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もう二度と、殿下の身代わりにはなりません 【連載版】  作者: 乙原 ゆん


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3.聖王国にやってきました。

 王都を出て十日。

 隣国を抜け、ようやく聖プラチナム王国の国境に辿り着いた。


(やっとここまで来られたのね……)


 検問も無事に終え

 ほっとしたところで咳が出てしまう。


「けほっ……」

「ミシェル、大丈夫か!?」


 両親と兄の心配げな瞳に頷いてみせる。

 痛みは薬で抑えられているが

 日々強くなっている気がする。


(あまり、時間はないのかも……)


 でも、それを伝えても心配させるだけだ。

 家族は幼い頃に養子に出た私のために故郷さえ捨てて

 聖プラチナム王国についてきてくれているのだ。


 無用に心配させてしまうことはないと

 言葉を飲み込むのだった。



 国境からは三日で聖プラチナム王国の首都についた。

 お父様が宿を探してくれて、しばらくこの町に滞在する予定だ。


 検問の際に国境を守る騎士が教えてくれたのだが

 聖女様が一般の人に浄化や治癒を施すのは

 月に一度しかないそうだ。


 その日のために、近隣の国からも人がやって来るらしく

 余程幸運でないと

 一度の機会で見てもらえることはないらしい。

 そのため長期滞在者のための宿も多いという。


 私達が滞在するのも、そういった宿の一つで

 中流階級向きの宿にしばらく滞在する予定だ。


 聖女様にすぐに見ていただけるかわからないし

 逗留が長引いてもいいようにという判断だった。


 宿に落ち着くと

 両親は仕事を探しに向かった。

 貯蓄はあるが、いつまでこの国にいなければならないかわからない。

 それに、元の国に帰る必要もないのだからと

 この国で腰を落ち着けるつもりらしい。


 私はゆっくりするようにと言われたが

 大丈夫と言ってお兄様と共に聖女様がお勤めをされているという

 聖堂を見にいった。


 城門の外からも王城と共に聖堂の一部が見えていた。


「あそこに聖女様がいらっしゃるのね……」

「早く見てもらえるといいな」


 お兄様の言葉に頷きつつ

 外から聖堂に向かって祈りを捧げる。


(……この国では穏やかに暮らせますように)


 そうしていた時だった。


「きゃっ――」


 突然、後ろからぶつかられ悲鳴が出る。

 ぶつかった人は私からカバンをひったくると走り出した。


「なっ、――泥棒!」


 お兄様はひったくりを追いかけて行ってしまう。

 私も追いかけたものの

 途中で胸の痛みが酷くなり

 聖堂のある通りから小道に入り込んだ場所で動けなくなってしまった。


 あんな場所で祈っていたからと

 後悔に襲われる。


(今は落ち込む場合じゃないわ……)


 お兄様の姿は既に見えない。

 道の先は入り組んで、お兄様がどちらに向かったかわからないし

 周囲はお世辞にも治安が良さそうとは言えない場所だ。


(これ以上迷惑をかけないように、戻って待っていた方がよさそうね……)


 息を整え、胸の痛みが引くのを待って

 戻ろうとしていた時だった。


「お嬢ちゃん、一人かい?」

「この辺で見ない顔だね」


 知らない人達に囲まれてしまった。

 おそらくは先程のひったくりとは別の人達だろう。

 柄の悪い青年に囲まれて、恐怖を覚える。


(ど、どうしよう……)


 声を出そうと思うのに、

 思ったように言葉にならない。


「あっちに良い店があるんだよ」

「一緒に行こうぜ」

「……や、やめてください」


 手首を掴まれ、

 振り払おうとしても、ビクともしない。

 泣きそうになっていると、

 別の声がかけられた。


「お前達何をしている」


 こちらの異変に気が付いてくれた人がいたようだ。

 聖騎士の恰好をした銀色の髪の青年が駆け寄ってくる。


「まずい! 聖騎士の見回りだ!」

「逃げるぞ!」


 男達はぱっと逃げてしまった。


「大丈夫か? この辺りは治安がよくない。お嬢さんのような人が来る場所ではないと思うのだが……」

「すみません。ひったくりにあって兄と追いかけていたのですが、はぐれてしまったのです」

「そうだったのか。ひとまず、この場所に長居はよくない。聖堂前の通りに出よう」


 頷いたところで、兄の声が聞こえた。


「ミシェル!? カバン取り返したぞ! って、その人は……」

「男性に絡まれているところを、騎士様に助けていただいたのです」

「そうだったのか……置いていって悪かったな。どこかで待つように言えばよかった」

「いえ、無事でしたから。お兄様こそ、カバンを取り返してくださってありがとうございます」


 お兄様は騎士様にも向き直る。


「妹を助けていただきありがとうございました」

「騎士としてのことをしたまでです。お気になさらず。この辺りは聖堂が近く、迷い込む方がおられるので、時折見回りに行くのです。妹さんがご無事でよかった。そのひったくり犯はどうされました?」

「それが、俺が諦めないとわかって、カバンを投げつけられて、逃げられてしまいました」

「そうでしたか。では、見回りを強化する必要がありそうですね。……ひとまず共に大通りまで行きましょうか」


 歩きながら、騎士様はこの国で過ごす注意点などを教えてくれる。


 この国には聖女様の治癒を求めてやってきて

 仕事もないのにそのまま住み着いてしまう人がおり

 治安がいい場所と悪い場所が混在しているという。


 お祈りをしたい場合は、聖堂の中に一般開放されている祈祷室があるので

 そちらで行うようにとすすめられた。

 大通りまで来ると、騎士様は見回りを続けるからと、そこで別れる。

 私はお兄様と二人で宿へと戻るのだった。

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悪女は職業“皇妃”を満喫する ~悪役皇妃に転生しましたが、断罪が怖いので、陛下早く離婚してください。それまで私はお仕事がんばります~

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