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出会い



ゆっくりと進んでいると前方から悲鳴が聞こえた。


最初に入った人に何かがあったのだろう。


状況を確認するため、急いで叫んだ人のところに行きたかったが、土地勘が無いため慎重になるしかなかった。


木の影から、少しだけ顔を出し、状況を確認すると、シオンはあまりの恐ろしさに口だけじゃなく鼻まで押さえて呼吸音を消した。


魔物がいた。


いるはずのない存在がいた。


叫んだ人は魔物に食べられていた。


血の量を見る限り、一人や二人ではない。


シオンはここにいたら殺されるとわかっていたが、あまりの恐怖に足が動かなかった。


(ああ、死ぬ。俺、今日死ぬんだ)


死を受け入れた瞬間、恐怖が消え去った。


死にたかったが、怖くて死ねなかった。


でも確実に殺されるとわかった瞬間、全てがどうでもよく感じた。


一人、また一人と殺されていく人たちの悲鳴を聞きながら自分の番を待ったが、魔物はシオンに気づかなかった。


別の場所で悲鳴が聞こえた瞬間、そこに向かって走っていった。


まさかの出来事にシオンは唖然とした。


運良く助かった。


シオンはそれに絶望した。


十日はこの森から出ることができない。


兵士たちが結界を張ったせいで。


死ぬまで、この最悪な状況が続くことが限界で耐えられなかった。


早く殺して欲しかった。


自分で死にたくても、金縛りにあったみたいに指一本動かすことができなかった。


一秒でも早く死ぬことを願ったが、その願いは叶うことはなかった。


十日が過ぎ、結界が消えるとシオンは森を出た。


どうやって出たのかは今思い出そうとしても、思い出せなかった。


シオンは唯一、魔物たちの狩から生き残った。


シオンは兵士たちに見つかることなく逃げた。


走って、走って、走って、とにかく走り続けた。


どれくらい走ったのかわからないくらい走った。


石に躓いて転けるまで。


ドンッ!


大きな音が出るくらい派手に転んだ。


痛みは感じなかったが、何もする気にならなくてそのままでいると、誰かに声をかけられた。


「大丈夫?」


声から女の子の声だとわかった。


自分を心配してくれているとわかる。


だが、顔を見たら悲鳴を上げて逃げ出すだろう。


そのときシオンの頭に悪い考えが浮かんだ。


自分の顔を見せて、呪われたと勘違いして慌てればいいと。


泣けばいいと思った。


「いや、大丈夫じゃない」


そう言って上半身を起こしてから、女の子の方を振り返った。


宝石のようにキラキラと輝く、大きなつぶらな瞳と目が合った。


その瞬間、まるで時が止まったかのようにシオンはその女の子に目を奪われた。


なんて美しい子なんだろう、と思った。


こんな子に自分の醜い顔を見られたくないと思い、慌てて顔を逸らすが、きっと逃げ出すと悲しくなった。


こんなことなら馬鹿なことをしなければよかったと後悔した。


だが、そんなシオンの思いとは裏腹にその子は逃げ出すことはなかった。


「そうよね。ごめんなさい。どこが痛いのかしら?手当てをしないと。まずは水で洗った方がいいよね。向こうに川があるの。歩ける?」


その子はシオンの怪我したところを見て、今にも泣き出しそうになった。


顔を見ても怖がらず、それどころか心配して手当てをしてくれるという。


シオンは自分は死んだのか、と思った。


そうでなければ、こんな夢のような出来事が自分に起こるはずなかった。


「……うん」


シオンは彼女の優しさに心が温かくなり、涙が溢れそうになった。


なんとか耐えながら返事をしたが、その表情を見た彼女には、怪我したところが相当痛いのだ、と勘違いされていた。


「つかまって。肩かすから」


女の子はシオンの腕を自分の肩にまわした。


その行動にシオンは驚きを隠せなかった。


自分のような人間に躊躇いもなく触れるなんて信じられなかったからだ。


服はボロボロで汚く、体を洗うことすら許されなかったためきっと臭い。


肌だって洞窟の中にずっといたため汚れている。


女の子は綺麗な髪、綺麗な肌、綺麗な服を着ていた。


誰だって綺麗なものが汚くなるのは嫌なはずだ。


自分の物となればなおさら。


それなのに女の子は自分が汚れることも気にせず、シオンを助けようとしていた。


「ありがとう」


シオンは女の子が自分を人間扱いしてくれたことが嬉しくて、とうとう耐えきれずに涙を流した。


「どういたしまして」


女の子はニッと少年のような笑顔を浮かべて、嬉しそうに笑った。


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