女神と戯れ
とある元王都の王城の一室にて。
「でさー。お前は何で俺を召還した。」
黒髪の青年は不満げだった。
中肉中背の平均的な背丈であり、何の特徴もない平凡な青年だ。
「だってーだってー、退屈なんだもーん」
雪のように真っ白な少女は無邪気にそういった。
その微笑みは飛ぶ鳥さえ落としそうなほどかわいかった。
かわいいのは当然で彼女は女神だからだ。
唯一無二の可愛らしさだ。
幾度となく繰り返される会話はシリアスではなく、どちらかというとコミカルだった。
「退屈で呼びだすのかよ。しかもなんだ、理由が誰も攻めてこなくて暇だから俺に代わりに相手をしろとかお前戦狂か?」
その言葉を聞くたび青年は、厭きれ肩を落とす。
「ほらさー、人間と魔族が遊んでいるのみてると、私も一緒に混ざりたくなっちゃって。」
頭をこつんとするあざとい仕草
この女神は、あーもぉー、かわいすぎる。
言っていることがおかしいはずなのに、可愛らしい女神を見ているだけで、許せてしまう自分が悔しい。
「別に彼らは遊んでるわけじゃない。奪う奪われるの繰り返しで、みんな必死に生きているんだ。あんたが人から奪ったこの土地を取り返そうといろいろ来てるだろ?」
侵入者ありの報告は聞いてはいるが、実際に侵入者を見たことがない。
「うん、いろんな人が来ているね。何をしてくれるのか毎回わくわくだよ。みんな背中に様々な羽をつけ仮装している姿がとっても面白いよね。パーティーみたいでお洒落」
「パーティー見たいってのんきだな・・・。それで、パーティーの招待客はどうなるんだ?」
「あははー。」
俺も一緒になってわらった。
侵入した時点で、存在がなくなってるんだろう。
数十年も内部情報が漏れない堅牢な城。
情報の機密性が高いのは、外部と交流を一切していないからなのだろうか。
情報の伝達技術もそんなに発達していない可能性が高いな。
「話を戻すけど、君には私たちと遊んでほしいから呼んだんだよ勇者様。」
羽の生えた従者も、俺を見て一礼している。
人形のように整った顔だ、相変わらずの美形である。
私たちも遊びたいということなのだろうか。
この地には勇者召喚の扉が存在するらしい。
そして、王の血族が持つ鍵と扉の二つがそろって初めて勇者を召喚する準備が整うそうだ。
条件がそろったとしても、召喚がいつでも可能というわけではないようだ。
鍵と扉があれば、勇者召喚し放題なんていやな世界だな。
呼ばれるほうは、たまったもんじゃない。
勇者を召喚するのには、様々な制約があるのだがしかし、彼女は神である。
神なのだから、制約なんて関係ない。
ああ、本当に残念な女神さまだ。
「いやいや、それは、人間が使う勇者召喚で魔王と戦へっていうあれだろ、神の暇つぶしのために召喚された勇者ってどうなわけ?しかも、召喚した張本人手ありなの?」
「私、ありだとおもいまーす。」
「ここ数日、あんたにいろいろ教えてもらってさ、冷静に考えられるけど。あんた邪神だろ。」
「えー、私邪神なのー。じゃあ、今日から魔王やるから、勇者様早く私とたたかってぇー。」
頭を抱えてしまう、状況だが至って真剣な会話なのだからしかたがない。
「俺がうんと言わないと話が進まないんだろ?」
「そうだよー。何のために君を呼んだのか、わからなくなっちゃうね。私としては時間がたくさんあるわけだし、私自身君を気に入っているから君と話していると楽しいよ。もうしばらくこのままでもいいかなーなんて思うけれど、
君の時間はとても短いよね。だから、君と早く遊ばないと。」
「ああ、その通りだ、人間は短命だよ。だから、命は大切にしなければいけないんだ。彼らは、戦争を止めたんだ、平和になってきてるんだよ。そこにわざわざ火種をつけるようなことを俺はしたいと思えない。」
「そうなのかなー?彼らはまだまだ遊びを続けたがってるけれど、これが君の言ってる平和ってやつなのかな。私にはよくわからないんだ。」
「ああ、そうだな。俺の言う平和とはまた違っているけれど、この状態が長く続いているんだ、いずれは平和になるんだよ。」
心で平和を否定しつつも、平和、平和と口にする嫌な感覚だった。
俺は、その事実に目をつむる、安寧な生活をしている俺は考え方が甘い。
「うん、うん。君のいうことは間違ってないけれど、彼らが何をしようが私にはあまり関係ないかな。私は遊びたいからここに来たんだもん。ほら、みんなで仲良く遊ぼうよ。」
戦争を遊びといっている、その無邪気さが怖い。
王都は確かに消し飛んだが、住人は別々の場所に転移させたらしい。
まとめて大量の人間を一か所に転移させると問題が起きるので、分散して飛ばそうって発想らしい。
それはそれでいろいろ問題だろう。
こんな話を、数回繰り返している。
いい加減俺もそのやり取りに飽き飽きしていた。
繰り返すうちに、どこか、心はきまっていたのかもしれない。
そんな俺の心を見透かすように、女神はこういった。
「君には、私と遊んでもらうために、たくさんのプレゼントをしました。喜んでくれるかな。」
「私の時間は、君よりもずっと長いから、君はこの世界を楽しみながら、私といつか遊んでくれればいいよ。そのためのプレゼントだよ。君は君自身で楽しんでくれたら、私もうれしい。」
なんだかんだいって、彼女の思い通りか、ああ、愉快に掌の上で踊ってやるよ。
「ああ、せっかくの異世界だから、楽しまないとな。しかたがないから、お前と遊んでやるよ。これは気紛れだ、気の迷いかもしれないけど、これしかないなら、やるだけだ。」
「いい返事だね。君に少しだけ期待させてもらおうかな。じゃあね。また遊ぼうね。わたしの勇者様」
「またな。」
直後、光に包まれた。
まだまだ、未熟ですね。
文章も下手なので、よくなるように頑張ります。