第3話
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瀬尾大輔
Age:29
Item:なし
Friend:長谷川リサ
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「よしっと。フレンド登録出来ましたよ」
「わたしもです」
俺は長谷川さんをフレンド登録しておいた。
こうしておくことで、LLLを使っていつでも連絡が取り合えるそうだ。
「ところで、怪我は大丈夫ですか? もしかして毒をくらってたりは……?」
キラービーの針には毒があると言っていた。
もし毒攻撃を受けていたとしたらかなりマズいのでは……。
そう心配して問いかけるが、
「いえ、問題ありません。わたしはダンジョンで手に入れた解毒薬を持っていますので」
長谷川さんはLLLを操作すると、紫色の液体の入った小瓶を具現化してみせた。
「まだ三つほどありますから、おひとつ差し上げます。どうぞ」
そう言って解毒薬を差し出してくる。
「いいんですか? すいません、ありがとうございます」
「アイテム収納の仕方は――」
「あ、それならわかります。今しがたひと通り説明書を読んだので」
LLLと一緒に宝箱の中に入っていた説明書は一読した。
自慢じゃないが俺は速読ができるので、短時間でLLLの使い方を理解することが出来た。
「それでは、わたしは一旦家に帰ろうと思いますが、瀬尾さんはどうなさいますか?」
「俺はもう少しここにいるつもりです」
と返すが、実際はもうこのダンジョンから出るつもりはない。
末期の癌と診断された俺の余命は、もういくばくもないのだ。
「そうですか……ではわたしはお先に失礼しますね」
そう言うと長谷川さんはLLLを操作して扉を出現させた。
説明書にあった通り、扉はLLLでいつでもどこでも出現させることが出来るようだ。
「瀬尾さん、さようなら。またお会いしましょうね」
「はい、また」
長谷川さんが扉の中に入ると、自然と扉は消えていった。
残された俺は、そこでふとあることに思い至る。
「この解毒薬……癌が治ったりしないかな?」
普通に考えて、癌は毒の一種ではないとは思うが、俺は医学には詳しくないし、ダンジョン産のアイテムにどの程度の効果が見込めるのかも定かではない。
不確定要素が多すぎるが、一か八か、駄目もとで試す価値は十分ある。
俺は小瓶のふたを開けると、
「ごくごくごく……ぷはぁーっ」
祈りを込めて、中の液体を勢いよく飲み干した。
「身体に変化は……特にないな」
のちのちわかったことではあるが、実はこの時、俺の身体の中では、解毒薬がよい方向に作用して、治る見込みのないほど肥大していた癌細胞を見事消し去っていたのであった。
◆ ◆ ◆
「さてと、死んだ気になってダンジョンの中を見て回るかっ」
こうして俺は、意気揚々とダンジョン探索を開始した。