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空の彼方  作者: ゆぐ
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第1話 ホープ飛行学校

「飛行機の原型は、今とはかなり違うものであった。それは、人自身が空を飛ぶというものである。しかしこの方法だと身の安全も保障できなく…」

先生のくだらない講義が続く。

昔の飛行機がどんなものでもいいんじゃないの?と、ハルトは内心で考えていた。

正直、この飛行史の時間が一番退屈だ。昔の話を聞いてもためになるもんじゃない。

今の、最新の科学技術の話をしてほしいものだ。そういえば、“リピオド”がまた新しい粒子を発見したってサツキが言ってたな。これを機会にまた飛行機が変わるのかな。屋根がついちゃったりとかするのかも…。楽しみだなぁ。さすが最新の科学研究所だよなぁ。

「こらっ、ハルト=スターチェ!話を聞いているのか!?」

「は、はいっ!」

先生の突然の声に僕は驚いてしまった。飛行史の先生は一番厳しいんだ。

「まったく…、お前のお兄さんは私の講義から目を離したことなどなかったのに…」

まただ。またお兄ちゃんと比較されてる。確かにお兄ちゃんは頭が良くて格好良くて、なにより飛行技術においては、右に出るものはいなかったけど…、僕と比べなくてもいいじゃないかと心のそこで毒づいた。

「みんなも聞いておけ。飛行史は見た目は確かに地味であるが、実は寛大で雄大で奥が深く…」

遂に飛行史の授業の授業みたいになってしまった。さすがに、これでは勉強も何もあったもんじゃない。航空科と航空機械科の合同授業だったのだが、もうみんなやる気をなくしてしまった。

2年と3年の合同授業でもあるので、サツキもいるが、端の方に座ってパンを食べているようだ。

さっきお昼ごはんを食べたばかりなのに…、と思いつつも自分もお腹がすいてきたので、羨ましかった。


あれから数十分の講義の後、終了のチャイムは鳴った。

授業が終わると、すぐにサツキが駆けてきて、僕に話しかけた。

「あのセンコーが言ったこと気にしなくていいぜ」

「どういうこと?」

僕には意味が良く分からなかった。

「お前の兄ちゃん、タクトは、いっつも飛行史の授業はつまらなかったって言ってるからな。いつも隠れて飛行機の本読んでたってよ。あいつらしいぜ」

え、そうなんだ!お兄ちゃんでもつまらない授業だったんだ。僕は心が軽くなった。

「おーい、サツキー。次に授業に遅れるよぉー」

「分かった、今行く!」

3年生の、アカネがサツキを呼んでいる。

「じゃあ、また後でな!」

サツキは、そう言い残して走っていった。

そういえば、次は2年と3年は別の教室だっけ。

サツキは今3年生で、僕より一つ年上の先輩なんだ。

「やれやれ…、毎回この授業は欝だよな」

ハルトと同じくらいの背格好の少年が、ため息混じりに話しながら歩いてきた。

「レン!やっぱり、君もそう思う?」

彼の名はレン=リガート。同じ2年生だが航空機械科を専攻している。

「あぁ、全く役に立てられないよね」

レンは困ったように笑いながら話した。

彼は、1年生からのハルトの友達だった。常に冷静で正しい判断をしてくれるレンはハルトにとって、いつも頼りになる存在だった。彼が機械科を専攻するときは、ハルトもそうしようかと思っていた。

事実、ハルトは飛行機の操縦よりも機械いじりの方が得意で、実技なら航空機械科の上級生と同等かそれ以上なのだ。それには訳があり、小さい頃から父親によく教えてもらっていたのだ。お父さんはお兄ちゃんにも教えようとしたけど、お兄ちゃんは飛行機のことばかりで全然話なんか聞いていなかった。それで、二人で喧嘩になることもあった。逆に僕は機械のほうが好きでどんどん腕も上達していった。しかし、お父さんは、2年前お母さんが病気で死んでから急に失踪。今も行方が分からない。だから、ハルトはお父さんからもらった工具セットをいつも大切に持ち歩いているのだ。

「ホントに、早く飛行機の修理したいなぁ〜」

横から、レン、ハルトより少し背の低い少女が現れた。

「カナ。お前はまず工具類の名前から覚えろよ」

横からレンが口出しする。

彼女はカナ=フローゼ。同じ2年生で航空機械科専攻。

機械大好き少女というちょっと変わった女の子だがいつも明るくて、ハルトもよく一緒に話している。

「そうだな〜。ハルト君が教えてくれたら頑張って覚えるかも…」

そういって上目遣いで僕を見てきた。

普通の男ならこれで悩殺されるだろう。カナは見た目も可愛いからだ。

でも、僕はこういうタイプが少し苦手。体から抵抗組織が現れ、僕の脳を占拠してしまう。

生まれついての本能なのだろう、少し残念だ。

「カナ。そんな事言ってないで、急がないと間に合わないぞ」

レンが時計を見て言った。

「そんなことって何よー!私には大事な・・」

そう言いかけてカナはレンに連れ去られてしまった」

なんだかんだいてやっぱり、二人はいいコンビである。

「やば、僕も遅れるよ!そういや、航空科の2年は僕一人だった!」

僕はそう叫んで、教室を後にした。


次の時間は「化学」。

航空科の2年と航空科学科の2年の合同授業である。

言っては何だが、僕はこの教科が好きだ。と、いうより僕は実技科目が好きなのだ。

化学なら実験がある。自分に何かを残すことができるからだ。そして、先生は時々科学の最先端技術の話もしてくれる。いわゆる「科学」と「化学」の授業なのである。

「よお、久しぶりだな。ハルト。」

そういって、隣の席の少年がハルトに声をかけた。

「久しぶり、ワタル。航空科は化学は週に一回だからね。」

彼の名はワタル=ラーベガ。科学科専攻の2年生。学年きっての優等生。去年から、その頭脳の高さは評価されていた。そして難関な科学科を専攻したのだ。しかし、見た目は普通の学生といって感じで、とても付き合いやすい。ハルトはワタルのそう言うところが好きだった。また、時々最新の科学の話をしてくれるので、それがとても楽しみだった。

「ねぇ、ワタル。リピオドが新しく発見した粒子って知ってる?」

「あぁ、科学科では凄い話題だよ。今回はマジで凄いらしいぜ」

ワタルは興奮してハルトに話した。ワタルは科学の話になると顔つきが変わるのである。

「え、どんなの?どんなの?屋根のついた飛行機が作れるとか!?」

「落ち着け。最初からそんな細かいところまで分かんなないよ」

そんな細かいところといわれたので、ハルトはすこしカチンときたがそのまま話を聞いていた。

「いいか…、新しく発見した粒子はな…応用すると…」

ワタルがいかにも勿体つけて話している。

「死者が…蘇るって話だ」

あまりにも唐突で、抽象的だったのでハルトは戸惑った。

「死者が…、蘇る!?いったい、どういうこと?」

「こらっ!そこの二人!静かになさい!」

僕があまりにも大きい声で話すので先生に怒られてしまった。

そして、ワタルが僕の耳で囁いた。

「詳しくは、まだ何も分からないよ…」と。


僕は科学の授業後も新たな興奮に身が震えた。

1日に2回怒られたことなど、もはやどうでもよかった。



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