始まりの日
その日は、雲一つない青空だった。
やさしく風が大地を撫でとても穏やかな日であった。
突如、空を割り無数の光が降り大地に降り注ぐ。
その光は太陽よりも激しく、気高く輝いていた。
王都は無数の光に埋め尽くされ、光が消え去った後に残ったものは、大地だけだった。
消えたものは、王都だけだったのだろうか。
降りてきたのは、悪魔でもない。
生まれ堕ちたのは、魔王でもない。
人の心が生んだ邪念でもない。
人々から希望を奪ったもの、それは、はなんなのだろうか。
天から降り注ぎし光の雫は、神の光であった。
人々が望む希望こそが、災厄の元凶であったのだ。
ああ、神よ。
なぜ我々を、なぜ人を裏切ったのですか・・・。
神が地上に降臨してから、十数年の時が経過した。
元王都には、新たな都市が建造され、そこには羽の生えた人が住むという噂だけが広まった。
そう、いまだ誰もその姿を見たものはいない。
人魔の知を凌駕した建造物は、まさに異物であった。
その羽をもつ者たちは、領土を広げることもなく沈黙を保ったままそこに存在し続けている。
彼らは、何をするために来たのだろうか。
それは、誰もわからない。
そこに存在することだけで、その緊張は人も魔も少なからず影響を受けていた。
物言わぬ第三者を警戒するかのように、魔族と人間の戦争は停滞しやがて止まった。