懐中時計 2
早く言わなければシオンを困らせると焦ったが、シオンは不思議そうな顔をしているだけで困ったり面倒に思っていない感じだった。
シオンの顔を見たことで少し緊張が解けた。
いつからかシオンの顔を見ると落ち着けるようになった。
さっきはシオンの顔を見て焦ったのにと、自分の矛盾な心情につい頬が緩んでしまった。
「これを渡したくて。お礼」
綺麗に包装された小さな箱を渡す。
「これは……?」
「じゃあ、私はこれで。おやすみ」
渡せたのはいいが、急に恥ずかしくなり早口で言いたいことを言ってその場を去った。
「あ、はい。おやすみなさい。お嬢様。プレゼント、ありがとうございます」
後ろからシオンの声が聞こえたが、振り返る勇気はなく急いで部屋に入った。
私は部屋に入ると自分の態度の悪さに後悔した。
もっと感じよく渡したかったのに。
いつもありがとう。
ここまでついてきてくれてありがとう。
シオンがいてくれたから寂しくなかった。
とか、感謝の気持ちを伝えたかったのに、実際は感謝の気持ち一つ伝えられない意気地なしだった。
そこから、後悔と反省、プレゼントを喜んでくれたのかと不安になり、ずっと考えていると気づけば朝になっていた。
いつものようにシオンが私を起こしにきた。
トントントン。
いつもより音が大きく聞こえる。
「お嬢様。私です。起きていますか?」
恥ずかしさもあるが無視するわけにはいかないので扉を開けて挨拶をする。
「うん。起きてるよ。おはよう」
いつもと違って顔を見て挨拶ができない。
そのおかげで目線が下に下がり、シオンのズボンのポケットからチェーンが見えた。
そのチェーンは懐中時計についていたものと一緒だ。
「おはようございます。お嬢様。素敵なプレゼントをありがとうございます」
ポッケから懐中時計を取り出し、嬉しそうな顔をしてシオンはお礼を言った。
その笑顔みてあげて良かったと、ようやくホッとできた。
「喜んでくれて良かった」
安心したからか気が抜け、急に眠気が襲ってきた。
欠伸をしてしまう。
「眠れなかったのですか?」
シオンが心配そうにみてくる。
「うん。目が冴えてなかなか眠れなくてね」
眠たいのは本当だが、本当のことを言うわけにはいかないので誤魔化すも、上手い理由が見つからなかった。
「なら、今日はゆっくり休みましょう」
ベッドに戻らされる。
ゆっくり眠るよう言われる。
ベッドに横になるとさらに眠くなる。
抗おうとするが、シオンの優しい声で安心して気づいたら夢の中へといっていた。
意識を手放す前に「おやすみなさい。いい夢を見てください」と言っている声が聞こえた。
次に目を覚ますと昼を少し過ぎた頃だった。
よく寝たせいか、起きたらお腹が空いていた。
今から街へ出かけるのもいいな、と着替える。
鞄からワンピースを取り出した。
髪もいつもと違う髪型にした。
外に出る準備が終わり出かけようと扉を開けると、ちょうど扉を開けようとしていたシオンと目があった。
(あ、ちょうど良かった)
シオンと行こうと思い呼びに行こうとしたら、タイミングよく目の前に現れた。
少し驚いたが、すぐにナイスタイミングだと心の中で褒めた。
「お嬢様。どこか行かれるのですか?」
「うん。街を散策しようと思ってね」
「私も一緒に行ってもいいですか?」
「もちろんよ。今からシオンを呼びに行こうとしてたの」
シオンはどこか嬉しそうに笑ってから「どこに行きますか」と尋ねてきた。
「とりあえず昼食をたべたいわ。お腹が空いたから」
「そうですね。私もお腹が空きました」
目的地を決めず、美味しそうな店を探して食べたいと思ったところに入ってから、そこで昼食を取ることにした。
だが、どこも多かった。
ほとんどが恋人同士で、入るのに勇気がいった。
結局、一番人気の店に入って食事をすることに決めたが、カップルの数は他の店より圧倒的に多かった。
店員にはカップルと間違われて気まず苦なったが料理はとてもおいしかった。
でも、ここにくるのは一度で十分だと思った。
メモリアにきて二週間が過ぎた。
小説に出てきた食べ物を食べたり、場所を訪れたりしたが、二週間経ってもまだ一つだけ行けていない場所があった。
街の人たちに聞いてもそんな場所はないと言われた。
百年以上前の小説だから、その場所がなくなったのではないかと言われているらしいが、当時からその場所は存在しないと言われていた。
架空の場所だと。
だが、私はその場所は存在すると確信していた。
なぜそう思うのか?と聞かれたらただの勘としか言いようがなかったが、なぜかあると思っていた。
シオンがどう思っているかはわからないが、一緒にその場所を探してくれた。
その場所は森の中にあると書かれているため、私たちは今日も森の中を探し歩き回った。




