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対抗戦

訓練所は溢れんばかりの観客で埋め尽くされていた。アストライアとヴァルデールの生徒たちが両側に陣取りっている。


「ただいまより!」


司会者が声を張り上げる。


「アストライア・ヴァルデール両国の代表戦を開催いたします!あくまで授業である!お互いに礼を尽くす様に!」


### 【第一戦:ライナス vs アークライト】


先鋒を務めるのは犬獣人ライナス。温和な顔つきだが目には決意が宿っていた。

対するはアストライアの偵察役アークライト。鷲のような鋭い眼光が特徴的だ。


「始め!」


開始と同時にアークライトが消えた。文字通り「消えた」のだ。姿隠し魔法だろう。

「どこだ……!」


次の瞬間、背後から襲われる。辛うじて防御したライナスの剣が火花を散らす。


「へえ」


アークライトが楽しそうに笑う。


「少しはやるじゃないか」


ライナスは深呼吸した。焦りは禁物だ。ユリウスの特訓を思い出す。


「重要なのは相手の呼吸です」


あの時の教えが蘇る。


アークライトの攻撃パターンは三種類。直線的、曲線的、そして跳躍—

三回目の攻撃で法則性を掴んだライナスは—


「ここだ!」


アークライトが姿を現した瞬間を狙い打った。


「ぐっ!」


初めてアークライトの顔に驚愕が浮かぶ。


その後は互角の戦いとなった。ライナスの粘り強さとアークライトのスピードが拮抗する。

観客席から歓声が上がる。


「あと一分です!」


両者は睨み合う。


「なかなかやるな」


アークライトが息を切らしながら笑う。


「だが次で終わりだ」


次の瞬間—

二人が同時に飛び出し—

剣が交差し—

審判の笛が鳴った。


「双方引き分け!」


ライナスは肩で息をしながら剣を納めた。


「楽しかったよ」


アークライトが握手を求める。


「次は決着をつけたいね」


「望むところです」


### 【第二戦:コンラッド vs リュシアン】


虎獣人のコンラッドが静かに歩み出る。対するは狐獣人リュシアン。狡猾な笑みを浮かべている。


「始め!」


開始と同時にリュシアンが動いた。


「炎蛇舞!」


炎の渦がコンラッドを包み込む。


しかしコンラッドは冷静だった。訓練で経験済みの魔法だ。


「水龍陣!」


水流が炎を相殺する。


「ほう……」


リュシアンの目が細くなる。彼の指が素早く動く。新たな詠唱—


「氷牙連弾!」


無数の氷の刃が飛来する。


「避けられるかな?」


リュシアンが嘲笑う。


コンラッドは目を閉じた。音だけに集中する。

「左から五発……右から七発……正面に三発……」


彼の足が閃光のように動き回る。

全てをかわす。


「なっ……!」


リュシアンが驚愕の声を上げる。


接近するコンラッドにリュシアンが焦る。至近距離では魔法詠唱が間に合わない。


「くっ!」


必死に後退するリュシアンだが—

コンラッドの剣が頬を捉えた。


「ぐはっ!」


しかしリュシアンも倒れない。

再び距離を取ると


「氷牙連弾!」


再び氷の氷柱がコンラッドを襲う

また躱そうとしたコンラッドだったが……リュシアンの狙いは別にあった


氷柱はコンラッドの目の前で弾けて小さな礫に変わる

そして元々先程コンラッド自身が生み出した水が彼の体を濡らしていたのだ


「氷蛇!」


「っ……⁈」


あっという間にコンラッドの体の半分が氷に呑まれてしまった


審判が制止に入る。


「そこまで!」


***


「強かったよ」


コンラッドが手を差し出す。


「貴方も一年にしては中々でしたね」


リュシアンは一瞬躊躇したが、その手を取った。


「次は負けない!」


### 【第三戦:ザナヴァス vs ブルドラン】


黒狼獣人のザナヴァスが登場すると観客席が沸いた。彼の人気は学院随一だ。


対するのはブルドラン。牛獣人特有の巨躯が圧倒的な威圧感を放つ。


「始め!」


両者の距離が一気に縮まる。

ザナヴァスの大剣とブルドランの戦斧が激突した。


ブルドランの一撃は重い。一発受けただけでザナヴァスの腕に痺れが走る。

だが—


「速い!」


ザナヴァスの剣戟が次々と命中していく。ユリウスの特訓のおかげで反射神経が飛躍的に向上していた。


「ちぃ!」


ブルドランが後退し—


「牛角砕!」


全身の力を込めた突進を繰り出す。


「来ると思ったぜ!」


ザナヴァスが笑う。


彼の剣が閃き—

ブルドランの腕に致命的な一撃が入った。


「ぐぁあっ!」


ブルドランが膝をつく。


「勝者・ザナヴァス!」


「やったぞぉーーー!!」


ザナヴァスが咆哮する。観客席から大歓声が沸き起こった。


### 【第四戦:トリスタン vs ガルヴェイン】


パンダ獣人のトリスタンが場内に入る。観客の期待と不安が入り混じる視線が降り注ぐ。


相手は獅子獣人ガルヴェイン。ダミアンの右腕と称される強者だ。


「始め!」


ガルヴェインが間髪入れずに斬りかかる。鋭い剣筋がトリスタンの首筋を掠める。


「遅い」


ガルヴェインが嘲笑う。

「その程度の腕でよくも—」


しかし次の瞬間—

ガルヴェインの表情が凍りついた。


トリスタンの動きが変わったのだ。まるで別人のように俊敏に—

ガルヴェインの剣を受け流し、反撃に移る。


「なっ……!?」


「トリスタンさん!」


ユリウスの声援が届く。


「そのままです!」


トリスタンの瞳が決意に燃える。彼は思い出していた。


「「トリスタンさんは本当はとても強いんです!」」


訓練中のユリウスの言葉が蘇る。


ガルヴェインが焦る。

「こんなはずでは……!」


トリスタンの剣がガルヴェインの肩を貫いた。


「がはっ!」


ガルヴェインが崩れ落ちる。


「勝者・トリスタン!」


ユリウスが両手を挙げて飛び跳ねる。会場から驚きの声が上がった。

「あのパンダ男が……!」「信じられない!」



スコアはヴァルデール側に2点。アストライアは1。

残るは—


「雑魚どもが!」

ダミアンが立ち上がる。


その怒りの目がユリウスを捉えた。


ユリウスが静かに歩み出る。


### 【宿命の対決】


闘技場の中央に二人が立つ。

ユリウスは小柄な体に剣を構え。

黒獅子獣人のダミアンも剣を抜く。


「最後の戦いです!」


観客席が静まり返る。

両者の間に緊張が張り詰めた。


「はじめ!」


司会者の声が響いた刹那—

ダミアンの剣が閃光となって伸びた。


「っ!」


ユリウスはわずかに身をかわす。しかし剣先が頬を掠め、一筋の血が滴った。


「どうした?」


ダミアンが嘲笑う。


「前回は偶然だったようだな」


ダミアンの猛攻が始まった。剣の軌跡がまるで舞踏のように複雑な模様を描く。

上段からの打ち込み。

横薙ぎ。

突き。


全てが必殺の一撃だった。


ユリウスは一切攻撃に出ない。ただ受け流すのみ。

ダミアンの剣を片手で受け止め—

体重移動で重心をずらし—

風に乗るように躱す。


「貴様の剣捌き……」


ダミアンの目に怒りが宿る。


「何処で習った?」


ユリウスは微笑んだ。


「剣の師匠が居ましてね。その方からです」


「師の名前は?」


ユリウスが答える。


「師匠の名はスレイルですよ」


ダミアンの表情が凍りついた。


「スレイルだと……?」


その声が震える。


ユリウスが続ける。


「あの方の教えは素晴らしいです。『流れる水のように全てを受け流せ』と」


ダミアンが目を見開く。


「まさか……あの伝説の……」


会場に静寂が訪れる。

誰もが息を呑んで見守る中—


ダミアンの記憶が蘇る。


ダミアンは幼い頃から武術を学んできた。様々な剣豪に教えを受けてきたが

誰もが自分よりも強いと名を上げる冒険者がいた


蒼流のスレイルと呼ばれたA級冒険者

ダミアンはいつしか彼に憧れのような気持ちを抱いていた

いつか会いたいと願っていたが

風の噂で忽然と姿を消したという。


今ここでその弟子と対峙している。


「そういうことか……」


ダミアンの口元に笑みが浮かぶ。


「ならば全てを出し尽くさせてもらう」


彼は剣を構え直した。


「私の最高の一撃でお前を倒す」


ダミアンの体から湯気が立ちのぼり始める。


「これが俺の全霊—獅子流剣技・轟牙断!!」


ダミアンの剣が光り輝く。

ユリウスも構えた剣に魔力を流し込む。


ダミアンが吠えてユリウスに駆け出す

強大な一撃がユリウスに迫る。


「身体強化・強靭」


ユリウスが呟くと身体と剣を淡い光が包み込む。


ガキィンッ!!


ユリウスは真正面からダミアンの一撃を受け止める。

ダミアンの顔が一瞬驚愕に歪む

しかし、ダミアンの剣撃は止まらない

二撃、三撃と凄まじい威力の斬撃をユリウスに叩き込んでいく。

ユリウスはその濁流の様な攻撃を鮮やかに受け流していく。


ユリウスは防戦一方の様に見えた

誰もがユリウスの敗北を確信したその時—


ユリウスの剣が先に動いた。

まるで水面を撫でるように滑らかに—


ダミアンの剣が凄まじい速さでユリウスに迫るも

瞬間—ダミアンからはユリウスの姿が消えたように見えた

かなり低い体勢でダミアンの懐に入り込むユリウス

ダミアンの剣は虚しく空を切り裂き

ユリウスの剣がダミアンの喉元に突きつけられた。


「そこまで!」


審判の声が響く。


「勝者・ユリウス!」


歓声と驚愕の叫びが入り混じる。


「嘘だろ……」「あのダミアン様が……」

ユリウスは静かに剣を収めた。


「素晴らしい一撃でした」


ダミアンは唇を噛み締めながらも—


「……見事だ」


一言だけ告げると立ち去った。


「あの……!良かったら今度アストライアの魔術について語り合いましょう!」


ユリウスが走って追いかけて行く

その姿を見てザナヴァスが呟いた。


「相変わらずめちゃくちゃだな……アイツ」


近年アストライア側にに見下されてきたヴァルデールの生徒達はこの結果に湧き立った。

そしてこの戦いをきっかけに学内のパワーバランスは一旦均等に近いまでに持ち直す事となる。


しかし当のユリウスはそんな事などつゆ知らずなのであった。

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