表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

ギルバートside


「え……?」


(いまオルテル家の騎士って言った?)


聞き間違いであって欲しいと願う。


でないと私は、と思ったとこでおかしいことに気づいた。


(オルテル家の騎士がどうして仲間を傷つけてまで私を助けたのかしら?)


いくら考えてもその理由はわからず、本人に聞くことにした。


彼なら嘘をつかずにきちんと答えてくれる気がした。


「どうしてオルテル家の騎士なのに私を助けてくださったんですか?」


伯爵から連れ戻す指示が出ているはずなのに、と続けたかったが、考えただけで恐怖が襲ってきて上手く口が動かせなかった。


「正確に言えば、私はオルテル家に忠誠を誓っていません」


「……?」


オルテル家に潜入している他の貴族の騎士なのか?と考える。


父が何かやらかしたのだろう。


「昔、ある人に助けてもらいました。私はその日からずっとその方にのみ忠誠を誓っています」


シオンの目はその当時を思い出しているのか、幸せそうな顔をした。


「その方から私を守るように言われたのですか?」


「……まぁ、そんなところです」


シオンは曖昧に微笑んだ。


「これからもオルテル家はお嬢様を追いかけるでしょう。最後が来るその日まで、私がお嬢様をお守りすることをお許しいただけませんか」


シオンは跪き、真っ直ぐに私を見つめて言う。



私の事情に彼を巻き込んでもいいの?


私一人でこれからもオルテル家の追ってから逃げられる?


いくら主人に命令されたからと言って、主人でもない私が守ってもらっていいの?



いろんな感情が押し寄せてきて、一人では何もできない自分が嫌になる。


頼ってもいいのか迷っていると「最後までお嬢様のそばにいさせてくれませんか」と優しくしっかりした声なのにどこか震えているような気もした。


その声を聞いて、残り少ない人生を彼と過ごすのもいいかもしれないと思った。


「お願いしてもいいかしら?」


「はい。喜んでお供します」




※※※




同時刻。ルーデンドルフ公爵家。


「イフェイオン様。そろそろ、中に入りませんか」


長年イフェイオンに仕えるギルバートはエニシダが帰ってからずっと庭の憩いの場に居座り続けるイフェイオンに声をかける。


空が暗くなり始め、星まで出てきている。


風邪をひくところなど想像もできないが、ずっと外にいられたらこちらが風邪をひいてしまう。


早く中に入って欲しかった。


「……」


イフェイオンは声をかけられたことにも気づいておらず、顔を顰めたまま微動だにしない。


(これは朝までこのままなのか……)


いつ呼ばれるかわからない以上、この場から離れることができない。


溜まった仕事を早く片付けたいのに、とギルバートは泣きたくなる。


だが、すぐにイフェイオンに対しての怒りが湧いてくる。


(いつまでここにいるつもりだ!お前が俺の仕事を代わりにやってくれるのか?休みはどうなる?お前のせいで、せっかくできた彼女とも別れることになったんだぞ!俺が可哀想だと思わないのか!)


ギルバートとイフェイオンは小さい頃から付き合いだ。


父親同士も子供の頃からの付き合いなため、その縁で二人も出会った。


父は公爵に仕え、息子もまた公爵の息子に仕える。


そのため、まるで家族のような関係ではあるが家族ではない。


貴族階級の壁は決して越えられないし、一線を越えることは許されない。


そのことを痛いほど身に染みて知っているギルバートは本当は怒鳴りたい気持ちをグッと抑えて、待つしかない。


(いつもは誰にも興味を示さないのに、エニシダ嬢のことは気にするんだよな)


まぁ、他の人は気づかないレベルの変化だけどな、と思いながら未だに顔が怖いままの友人にため息を吐く。


「ギル」


「はい。なんでしょう」


二人のときだけに呼ぶ呼び方で名前を呼ばれたため、つい「どうした。イフェイ」と言いそうになってしまう。


「彼女が誰かに呪われたそうだ」


(呪われたって……エニシダ嬢が!?可能性はなくないな)


呪われた、と聞いて驚くもイフェイオンは他国からも慕われるほどだ。


手に入れるために婚約者を殺そうとするのは当然だ。


歴史にも書かれている。


「どんな手を使っても構わん。絶対に見つけて俺の前に引きずってこい」


戦場で魔物を殺すときよりも、鋭い目つきで命令するイフェイオンにギルバートは恐怖を感じた。


こんなに怒っている彼を見たの初めてだった。


イフェイオンの放つ殺気に耐性はあるはずのギルバートでも、恐怖を感じるのだ。


呪った人間は間違いなく消されるだろうなと思った。


「畏まりました。必ず、見つけ出します」


公爵家の影の部隊に調べるよう指示を出しに行く前に、呪いの治療についてどうするか尋ねる。


「神官はお呼びしますか?」


「いや、必要ない」


きっぱりと言われ、ギルバートは驚く。


これほど怒っているのに治療はしないのかと。


だが、続きを聞いて納得する。


「不治の呪いだそうだ」


(なるほどな)


不治の呪いなら神官は必要ない。


というか、いても意味がない。


「必ず見つけろ。必ずだ」




※※※


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ