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9話「勇者、骨を破壊する。」

「研究施設と言うわりにはやけに静かだな。」

 俺達は、敵の研究施設に入り込んでいた。入口が狭かったから羽馬はお留守番だが。


「にしても、血の匂いが強いね。慣れない人なら気分が悪くなるほどに。」

「勇とか言ったか若いの、心当たりあるような顔をして。」

 これでも、表情には気を付けてるんだがな。


「心当たりはある、確証が持てないから言ってないだけだけどな。」

「心当たりって、死霊王の事ですか?」

「羽虫、そういうのは勝手に言わない。」

 今回は別に問題ないけどさ。


「血の匂いが一番強い部屋についたんだけど。どうする?」

「ふむ、何かやばい物があるかもしれんから入っといたほうが懸命だな。」

「それには、賛成だね。魔力の反応も強いし。天馬乗りの勇者君はどうする?」

「俺も一緒に行動するさ。」

 一人で行動したら、死亡フラグ立ちそうだからな。


「血の匂いが強いから予想はしてたが、ここは死体の解体場のようだな。」

「似たようなもんだけど少し違うんじゃないか?どちらかと言うと新しい素体を作るための製作場のような気がするな。」

 どっちにしろ、あまり気分のいいものじゃないけどな。


「やぁやぁ、勇者君たち。私の研究施設にようこそ。」

「予想はしていたが、出てきやがったか糞道化師。」

「後ろ見せた時に狙ってこなくてよかったと考えよう。」

 マッドな奴らは気が付いていたみたいだしな。


「この魔法は一方通行だから君たちが何を言っているかは知らないけど、この研究施設を見つけたのは褒めてあげよう。」

「非人道的な研究をやっているのがよく言うよ。」

 こっちも人の事言えなさそうだけどな。ギリギリ一線超えてないってだけで。


「それを祝って私のそれなりの作品で相手をしてあげよう。この施設の処理は終わってるしね。」

 転移術式で何か送ってきやがるのか。それも大量に。


「壁を背にして俺と、アルバートさんと、カーティスさんで円陣を組む、他の皆は内側から援護もしくは扉を開けて退路の確保を。」

「了解。俺は退路の確保に回る。」

 転送されてくる奴は何か嫌な予感がするからな。


「・・・羽虫、魔法的な何かで扉が閉まってるみたいだ。なんとかできるか?」

「・・・あ、はい。えっと、扉ですか?」

 気絶してやがったな。


「ええっと・・・これで大丈夫なはずです。」

「わかった。退路は確保できた。そっちは・・・」

 すごい勢いで骸骨が粉砕されてるんだが。


「退路は確保できたなら、アルバートさんはしんがりを、あとの人は俺先頭で撤退開始。」

「別に、全部潰しても問題ねぇだろ?」

「足並みはある程度そろえたいんで、ほどほどにしてください。室内だと行動制限かかる人いるんで。」

 俺の事だな。でも、ここに居る奴らなら問題は無いように感じるけどな。


「あのスケルトン、何故か倒しても復活するから。」

「本当なのか?」

「本当だから撤退を急いでるんだ。」

 あの二人なら何かわかってるんじゃないのか?


「わしは一応専門外じゃよ。」

「一応、壊れたパーツのまだましな部分を無理やり組み合わせて元に戻してるってことはわかってるけど、その核となってる部分はまだだよ。」

「しれっと人の考えを読みやがるな。あと原理っぽいのは解ってるじゃないか。」

「核と構成が解ってないうちは解ったに入らないよ。」

 変にプライドが高い野郎が。・・・っともう外か。


「ここまで来れたらいざというときに逃げられる。・・・と思ったんだけどな。」

「ニコイチにしてるとは聞いたけどあまりパーツでこんなの作ってやがるとは。」

 がしゃどくろ作るかよ。普通じゃないからやるんだろうけどさ。


「ともかく、こいつをどうにかしないとやばいぞ。羽馬いるな。」

「せっかく危険を感じて逃げようとしてたのに。」

「軽口叩けるなら大丈夫だな。俺がけん制その間に何とかしてくれ、マッド共。」

「それは信頼されてるってことでいいのかい?」

「能力だけは信頼してるんですから。俺も足元で動きを封じれないかやってみます。他の人たちもフォローお願いします。」

 弓でやるだけやってみるがどこまで通じるか。爆薬の量はそう多くないから温存しないといけないが。


「勇!!相手の核が解りました。」

「早いな。」

「元から考察はしてたらしいです。」

「それよりも、核の位置は?」

「首のど真ん中らしいです。」

「わかった。火薬矢を使う矢の貫通力を上げてくれ。」

「了解です。」

 うまく決まってくれよ。・・・今だ!!


「倒せたな。」

「とりあえず下りましょう。勇。」

「そうだな。」

 これからどこに行くかも考えないとな。

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