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天敵とまさかのTAG&KISS  作者: 櫻坂 蒼
昇進、そして異動
3/12

本庁刑事としての一日目 ~慣れない空気感~

 (霞が関から徒歩2分だっけ?)

 真新しい定期を改札にかざして、地上に出る。

 渋谷とはやはり違う街並み。「皇居」のにおいがするというかなんというか。

 …そう。緑が多いのだ。

 (なぁンか、実感わかないんだよなぁ…)

 それに、タクシーも多い。さすがは官僚の町。黒塗りの車や、高級車の比率も高い。

 突然の環境の変化に目が回りそうだ。

 (こんなところで呑まれてる場合じゃないじゃん…)

 唇をキュッと引き締めると、彼女は本庁への道を急ぐ。

 歩きながら、彼女はいろんなことを考えた。

 新たな職場の事。基本的に物怖じするタイプではないので、同年代との関係に摩擦が生まれてしまうのではないか、なんて不安はない。やはり不安なのは、上層部だろうか。

 警視庁本庁。都内の、いや、日本の中でも屈指の刑事たちがトップを占める組織。

 そんな中で、自分はうまく渡って行けるのだろうか――

 彼女の足が止まった。細い首が上を向く。

 彼女の視線の先には、ドラマなどでおなじみ――警視庁ビルがそびえたっていた。


 通りをひとつはさんだ所に立つその建物の下層部を、並木がびっしりと覆っている。

 (やっぱり、渋谷とはなんか空気が…)

 そうは思いながらも、信号が青に変わった横断歩道を、他のスーツ男女にまぎれて、彼女は速足にわたる。

 長いように思えた横断歩道もすぐに渡り終えた。どこかの大きなホテルの入り口のような立派なエントランスが、ピカピカに磨きこまれたガラスの自動ドア越しに見える。

 (ちょっとこの雰囲気何よ…)

 霞が関についてから心の中でつぶやくのは、これが一度目では決してない。

 

 建物の中に入っても、彼女のその思いは消えない。

 一階は受け付けのようだが、ところどころに観葉植物の小さめの木が置かれている。

 遠くて少し見づらいが、あそこに置いてあるのは空気清浄機か。

 (あんなのあったっけ?渋谷に…)

 庶民の臭いが全くしない本庁に、彼女は戸惑いを隠せない。真っ白な床のタイルさえ、大理石に見えてきて、彼女はかすかなめまいを覚えた。

 完全に呑まれてるよね…

 もう一人の自分が、苦く笑いながら彼女にささやいた。

 

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