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交流戦開幕

レギア・レオニス学院の広大な闘技場に、二千を超える学生たちが集結していた。空は雲ひとつなく晴れ渡り、太陽が熱気を帯びた砂を照らしている。観覧席には学院の教師たちが列をなし、最も高い特等席には両国の王族や高官の姿もあった。


「諸君!」


拡声器を通して学院長アルセリオの声が響く。白銀の髪を風に靡かせ、深紅のローブが太陽に輝いていた。


「これより恒例の一・二年交流戦を開始する!今年は両国間の友好関係強化を目的とし、基本的に両国のペア戦形式での開催となった!」


学生たちから歓声が沸き起こる。


「ルールは簡単!」


アルセリオが懐から翡翠色の宝玉を取り出した。掌の中で淡く脈動する光を放っている。


「これを首から下げて護りなさい!相手に石を奪われるか破壊されれば脱落だ。ペアの石を奪われても復活の機会はあるが──」


彼は石を握りしめると、拳が光を放った。刹那、パリンッとガラスが砕けるような音が響き、石が砂塵と消える。


「破壊された場合はアウトだ!ただし、その場合でも翡翠石があるものは戦闘の続行は認める。奪った石をペアに渡せば復活を認める」


息を呑む学生たち。


「目標は石の保持数だ!奪った石の数に応じて最終的な順位及び報酬が変わってくる。戦略的に奪うことが重要となるだろう。だが忘れるな──」


アルセリオの瞳が鋭く光る。


「著しい負傷や殺害は厳禁だ!違反者は即失格とする!」


沈黙が場を支配する。


「では諸君健闘を祈る!」


***


石が配布され始める。ユリウスは受け取った石の滑らかな感触に戸惑っていた。


(これは魔法的干渉を受けにくい素材だな……翡翠石と見せかけた人造石か。内部に保護魔法が施されている)


「おい」


背後から低い声。振り返ると黒獅子男のダミアンが立っていた。紫紺の瞳が冷ややかにユリウスを射抜く。


「どうやら貴様が相棒らしい」


ユリウスは丁寧に頭を下げた。


「よろしくお願いします、殿下」


「殿下呼ばわりは不要だ」


ダミアンが鼻を鳴らす。傲慢な態度だが、妙に苛立ちが滲んでいる。


「まさか貴様と組むとはな……」


(なるほど。王子様は僕みたいな平民と組むのが不服なのか)


ユリウスは内心苦笑した。王族の誇りと義務の狭間で揺れるダミアンの複雑な心情を察する。


一方、他のペアは比較的自然だった。


「よろしく、ハインリヒ殿」


コンラッドが礼儀正しく頭を下げる。


「ああ」ハインリヒが応じる。堅苦しいが敵意はない。


「へーぇ、お前と一緒か」

エドガーがアレクシスに絡む。赤毛の猿獣人は退屈そうに翡翠石を弄っていた。


「互いに足を引っ張らない程度に頑張ろう」

鷹獣人アレクシスが冷静に答える。


「なんで俺らは同国ペアなんだよ」ザナヴァスがトリスタンに不満を言う。

「それは素行が悪…きっと人数があぶれてしまったんですよ」トリスタンがザナヴァスをフォローする。


***


スタート地点に配置された学生たち。


ダミアンが突然囁く。


「貴様は何ができる?」


「色々です」ユリウスが微笑む。


「ダミアン様こそ?」


「……言わずともわかっているだろう」


「いえ、以前相対した時は全力ではなかったでしょう?」


彼の漆黒の尻尾が苛立たしげに揺れた。


***


ダミアンの眉が寄った。「策……だと?」


「策というより……危機回避法です」ユリウスが穏やかに答える。


「開始と同時に僕たちを狙ってくる学生は多いと思います」

彼は周囲をそっと見渡した。


「特に僕を」


(ユリウス・クラウディール——この異常な魔力を持つ平民を排除しようとする者が大勢いるはずだ)


「それで?」ダミアンが促す。


「隠遁術で逃げましょうか」ユリウスの微笑が深くなる。


「それから……他のペアと連携するのも手ですね。共闘禁止されていませんし」


ダミアンの耳がピクリと動いた。「……共闘?」


「ええ」ユリウスが肩をすくめる。


「最後に——」


彼の目に一瞬、危険な光が宿った。


「一気に数を減らす方法もあります」


***


「開始!」学院長の声と共に鐘が打ち鳴らされた。


瞬間——


数十人の学生がユリウスとダミアンめがけて殺到した。ダミアンは驚愕する。


(予想以上だ!)


ユリウスが囁いた。「始めます」


彼が指先をわずかに上に向ける。地面に落ちていた小石が一斉に浮かび上がった。


ダミアンは目を疑った。(浮遊術か?こんな規模で——)


「——放て」


小石が閃光のごとき速さで飛び交った。

次々と礫に翡翠石を破壊され阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される


「これ……もう半分ぐらい消えたんじゃないですかね」


ユリウスの肩の上でリュミナがドン引きして呟く


「こいつを無制限で解き放ってるのが悪い」


同じく肩の上のヴォルカはため息混じりに呟いた


「お前……」ダミアンは唖然とする。


「これほどの力があるのに策だと?」


ユリウスは苦笑した。


「加減するのが難しくて」


(加減……だと?これで?)


「さて」ユリウスが周囲を見渡す。


「残りの皆さんも動き出しましたね」


「誰を狙う?」ダミアンが尋ねる。


「とりあえず——」ユリウスが指さした方向に、アレクシスとエドガーのペアが見えた。


「彼らと連携しましょう」


「なに?」ダミアンの困惑


「彼らの石が狙われていますから」


そう言ってユリウスは走り出した。ダミアンも慌てて追いかける。


「リュミナとヴォルカは今回離れて見学しといてくださいね!」


(この男……本当にめちゃくちゃだ)


ダミアンの尾が揺れた。それは畏怖ではなく、初めて感じる興奮だった。

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