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覚醒

(俺は……やはりただの落ちこぼれ……ここで終わりなのか……?ユリウスを……守れないまま……)

その時だった。

激しい戦闘の中、ユリウスの声がはっきりとヴォルカの耳に届いた。

「ヴォルカ!信じています!」

何を言っているのだ、とヴォルカは一瞬呆然とした。今、自分は何もできていないのに。

しかし、その言葉は不思議とヴォルカの胸に響いた。ユリウスは決して無意味な慰めなど言わない。あの男は、いつだって真っ直ぐな目で、こちらを見て話す。その信頼が、重いが、確かにヴォルカの心に火を灯した。


同時に、長老セリュナが静かに、しかし凛とした声で語りかけた。

「竜よ……。汝が持つ力は、炎だけに非ず。汝の心に宿る怒りも、悲しみも、そして守りたいという願いもまた、力となる。真の力とは、己が魂の色。煤の中にこそ、汝の魂の輝きが隠されているのやもしれぬ……」

セリュナの言葉は、まるで古い詩の一節のようにヴォルカの心に染み渡った。


(俺の……魂の色……?煤の中に……輝き……?)

ヴォルカはサリオンを見据えた。あの男の歪んだ笑み、エルフたちの苦痛、そして仲間を傷つけようとする邪悪な意志。それら全てが、彼の怒りを呼び覚ました。同時に、守りたいという願い――ユリウスやライエル、そしてこの里のエルフたちの未来を守りたいという強い思いが、胸の奥底から沸き上がってきた。

それは今まで感じたことのない種類の怒りだった。自分自身への失望や憤りではなく、純粋に「大切なものを奪わせない」という強烈な意志だった。


「グゥ……グゥオオオオオオオッ!!」

ヴォルカの内側で、何かが弾けた。

最初は小さな火花だった。彼の黒鉄色の鱗の隙間から、微かな青白い光が漏れ始めた。それは徐々に強くなり、やがて眩いばかりの蒼炎となって彼の全身を包み込む。

煤は焼け落ち、煤混じりの黒煙は清冽な炎の奔流に押し流される。

「な……んだと……!?」

サリオンの嘲りの笑みが凍りついた。闇の精霊たちもまた、その圧倒的な光と熱量に戸惑い、動きを鈍らせる。


ヴォルカの眼が、燃え上がる蒼炎に照らされて鋭く光る。

(これが……俺の……!)

かつて竜の里に住めないとされた落ちこぼれの竜。煤と灰に塗れ、弱い竜を従わせることでしか存在意義を見出せなかった竜。そんな自分が今、仲間を守るため、大切なものを奪おうとする悪意の前に立ちはだかる。

彼は大きく息を吸い込み、その喉奥に蒼き炎を集中させる。

「ヴォオオオオオオ!!!」

天を衝くような轟雷の如き咆哮と共に、ヴォルカの口から迸ったのは、夜空を裂くような蒼き流星だった。

その炎は闇を焼き払い、サリオンが操る大精霊に直撃した。

「ギャアアアアアッ!?」

大精霊の苦悶の叫びと共に、黒い靄が晴れていく。囚われていた精霊の魂が解放され、澄んだ光となって天空へ還っていく。

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