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イフェイオンの気持ち


「言いたいことはわかります。どうして'神に見放された子'がここにいるのか?いや、それよりもどうやってその証を消したのか、の方が気になりますか?」


神に見放された子は人間として生きる価値がないというレッテルを貼られたものたちだ。


奴隷よりも酷い扱いを受ける。


奴隷は国際法により100年前に禁じられた。


もし、奴隷を飼っているもの、売っているもの、買ったものがいれば、そのもの達には重い罪がまっている。


最悪、死刑もある。


だが、神に見放された子だった場合は話が変わる。


その者たちになら何をされても許される。


神がお許しになった。


誰がそう言ったのかはわからないが、奴隷が禁じられたというのに、ただ顔にシミができたという理由だけで何もしていないのに大罪人の烙印を押される。


「気にならないといえば嘘になるが、今はどうでもいい。俺が知りたいことはただ一つだ。エニシダ嬢はどこにいるのだ」


イフェイオンはこれまで国のためにその身を捧げてきた。


神に見放された子たちがどんな扱いを受けてきたのかは噂程度にしか知らない。


そもそも、お伽話くらいにしか思っていなかった。


それほど長く戦場で人生をおくっていたから。


実際に目の前に現れるまでは信じていなかったのかもしれない。


彼らが何故そう言われるようになったのか、何もしていないのにそんな扱いを受けるなら助けてあげたい、と少し前まではそう思っただろう。


だが、今のイフェイオンの一番の優先事項はエニシダに会うことだ。


どれだけ多くの命を救おうと、愛する人を誰も救ってはくれないのなら、今のイフェイオンは誰一人救う気にはなれなかった。


「その前に、私の質問に答えてください」


イフェイオンは少し前にゲイルに言われた言葉を思い出す。


「愛しているからだ」


イフェイオンはゲイルの目を真っ直ぐ見つめ、きっぱりと言い放つ。


「愛しているから、彼女に会いたい」


当たり前だと思っていた日常がずっと続くことはない。


そんなことわかっていたはずなのに、自分だけは大丈夫だと思っていた。


エニシダが呪われて、当たり前だった日常が壊れて初めてわかった。


ずっと嫌われていると思っていた。


戦場にいるときに何度も手紙を出したが、一度も返事は返ってこなかった。


帰還を祝うパーティーにも招待したが来てはくれなかった。


無理矢理婚約したからか。


それとも相手が自分だからか。


理由はわからなかったが、どうしても彼女を手放すことができなかった。


月に一度だけ会える約束を取り付けられたときは嬉しかった。


その日が来るのを毎月楽しみにしていた。


彼女と共にいるときだけ時間は、はやく過ぎた。


少しずつ時間を共にしていけば、彼女も心を開いてくれると信じていた。


自分の気持ちを今伝えれば逃げられると思って言わなかったのに、勘違いされていたと知ったいまはさっさと想いを伝えればよかったと後悔した。


もう、そんな後悔はしたくない。


愛しているからこそ、彼女にきちんと想いを伝え、一緒に乗り越えたいと思った。


「頼む。彼女の居場所を教えてくれ」


イフェイオンはゲイルに頭を下げてお願いをする。


その行動に二人は驚きを隠せなかった。


特に、長年イフェイオンと共に過ごしたギルバートは。


次期公爵として育てられた完璧な男。


次期公爵なら皇族以外にはただ命じればいいと言われ続けていた。


誰も信じず、己だけを信じろ。


それが現公爵でイフェイオンの父の教えだった。


そのためか、イフェイオンは屋敷でも戦場でも常に誰かに頼むことなどなかった。


ただ、命じていた。


それなのに今目の前で平民、いや「神に見放された子」に頭を下げてお願いをしている。


信じられない光景にギルバートは息をするのも忘れていた。


何が彼をここまで変えたのか、と考えてすぐに答えにたどり着いた。


愛。


エニシダ嬢への想い。


ただ、それだけでこれまでの人生を否定するような行動に出た。


ギルバートは羨ましいと思う反面、理解できないな、と思った。


「エニシダ様があなた様に会いたいと思っていないとしても、会いたいですか?」


「ああ。それでも会いたい」


ゲイルの問いかけにイフェイオンはすぐに答えた。


「そうですか」


ゲイルは心の中でシオンに謝罪をした。


シオンに昔、助けてもらった恩があるが、それはイフェイオンにも言えたことだ。


この国はイフェイオンが守っていると言っても過言ではないほど救われている。


魔物が何度も攻めてきたが、その度にイフェイオンが倒してきた。


それだけじゃない。


昔、オルテル家に来る前にいた場所で魔物に襲われそうになったとき、イフェイオンの部隊がきてくれたお陰で助かった。


シオンは人として生きる人生をくれた。


イフェイオンは命を救ってくれた。


どちらもエニシダ様のことを心から思っているのなら、どちらにもチャンスを与えるべきだろう。


(受けた恩は返さなくてはな)


「わかりました。エニシダ様がどこに向かわれたかお教えしましょう」


ゲイルはイフェイオンに初めて柔らかい表情を見せた。

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