第一話
毎日連載する訳ではありません。
どうしても詰まる時があるので、同時進行で違う作品を更新する場合があります。
ドラマで見たことがあった。
天井から天国に続きそうな眩しい光。
マスクをされ数を数える様に言われる。
10・9・8……。
瞼が重くなり、まるで病院に運ばれる前の再現の様だった。
引越しをしたからなのか、胸が苦しくなるようになったからなのか解らなかったけれど、僕の暮らしぶりは変わってしまった。
街のビルや行き交う車と同じ様に他の子達が大きく見える様になった。
公園に集まれば誰かがいる。という事も無いし、かと言ってクラスメイトと遊べる程体調もすぐれなかった。
だから僕は自分から少しづつみんなとの会話を避ける様になって、町並みを見ながら1人で帰ることが多くなっていた。
あの日の帰り際も僕は1人で歩いて帰っている所だった。
大和と篠崎と山口の3人組がはしゃぎながら歩道を走って来た。僕が脇に避けると大和が僕の方を見た。
「クッキーお疲れ。最近元気ねえけどどうした?」
「なんでもないさ」
僕ら4人の間に空気が舞った。
「なら構わないけどさ」
僕に背を向けると他の二人も僕から視線を外して振り返っていってしまった。
5歩ぐらい進んだ所で彼は振り返った。
「なあ、来週の土曜日暇か?」
僕は首を傾げた。
「もし良かったら家に来いよ。ていうか絶対来い」
大和にどんな思惑があるのかよく解らなかったし突然な話に僕は困惑した。
「大丈夫だと思う」
断れる理由も特になかった。
「じゃあ来週な」
3人はお揃いで菓子パンを振りながら僕にさよならを言った。
一体何のつもりなんだろう?
いつも3人で楽しそうにしているのに、一体なぜ突然そんな事を言ったんだろう。
思いつかない考えを巡らせている内にいつの間にか3人の姿が遠くなる。
僕は走って彼らを追いかけた。
道は100メートルぐらい有る緩い坂道で、ギュウギュウと胸を苦しめる。相変わらずふざけ合ってる3人の後ろ姿に声をかける所だった。突然足の力が抜けた。力を入れようとしても力が僕の体重を押し上げられないみたいだった。
僕はそのまま膝から崩れ落ちて、うつ伏せに倒れた。最後は誰かが呼んでいた。
それが誰だったのかもまるで覚えられない程、僕の記憶はすっぽり抜けた。