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第62話 山高ければ谷深し

 気が付くとソファーで眠っていた様だ。あの人は誰だったんだろう…


「あー、神様!」

 そう叫びながら、飛び起きた。


「気が付いた?」

 ダイニングでお茶を飲んでいるジョシュアさんが落ち着いた口調で尋ねて来た。


 辺りを見回しても…神様はられない。


「帰っちゃんったんですか?」


「うん、たった今帰ったよ。」


 テーブルの上には私が飲んでいたティーカップと食べかけのビスケット、その近くには、空のティーカップとコーヒーカップと皿が置かれていた。


「何しに来たんですか?神様…」


「さあ、お茶でも飲みに来たんじゃない?コーヒーまで飲んで帰ったよ。」


 マジか?


「ちなみに、あの神様は具体的に何をつかさどってたんですか?」


「うーん、病気平癒と家内安全?…よくわかんない。」


 マジか?それに、病気平癒ってよくそんな言葉知ってるなあ...


「冗談はさて置き、何か飲む?」


「え?冗談?…じゃあ、コーヒー下さい。牛乳入れて。」

 冗談だったんかい?辺りにはコーヒーのいい香りが漂っている。


 頭はすっきりしている。神様との話は内容も覚えている。恐竜の化石がどうとか、銀ちゃんとドライブしたとかそんな話。そして…

 銀ちゃんの処遇…それが決まれば、銀ちゃんは地球にいられなくなる…


「銀ちゃん、エデンに帰っちゃうんですか?」


「帰れるかどうか分からないみたい。」


「え?…じゃあ、ずっとここに居られるかもしれないんですか?」


「ずっとは無理かな。いずれは何処かに行くことになると思うよ。」


「何年後?」


「わからないな。」


 そうだよね、わかる訳ないよね。


「明日かもしれないし、来年かもしれないし、千年後かもしれないし…」


 千年?千年もあのままなんて可哀想、私だって頑張っても百年も一緒にいて上げられないよ。他に銀ちゃんが見える人が現れるのかな?ジョシュアさんみたいな人がいれば良いのか?同じガーデンから来た人ならば、銀ちゃん友だちになれるのか…


「そうですよね。」

 何だか涙が出て来た、銀ちゃんが可哀そうって気持ちと、もう会えなくなってしまったらどうしようって気持ちがごちゃ混ぜだ。いや、もう会えなくなってしまったらって気持ちが95%以上だ…私って自分勝手だな。


「ジョシュアさん…銀ちゃんに会えなくなっちゃったら、私どうしたら良いんだろう、苦しくなる…」


「え?」


 え?って?ここは慰める場面だろう?


「分りもしない先の事なんて考えても仕方ないんじゃないの?」

 そう言いながら、彼は牛乳の入ったコーヒーを私の前に置いた。


 鼻水をすすりながら一口飲んだ、コーヒーと牛乳のバランスが丁度良い、私の好みを把握してくれている。だが、言葉は極苦ごくにがだなぁ。


「それはそうなんですけどね…グズ」

 ああ、鼻水が出る。


「よく言うじゃない!何だっけ?えーと…」


 お、何か私を元気づけてくれる名言でもくれるのか?


「山高ければ谷深しって!」


「え?」

 何が言いたいの?株の相場の話?


「人生とことん楽しもうよってこと。」


「はあ?」

 ちょっと、意味が違うと思うけど…


「僕は平凡な性格なんだよ。真面目で勤勉でつまらない性格。それに、平民の出で、ガーデンにある小さな小さな村で生まれ育った田舎者。」


 何だこの話の展開は…


「でも勉強も運動も出来たから、運よく神の指示を実行する実行者ってのに成れた。始めのうちは嬉しかったし誇らしかった。でも、何回も生まれ変わって人生を繰り返すのが段々苦痛になって来た。」


「そういうもんなんですか?」


「一人はつまらないよ、でもエシャと出会った。彼女は最強の力を持つ種族のお姫様だったんだ。そのせいか、気位が高くて付き合いにくい性格だったし、問題ばっかり起こすし、大っ嫌いだったんだけど。一緒にいると人生が楽しいんだ、高い山に登って深い谷に落ちて、でも、一緒だと全部が楽しかった。僕たちだって、いつまで一緒にいられるのかなんて分からないけど、一緒に居られるうちは彼女と一緒に高い山も深い谷も楽しんで行こうと思ってる。」


 ん?惚気のろけを聞かされてるのか?

「惚気ですか?」


「そう、羨ましいでしょう?」


「はぁ…まあ、そうですね。そんな人と出会えたら幸せかもしれませんね。」


「銀ちゃんは爆弾だよ。きっと高い山も深い谷も味あわせてくれるはず。後は、二人がどうするかってだけかな。」


「二人がどうするかですか…」


「結局は二人の問題だもん。環境が周りがなんてどうでもいいでしょう。」


「まあ、そうですけど…」

 余りにも壮大すぎる話に、私が付け入る隙なんて無いような気がする。それに、銀ちゃんが私で良いと言ってくれるかどうかわからないし…


「結局、成るようにしか成らないしね。でも、無理する必要はないからね、駄目だと思ったら退くのも勇気だよ。」

 そう言って、彼は微笑んだ。


 確かにそうだ、成るようにしか成らない、それに、今までと何も変わらない…そんなに心配することでもないのかな?段々そんな気分になってしまった。


 彼の良く分からない惚気話に元気づけられてしまったのだろうか?




 私も…勤勉とは言えないが、真面目な性格。どちらかと言えばつまらない性格なのかもしれない。でも、銀ちゃんと一緒だったら、人生楽しいかもしれない。なーんて思った。


 その前に、先ずは銀ちゃんの彼女にならなければ…手をつなぎたいなあ。時間があるのかないのか分からないけど、少しずつ進んで行けたらいいのかな。


今回のお話はいかがでしたでしょうか?

感想などいただけると励みになります。

毎週水曜、日曜の14時半更新予定です。


宜しくお願いします。

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