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序幕(~刃物コワイ~)

幕末の剣客ロマン。それを現代ファンタジー風のテイストにまとめています。

時代背景云々を煮詰めて語るつもりは毛頭ございません。あくまでも、さらりとしたドタバタ剣客劇。あくまでもボーイミーツガールです。

お目汚しするような書き方ばっかりですみません。よろしくお願いします。

さて、愛するべき読者の諸君。

いきなりですまない。こんな冒頭で失礼にも語りかける俺を許してほしい。


ちょっと、諸君に聞きたいことがあったからだ。

まず、刃物というものをどう思うだろうか?


ああ、刃物だ。色々あるだろう。ハサミから包丁。そんでもって日曜大工のノコギリだって立派な『刃物』だ。

そんな刃物の存在を、諸君はどう思う?


正直いって、俺は苦手だ。魚をさばく調理法をお袋から習ったんだが……どうにも、あの時の魚のグニュッとした手触り。そして腹を斬りつけて、中からドロリと赤黒いハラワタをほじくり出すという行為が恐ろしいものだった。案の定、俺は調理スタートから五分後には自宅のトイレで嘔吐していた。


いや、そんな悲しい目で見つめないでほしい。

俺だって、吐きたくて吐いたのではないのだ。


そもそも、俺がこんなに貧弱なのには理由があって……つまり、『刃物』が苦手なのだ。

料理包丁を握っただけでも、かすかに手が震える。


弱いのではなく、怖いのだ。何かを刃物で傷つけるのが。

また、傷つける刃物というものが怖かった。包丁だけじゃなく、ハサミの表面の光を見ただけで、俺は青ざめて目をそらしてしまう人間だった。



とまぁ、前置きはここで置いておいて。

長らく待たせたな、諸君。では、本題に入ろう。



では、その恐ろしく怖い刃物が……。

刃渡り二尺三寸(およそ七十余センチ)の刃物として、目の前に存在していたらどうする?



しかも、でっかい熊みたいな大人たちが『それ』を持って。

ぶんぶんと振りながら、『斬り合い』をしていたら?



「なっ…………!?」


うんうん。そうだよな、俺よ。

お前が正常な反応ができたことが、俺は心の底から嬉しいぞ。


そして、そのヘッピリ腰で倒れているのも、ほどほどにした方がいい。

なぜなら、三対三で斬り合っていた男たちが――。


「…………?」


一人。そして、そんな男と切り結んでいた男も、こちらを見たからだ。

ヤツらみたいな袴に着物姿といった『武士』スタイルではなく。

学校指定のブレザー。ズボン。そして、今日の古典の宿題と教科書一式が入ったバッグを抱えた――そんな情けない、帰宅途中の高校生男子の姿を見たのだ。


「ひ、ひ。ひっ……」


俺は、喉が引きつって痙攣していた。

周りの景色も、見覚えのあるものではなかった。暮れゆく夕日を背景に、仏閣寺や、古風な民家が立ち並ぶ雅な路地の光景。電柱もなければ、ラーメン屋の看板もない。もっと古くて――もっと寂れた――古都の情緒ある風景。


時代劇で見るような路地の中で、俺は盛大に叫んでいた。


「――人殺しぃぃぃぃぃぃ!!!」


そして、逃げた。カバンを置いて、足にめいっぱい力をかけて、転がるように逃げた。



そうなのだ。

これが、俺――。


文久三年。

幕末の動乱が起る前の、物騒な剣客たちが入り交じった京都。麹町。

そこに飛ばされた里中慎也さとなかしんやの、悪夢の始まりだった。

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