第二話
次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
病院の中は静かでワサワサとカーテンが揺れた。コツコツと足音が響き部屋の中で止まった。
白いカーテンから見える白衣から黒い裾が見える。
不意にカーテンが開いて僕は驚いた。
白衣をまとっていたのは金髪の男の人だった。
細身でやけに色黒でツンと髪を立てていた。
「ああ、目が覚めたんだね。体調はどう?」
男は物腰の柔らかく喋り笑顔で見せた。
僕は口を閉じて少しだけ首を縦に振った。
体調は別にどうという事もなかった。男はえーと、と呟きながらあずき色の診断書を捲る。
「君が近藤拓哉君ね。」
もう一度首を縦に振った。
「僕は山村晴斗。よろしくね」
男はずっと表情を変えないまま手を差し出して来た。
僕はそれが長い出来事の始まりのような気がして怖かった。
「僕は何の病気なんですか?」
ぼくがそういうと男の人は差し出したてを引っ込めて頭を掻いた。少し困った顔をした。
「僕が医者だったら良かったけど、僕は小児病棟担当の看護師だよ。先生は今君のお母さんと話をしてるよ」
「そうですか」
「ちょっと腕を出してもらっていいかな。血圧を測るから」
晴斗さんはそう言うと、箱の中から手のひらぐらいの青いレモンみたいなものと、立て置きの温度計の様なものを出した。手早く僕の腕に器具をマジックテープで付けるとクシュクシュと空気を入れはじめた。
その様子をじっと見ていると晴斗は言った。
「入院っていうのは初めて?」
僕は小さく頷いて答えた。
「生まれた時以来です」
「なるほど今度自分も聞かれた時にそう答えよう」
そう言うと自然と笑えた。
それから晴斗さんと少し話をした。
兄弟がいるかとか、引っ越す前にいた山梨にいた時の事。クラブ活動はこれからどうするかとかだ。
僕は話をしていて、引越してきて自分がどれほど話をしたかったのか気がついた。転入してから、すぐに体調は悪くなって、クラスメイトとろくな会話していなかった。
医者が来る前の最後の質問。
「君は何年生?」
「今年6年生です」
僕がそう答えると晴斗さんは少しだけ顔を引きつらせた。
医者が僕に病気の内容を聞くまで、僕はその引きつらせた。顔が脳裏に写っていた。