第63話 ミステリーサークル①
忘れた事の注意書き!
このお話には名前が二つある人がいます。
地球での名前とガーデンでの名前と言う感じの使い分けと考えて頂けると良いかと思います。
ジョシュア・エバンズ=ヒオス
本間 来海=エシャ
銀ちゃん=ユーリー
神様(だった?)とお喋りをしたけど、だからと言って何も日常は変わらない。いつも通り、朝はモモ太の散歩をして、いつもの八幡宮で銀ちゃんとお喋りをして、猛ダッシュで学校に行って、週に1~2回はサークルに行って、サークルがない日はエバンズ家でギンちゃんと遊ぶ…そのついでに夕飯をご馳走になる…そんな平穏で平凡な日常。
昨年末のミステリー小説ランキングに入った小説はやっぱりどれも面白かった。みんなが面白いと思うものは面白い。
だけど、サークルの先輩たちの中には、今年の年末にランキングしそうなものを見つけることに全身全霊をかけている人がいる。その筆頭が山本 博則先輩である。昨年末のランキングも順位は違っていたものの、トップ3にランクインしたものは全て当てたそうだ。
彼が主催する月一のミステリー小説考察会では、博則先輩の今月のお勧めミステリーについて考察を述べ合うことになる。自分ではどの本が面白いかなんてなかなか見つけられないから、この考察会は楽しみにしている。
今まで、推理小説を読んで考察を述べるなんてしたことがない。学校の課題で感想文を書くなんてことはあったと思うけど、そういう時は推理小説は通常選ばない。
こういった考察会にはまだ数回しか出ていないので、自分の考察を述べると言うのはなかなか勇気が必要だ。それでも必ず一つは発言すようにしているが、どうも私のは感想って感じで、先輩たちから出てくるのはもっと深堀したような、これが考察っていうものか!と思わされるものばかり。やっぱり恥ずかしい。
来月分のお勧めミステリー小説を教えてもらい、大町駅の本屋に立ち寄り、そこで夏子と別れて家に帰った。今日は遅くなっちゃったからギンちゃんには会えないな~、会えない時間が愛を育てるのさ~なんて、そんな歌詞があった様ななかったような。
また明日、いつもの神社で会えるし。
何だろう、この心に冷たい風が吹く感じは?
ハッキリとは分からないけど、何かが、大切なものが消えてしまった感じ…
この感じを何て呼ぶんだろう?
広い広い大草原には風だけが吹いている。他には何もない。
ふと気が付くと、寝ていたみたいだ。
夕飯の後、ギンちゃんと一緒に居眠りをしていた。僕が目を覚ましたのに気づいてギンちゃんも目を覚ました。
ふと、明に会いたいなって思った。
「ねえ、ギンちゃん、これから明の家まで散歩に行かない?」
ギンちゃんを誘ってみた。
ギンちゃんも腹ごなしに丁度良いと言わんばかりに立ち上がり玄関に向かった。
玄関の扉に爪を立ててガリガリしていると、ヒオスがやって来て扉を開けてくれた。
「ギンちゃん、夜のお散歩?珍しいね。途中まで僕もご一緒していい?」
「にゃ~」
もちろんだと言っているみたい。
外に出ると、月明かりがきれい。
「きれいな月だね。ギンちゃん、『月が綺麗ですね。』ってどういう意味か知ってる?」
それは、そのままの意味だよね?今日のこの月みたいなことだよね?
ギンちゃんは特に何も考えていないみたい。まあ、ギンちゃんからしてみれば、月がどうかなんてどうでも良いのかもしれない。
暫く、三人で一緒に歩いていると、
「あれ、もしかして明の家に向かってるの?」
ヒオスがそう尋ねて来た。
「にゃ~」
そうだとギンちゃんが答えている。
「そうか、じゃあ僕はコンビニでアイスでも買って帰るよ~、気を付けて行ってきてね。」
そう言って、彼はコンビニに入って行った。
コンビニの中をギンちゃんと一緒に暫く眺めていた。彼は楽しそうに大きな箱の中を覗いている。あの箱の中にアイスが入ってるのかな?
こないだ、彼が、エシャと一緒に冷蔵庫の中を覗き込んで、『どのアイスがいい』なんて話をしていたのを思い出した。二人で各々が選んだアイスを食べながら『美味しい~』と言い合っていた。『ギンちゃんには上げられないんだ、ごめんね。』とも言っていたが、後でこっそりエシャが『バニラはだいじょうぶ』と言いながら僕たちに白いアイスをくれた。
牧場で明がくれたアイスも冷たくて甘かった、そのアイスも冷たくて甘かった。ギンちゃんはもっと食べたいと言って、その後、ずっとエシャに付きまとっていた。
また、明と一緒にアイス食べたいな。
一緒に選んで、一緒に食べて、美味しいねって言い合って。
そんな日が僕たちにも来るのかな?
そんなことを考えていたら明の家の前に着いた。彼女の部屋は二階だ。部屋の窓から灯りがこぼれている。屋根に上って窓越しに中を覗くと、明はベッドの上で本を読んでいた。
「こっちに気づいてくれるかな?」
「にゃ~」
暫くそこで中を覗いていると、明がこちらに気づいてくれた。
「あれ?ギンちゃん?」
そう言って、窓を開けて僕たちを中に招いてくれた。
「来てくれたの?」
「にゃ~」
明は僕たちを抱きかかえて、ベッドに座った。
「ギンちゃんが私の部屋に来るの、初めてだよね。」
そう言って、僕たちを膝の上に乗せてくれた。
「これ、今読んでる本、凄く面白いんだ~」
そう言って、本の内容を説明してくれて、明の感想も教えてくれた。
「この本を読んで、サークルのメンバーと一緒に考察会をするんだけど、考察会って言うのは、平たく言うと…なんでそう思ったかの理由も付け加えて感想を言い合う感じ?の会?かな…まあ、よくわかんないけど、皆とこの本のことについて、話し合いをするんだ。でもさあ、それが難しいんだよ。」
楽しそうにそんな話をしてくれた。
同じ本を読んで、感想を言い合うのか…何だか楽しそう。
僕も明と同じ本を読んで、お互いの感想を言い合ってみたいな。そんなことを思いながら、明の話を聞いていた。
暫くすると、ギンちゃんは窓の下で壁をガリガリし出した。帰りたくなったんだなと思った。ギンちゃんは何個かある自分のベッドが大好きだから、夜、寝るときは必ず自分のベッドで寝ると決めているみたいだし。
「帰っちゃうの?」
そう言いながら明が窓を開けると、ギンちゃんは窓辺に飛び乗り、外に出た。
ギンちゃんは明かりの方に顔だけ向けて、尻尾をゆっくり数回振った。そして家路についた。
「ギンちゃん、気を付けてね。また明日ね!」
明が小さな声でそう言いながら、手を振っている。
ギンちゃんはその声を気にもせず家に向かった。
僕はもっと明の話を聞いていたかったなって思った。でも、大丈夫、また明日の朝いつもの神社で会えるから。そう思ったら心が温かくなった。
やばい!
昨日、ギンちゃんが遊びに来てくれたことが嬉しくて舞い上がってしまい、眠れないので本の続きを読んだら、本が面白すぎて最後まで読んでしまい、そのせいで寝坊してしまった…今日はモモ太の散歩には行けない、猛ダッシュで学校に行かなければ遅刻する。
「何で起こしてくれなかったの?」
あんパンをコーヒー牛乳で流し込みながら、母に文句を言った。
「だって、明が寝坊する何て思わなかったから、今日は遅くていいのかなって思ってた。」
まあ、そうなのだ、いつも勝手に早く起きているから、そもそも母には私を起こさなければいけないなどと言う考えはないのだ。
ああ、今朝は銀ちゃんに会えない…学校帰りに会いに行こう。
でも、昨日は折角、銀ちゃんの方から会いに来てくれたのに、その話も沢山したかったのに、うぐ…ぐグググる~何てタイミングが悪いんだろう…私。
明、今日は来ないのかな?
そう思ったら、ちょっとだけ心に冷たい風が吹く感じがした。
昨日、うたた寝していた時の夢と同じ気持ちだ。こんな気持ち初めてだ…いや、昔、こんな気持ちになったような気がする。あれは、誰だったんだろう。
考えても思い出せない。もしかしたら、気のせいかもしれない。
そうだ、気のせいだ。だって誰だったか思い出せないんだから。そんなことを考えながら、立ち上がった。その時、ふっと不思議な場面が思い浮かんだ。
泉のほとりで水浴びをしている仲間を見かけて声を掛けた。
気持ち良さそうだったので自分も一緒に水浴びをしようと近づいたら、彼女が逃げた。
「どうして逃げるの?」
と尋ねると、
「だって、恥ずかしいから…ユーリーに見られるのが…恥ずかしい…」
彼女が小声でそう言った。今までそんなこと言われたことも、誰かと一緒に水浴びするのを恥ずかしいとも思ったことがなかったから、どうしてそんなことを言うのかなと不思議に思った…
あれは誰だったんだろう?顔が思い出せない。
そうだ、その後、暫くして彼女は突然いなくなったんだ…いなくなった?どういう意味だ?
こないだ、どうして僕は明に『エデンでは突然消えてしまうことがある。』なんて言ったんだろう?
何だか記憶が曖昧だ。でも、そんなこと、どうでもいいや。
ギンちゃんが散歩に行きたいと言っている。そろそろ帰ろう。
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