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共闘

エドガーとアレクシスは苦戦していた。二人の前に立ちはだかったのは牛獣人四人組だ。剛力無双の突進にアレクシスの防御魔法が悲鳴を上げる。


「くっ……!」アレクシスが歯を食いしばる。


「せっかくユリウスから逃げ切れたのに、こいつらガチで潰しに来てるぞ!」


エドガーが猿特有の俊敏さで攻撃をかわすが、四人相手では防戦一方だ。


「助けようか?」


突如響いた声に全員が振り向く。ユリウスが手を振っていた。


「ユリウス君たーすーけーてー」


アレクシスが棒読みで大袈裟に助けを求める。彼の額には汗が浮かんでいた。


ユリウスが歩み寄る。


「では……ちょっと邪魔するね」


彼が手のひらを向けると四人の足元から砂塵が巻き上がった。視界を奪われた隙にエドガーとアレクシスが距離を取る。


その隙にユリウスは魔法の蔓で四人を拘束し翡翠石を奪った。


「ありがとう」アレクシスが感謝する。


「いやいや」ユリウスが微笑む。


「ちょうど君たちと組みたかったところなんだ」


ダミアンは不満そうに唸った。


「……なぜ彼らを選ぶ?」


「彼らが戦略的に有利だからですよ」ユリウスが説明する。


「エドガー君の敏捷性とアレクシス君の魔法知性……それに僕の知識とダミアン様の武力。バランスが取れています!」


エドガーが口を尖らせた。「へっ……ユリウスがいれば十分じゃね?」


「それは違うよ」ユリウスが静かに否定する。


「魔術は確かに強力ですが……チームワークの中で生まれる連携!その中で培われる経験は様々な可能性を帯びているんです!」


ダミアンが眉をひそめる。(さっき大量に失格者を出した奴が良く言う)


「よし!」エドガーが手を叩く。


「じゃあさっさと次の獲物を狙おうぜ!」彼の目がキラリと光る。


アレクシスが冷静に分析する。


「現在の有力ペアは……やはりコンラッドとハインリヒの組とザナヴァスとトリスタンの組か」


「あー、ザナヴァスさんとトリスタンさんですか……」


ユリウスの表情が微妙に曇る。「あの二人組は厄介ですね」


四人は闘技場西側の廃墟に身を潜めていた。瓦礫の陰から周囲を伺う。


「まず敵の位置を把握しないと」


ユリウスが地面に簡易地図を描く。


「ここが我々のいる地点。ハインリヒさんとコンラッドは北東、ザナヴァスさんたちは南西にいると予測できます」


「なんでそんなこと分かるんだよ」エドガーが不思議そうに聞く。


ユリウスが微かに笑った。「気配と魔力を探知すればだいたいの位置は分かります」


ダミアンは唖然とする。


「じゃあ作戦は?」アレクシスが問う。


ユリウスが図を指さす。「まずはコンラッドたちを狙いましょうか」


「挟み撃ちか?」エドガーがにやりと笑う。


「いいえ」ユリウスが首を振る。


「せっかくなので連携です!」


三人は怪訝な顔をした。


「私が遠隔から彼らを牽制。殿下が正面から挑発します。エドガー君は背面から奇襲、アレクシス君は全体のサポートを」


「そんな単純な作戦が?」ダミアンが疑問を呈する。


「単純だけど効果的なんです」


ユリウスが断言する。


「魔術の基本は単純さとタイミングですから」


エドガーが興奮気味に拳を鳴らす。


「よーし!久しぶりに暴れてやるか!」


アレクシスが冷静に警告する。「でも殺傷は厳禁だぞ」


「もちろん」ユリウスが頷く。


「これはあくまで交流戦ですから、楽しみますよ!」


***


四人は低く身をかがめて移動を開始した。ユリウスの先導で廃墟の影から影へと素早く渡り歩いていく。エドガーの軽快な足取りとダミアンの威圧感ある姿が不思議と調和していた。


「ここだ」ユリウスが静止する。「彼らはあそこにいる」


崩れた塔の陰から見上げると、コンラッドとハインリヒが警戒態勢で立っていた。コンラッドの虎獣人特有の筋肉質な体躯とハインリヒの鋭い眼差しが月光に浮かび上がる。


「……あの二人組、完全に連携できてるな」エドガーが感心する。


「素晴らしいです!」ユリウスが微笑んだ。


***


ユリウスの指先から光弾が放たれた。それは緩やかな弧を描き、二人の頭上を通過する。ハインリヒが反射的に振り向き、コンラッドも警戒する。


「ユリウス!」


コンラッドが吠えた。


「ふん!」


ダミアンが猛然と飛び出した。獅子獣人の咆哮が夜気を震わせる。


「まさかダミアン様とは⁈」

ハインリヒの爪が月光を浴びて煌めく。


「おや?」エドガーが不敵に笑う。


「あいつら俺たちに気づいてねぇな」


「よし……行け!」アレクシスが魔法を詠唱。風の流れがエドガーの動きを加速させる。


戦場は混沌としていた。ダミアンの剛力とコンラッドの俊敏さがぶつかる。ハインリヒが魔法障壁を展開するもユリウスの魔法がそれを貫こうとする。


「うわっ!この魔力!」


ハインリヒの障壁に亀裂が入る。彼の表情に恐怖が浮かんだ。


その時——


「後ろだ!」コンラッドが警告を発した。


「お待たせー」エドガーが背後から奇襲をかける。彼の素早さは予測不能だ。


「くっ……!」


ハインリヒが咄嗟に身を翻すがエドガーの手が翡翠石を掠め取る。


ユリウスが大きく手を広げた。


「『光よ!』」


まばゆい閃光が周囲を覆う。視界を奪われたコンラッドとハインリヒ。


「今です!」


ダミアンが突進する。体制が崩れたところにエドガーがコンラッドの石を奪い取った。


「しまった……!」


コンラッドの悔しそうな声。


「降参してくれますよね?」


ユリウスが微笑む。


二人は観念したように両手を挙げた。


「さすがです、ダミアン様」ハインリヒが吐息する。


「くそー、組んでやがったか。完敗だ」コンラッドが認めた。


エドガーが得意げに跳ねる。「ほら見ろ!俺の作戦が当たった!」


「作戦を考えたのはユリウスだぞ」アレクシスが呆れる。


「でも実行したのは俺だし!」エドガーが胸を張る。


ユリウスはハインリヒとコンラッドに優しく微笑みかけた。


「ふふっ、観客席から応援してくださいね」


***


エドガーが得意げに石を掲げた。「更に二個ゲット!俺たち最強じゃね?」


「君すぐ調子に乗るよね〜」アレクシスが窘める。


ユリウスが微笑む。


「さあ次はどうします?ダミアン様にお任せしますよ」


「……なぜ俺に?」


ユリウスが静かに告げる。


「これは王族……指揮官としての試練だからです。将来の為に戦況判断と決断はあなたがするべきです」


ダミアンの喉が鳴った。瞳が揺れる。


「……分かった」彼は周囲を見渡した。


「南西へ向かう。ザナヴァスとトリスタンを仕留める」


***


「ところで」エドガーが唐突に切り出した。


「ユリウスってさ、秘密の特訓とか特殊な産まれしてんのか?」


ユリウスが笑う。


「秘密なんてありませんよ。ただの元商家の次男ですから」


「嘘つけ」エドガーが即座に否定。


「あの魔力制御、尋常じゃないぞ」


ダミアンが鋭く睨む。


「私も同感だ。あれほどの力……一体何者なのだ?」


ユリウスはしばらく黙り込み——


「私は単なる魔術に魅了された少年です。ただ……少しだけ昔の記憶があるだけ」


「昔の記憶?」アレクシスが眉を寄せる。


「はい。前世で得た知識がね」ユリウスが冗談めかして微笑む。


「転生者ってやつですよ」


三人は怪訝な顔をする。


「まあ冗談はさておき」


ユリウスが話を戻す。


「ザナヴァスさんは力だけが取り柄ではないのです」


「彼は勘が鋭いんですよね」ユリウスが説明する。


「不意打ちや小細工が通用しにくい」


「じゃあどうする?」エドガーが腕を組む。


「正攻法ですよ」ユリウスが微笑む。「ただし……私がサポートします」


ダミアンが鋭く問う。「また強引な魔法か?」


「いえ」ユリウスが首を振る。


「今回はシンプルな心理戦です」


***


「いたぞ」アレクシスが小声で指し示す。


茂みの向こうにザナヴァスとトリスタンの姿があった。二人は密林の中で周囲を警戒している。


「よし、行くぞ」ダミアンが身構える。


「待ってください」ユリウスが制止する。「まずは私が先導します」


彼が魔法の蔓を手に現出させると、それを地面に這わせ始めた。


「何してる?」エドガーが首を傾げる。


「彼らの注意を引き付けるだけです」


ユリウスが楽しそうに言う。


「さあ、狩りの時間ですよ」


***


「なっ!?」


ザナヴァスが突然全方位から足元に伸びてきた蔓に驚く。彼は咄嗟に飛び退いたが、トリスタンと距離がはなれてしまった。

そして、それが罠だとすぐに気づいた。


「これユリウスの仕業か⁈」


トリスタンが悲鳴を上げる。「ちょっと待って!これ何!?」


「罠です!因みにそれはなんの効果もないただの蔦です!」ユリウスが姿を現す。「シンプルでしょう?」


「くそっ!」ザナヴァスが牙を剥く。「舐めてるのか!」


ダミアンが雄叫びを上げて突進。その勢いを利用してユリウスが魔法の光網を展開。


「ダミアン様!」ユリウスの指示にダミアンが即応。


光網で動きを封じられたザナヴァスがもがく。「こいつ!小癪な手を!」


「戦場に卑怯もありませんよ」ユリウスが柔らかく微笑む。


エドガーがトリスタンに迫る。「観念しな!」


「やだよ!」トリスタンが慌てふためく。


彼の巨体が不器用に動く。


「落ち着け!」アレクシスが魔法陣を展開。


「風よ!」


暴風がトリスタンを包み込み、彼の動きを制限する。


「今だ!」エドガーが跳躍し、トリスタンの翡翠石を奪った。


「あぁー!」トリスタンが情けない声を上げる。


「やるじゃねえか」ザナヴァスが不敵に笑う。「だが!」


彼の筋肉が膨張する。獣性を解放した黒狼男獣人が拘束を引き千切った。


「なっ!?」ダミアンが驚愕する。


「ダミアン様!」ユリウスが警告。


ザナヴァスの鋭い爪がダミアンに迫る!


「させません」


ユリウスの声が冷たく響く。彼の周囲に幾重もの魔法陣が浮かび上がった。


それぞれが複雑な文様を描き出す。


「これは……!」


ダミアンが目を見開く。初めて見る魔法体系だった。それは古語とも異なり、未知の法則に基づいている。


「多重展開・『重力檻』」


ザナヴァスの身体が急激に重くなり、膝をつく。「ぐおっ……!?」


「うまくいきました!」ユリウスが微笑む。


「魔術は素晴らしいですね」


アレクシスが青ざめる。


「なんて魔術だ……そんなにポンポン撃てるもんじゃないでしょ…」


***


ザナヴァスの巨体が地面に沈み込む。彼は必死に抵抗するが、目に見えぬ重圧に押しつぶされるように動けない。


「こんな……馬鹿な……」黒狼男獣人の声が震えた。


「降伏してください」ユリウスが淡々と言う。


「このまま続けると……骨が砕けますよ」


「くそっ……!」ザナヴァスが舌打ちする。彼は諦めたように両腕を投げ出した。


エドガーがトリスタンの翡翠石を掲げる。


「これで8個目だな!」


「さて、ダミアン様次は誰を狙います?」

ユリウスが尋ねる。


ダミアンは沈黙したままザナヴァスを見つめている。


「……どうしました?」ユリウスが心配そうに声をかける。


「……なんでもない」ダミアンが牙を見せた。「次は…」

そうダミアンが言いかけた瞬間


「捕まえた…」とユリウスの影から手が生えそのままユリウスを影へと引き摺り込んだ。

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