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もう二度と、殿下の身代わりにはなりません 【連載版】  作者: 乙原 ゆん


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7.婚約

 早速ではあるが、翌日、彼の両親の元へと挨拶に行くことになった。

 陛下はジェラルド殿下とヴィオラ様と同じ銀髪に紫の瞳、王妃様は淡い金髪に緑の瞳をされている。


 両陛下とは、王宮でお世話になる際に、一度挨拶をさせていただいている。

 その時はヴィオラ様の不調をスキルを使って身に受けたと言うことでお礼を言われた。

 

「ジェラルド、お前が時間を取ってほしいというのは、珍しいな」

「大事なお話があります」

「聞こう」

「長く婚約者を作らずに参りましたが、私はミシェル嬢との婚約を望みます」


 単刀直入に用件を切り出した殿下に、陛下は想像がついていたのか、顔色を変えることはなかった。


「確かにミシェルさんは貴重なスキルをお持ちだ。ヴィオラの力との相性もいい。それで、婚約を決めたのか?」

「いいえ。彼女の心の美しさに惹かれたのです。彼女のことを一番近くで守りたいと、婚約を申し込みました」

「ミシェルさんは、息子のどういうところを?」

「父上、ミシェル嬢には、私が強くお願いして頷いてもらったのです。ですから――」


 庇ってくれようとする殿下にそっと触れ、大丈夫と首を振る。


「殿下と初めてお会いした時、町で絡まれているところを助けていただきました。その時は殿下のご身分のことは知らず、単にとても頼りになる麗しい騎士様がいらっしゃるのだと思いました。王宮で保護していただき、本当のご身分を知り驚きましたが、分け隔てなく気さくに誰とでも接しておられるお姿は、市井でのご様子と変わりがありませんでした」


 驚いたようにこちらを見ている殿下が気になったものの、そのまま陛下達の方を見て話し続ける。


「王族というこの上なく高貴なお生まれにも関わらず、殿下が民と同じ目線に立って、人を助けておられるお姿を尊敬しています。それにヴィオラ様のこともとても大切になさっていて家族想いで素敵な方だと思いました。そのような方に見初めていただいたことを、大変光栄だと思います」


「確かに騎士としての働きぶりはなかなかだと聞く。よかったな、ジェラルド」

「父上……!」


 顔色は変わらないものの、耳を赤くしている殿下を陛下が優しい表情で見つめている。


「お前の親としては、この婚約に賛成しよう」


 王妃様も陛下の側で頷いている。


「ただ、場合によっては王位継承権の変動もあるかもしれない。そこは覚悟しておくように」

「かしこまりました」


 事前にこの流れは聞かされていたため、私も動揺なく頭を下げる。


 聖プラチナム王国では、王族に聖女の力を持つ者が生まれることを優先させてきたそうだ。

 聖女の力を持つ者は、政略よりも心の絆で結ばれた夫婦の元に生まれやすくなるらしい。

 そのため王家も愛し愛される関係を築ける相手を伴侶に迎えることを推奨している。


 だから、王族の婚約はそこまで厳しく身分を求められることはなく、有用なスキルや功績があれば、問題なく王妃と認められるのだそうだ。

 そうでない場合は、王位継承権の順位が繰り下がり相応しい爵位を得て臣籍降下することになる。


 殿下は王位継承権一位ではあるものの、婚約者がいなかったために王太子には定められていなかったそうだ。


 そして、私は元は他国の子爵家の生まれとはいえ、今は爵位のない平民となる。

 今の王家にとって有用なスキルを持っているが、王妃である必要はない。

 王家やその周囲がどう判断するかは、未知数と言われていた。


「ミシェルさん、息子のことを頼みますね」


 最後にそう王妃様から声をかけられ、陛下達は退室された。





 両陛下との面談が終わり、ジェラルド殿下にお茶に誘われた。

 可愛らしいお菓子の皿とお茶が並べられると、殿下は侍女達を遠ざける。


「これで気兼ねなく話してくれて大丈夫だ。疲れただろう?」

「いいえ。ご両親がジェラルド様のことをとても大切になさっていると知れて嬉しかったです」


 婚約の許可が降りれば「ジェラルド様」と呼ぶようにとお願いされていたため、言われたとおりにしてみると、彼は困ったように口元を手で覆う。


「呼び方を変えてみましたが、ご不快でしたか?」

「違う。破壊力がすごくて気持ちを落ち着けているだけだ」


(破壊力……?)


 首を傾けていると、ジェラルド様が付け加える。


「ミシェルには、今のまま呼んでほしい」

「……っ!?」


 名前を呼ばれて、一気に彼の言動が理解できた。

 敬称がなくなっただけなのになんだか距離が一気に縮まる気がする。

 嬉しいような恥ずかしいような、そんな思いで胸の奥がむずがゆい。

 私の動揺を嬉しげに見つめ、殿下が言う。


「私こそ、ミシェルがあんな風に私のことを想ってくれていたなんて知らなかった。今日ほど、騎士として仕事を頑張ってきてよかったと思ったことはない」

「喜んでいただけたのなら、よかったです」


 そんな話をしていた時だった。


「お兄様、婚約の許可が降りたのですって!?」


 いつかのジェラルド様のように、唐突にヴィオラ様がいらっしゃった。


(こういうところも、ご兄妹でそっくりなのね)


 そんな風に思っている間にも、殿下はヴィオラ様の言葉に頷いている。


「耳が早いな、まだミシェルのご両親に挨拶は終わっていないが、王家の許可は下りた」

「そうでしたの。ミシェル、おめでとう! 心から祝福するわ!」

「ありがとうございます。ヴィオラ様にそう言っていただけると、嬉しいです」

「ふふ、もうすぐミシェルと姉妹になれるのね。あら。だったら、ミシェルのことお姉様って呼んだ方がいいかしら?」


 思ってもいないことで、驚きのあまり咄嗟に答える。


「い、今まで通りでお願いします」

「私は気にしないのに」


 残念そうなヴィオラ様に、殿下が言う。


「ヴィオラ、あまりミシェルを困らせるな」

「困らせてはいないわよね?」


 曖昧に頷くと、ヴィオラ様はほらねと言わんばかりにジェラルド殿下を見る。

 殿下はふぅと諦めたように息を吐いた。


「ミシェルがいいのなら、いいのだが」

「ふふ、ミシェルがお兄様の奥さんになるなら、ずっと一緒にいられるわね。嬉しいわ」

「そう思うのなら、少しはお前も気を遣え。二人きりの時間を過ごしていたんだぞ」

「あらあら、お熱いことね。では、今の時間はお兄様に譲ってあげる。ミシェル、また後でお話しを聞かせてね」


 そう言い残し、ヴィオラ様は立ち去られた。

 ジェラルド様はその様子に苦笑しつつ、彼女の言動について謝られたが、私もヴィオラ様のことは好きなので気にならない。

 その後は、私の両親への挨拶の日取りなどを話し合った。

コピペミスをして2重に貼り付けをしていたようです。

コメントくださった方ありがとうございました。

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