はあたし達の季節だから」

 これは、なんとまあ。わからない人、覚えていない人は第七話を参照のこと。ちょっと頬が熱くなる。言われてみればになってしまうけれど、確かに、冬はわたしと礼奈の季節だ。

 すっと伸びてくる礼奈の手。わたしも手を伸ばして、人差し指の先っぽを突き合わせてみたり。礼奈の指は、わたしに比べて少し太い気がする。わたしが細すぎるのか。

「……わたしは、まだ雪好きだなぁ」

 口をついて出る。めちゃくちゃ恥ずかしい台詞を思いついてしまった。言うべきか否か、一瞬だけ迷う。礼奈の手を包み込むように握ってから、言うことにした。

「礼奈のぬくもりを、強く感じさせてくれるから」

 言ってしまった。礼奈の頬が、ほんのりと赤くなる。発言者のわたしまで頬が熱くなってきたけれど、言って良かった。無垢に恥じらう礼奈の姿は、中々拝めないから。

 わたしと礼奈の放出する熱で、寒気に塗れた外界と隔絶されていく我が家。やはり、今日はここから出たくない。

「やっぱりご飯食べに行こっか?」

「は、なに言ってんの」

「いや、急に冷めないでほしいんだけど」

「えー、ここはもうお家でイチャイチャする流れでしょ」

「だって……外に出れば、瑠美のぬくもりをもっと感じられるんでしょ?」

「…………」

 結局ご飯は家で食べた。


 〈おわりんこ〉

2017年、やっていくぞ(もう2月なんだよなぁ)

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