第58話 化石にまつわるエトセトラ③
2026年 今年最初の更新です。
今年もよろしくお願いします。
忘れた頃の注意書き!
★ギンちゃん→猫(ヘーゼルの瞳の白い長毛たれ耳のスコティッシュフォールド)
★銀ちゃん→神使い(銀髪でいつも白いジャージを着ている。現在はエデンから絶賛追放中)
銀ちゃんは八幡宮の敷地外では猫のギンちゃんの体を借りて生きています。
「昨日は楽しかったよ。初めてダチョウを見たよ。」
いつもの神社のいつものベンチで銀ちゃんが昨日の事を思い出しながら嬉しそうにそう言った。
「楽しかったね。他の動物は見た事あるの?」
「牛はギンちゃんの散歩コースにいるし、馬は似たような動物がエデンにもいるよ。でも、ダチョウみたいな動物はいなかったなあ。」
そう言えば、小町町にも牛舎はあるけど、歩いて行くと遠かった様な…ギンちゃんの散歩コースってどこまで行くんだろう?
「化石園はどうだった?」
もしや、銀ちゃんは化石園よりも牧場の方が楽しかったのだろうか?
「地球では、動物も植物も命が終わると石になるの?」
「え?そういう訳じゃないけど…条件が揃えばああいう石になって化石として姿が残るだけで、全部がそうなる訳じゃないよ。」
「そうなんだ?じゃあ、石にならなかったら何になるの?」
え?生き物の命が尽きたら何になる?土にかえるだけ?
「うーん、土にかえるんだと思う。」
「石にならなかったら、土になるのか。地球って不思議だね。エデンでは生命に終わりがないから…」
「…エデンでは誰も亡くならないの?」
「なくなる?良く分からないけど死ぬことはない。そもそも、死ぬと言う言葉もない。でも、突然消えてしまう事はあるけどね…」
じゃあ、どうして銀ちゃんはその言葉を知っているのだろうか?ああ、地球に来てからテレビで知ったのかな?
突然消える?それは亡くなると何が違うのだろうか?
ふと、銀ちゃんの横顔を見ると、今まで見たこともないような深刻な表情をしていた。何か嫌なことでも思い出させてしまったのだろうか?
「銀ちゃん大丈夫?」
心配になって声を掛けると、銀ちゃんは我に返ったようで、いつものにこやかな表情で
「うん、大丈夫。化石園も楽しかったよ。恐竜、見てみたかったな。」
「よかった。生きた恐竜は見られないけど、恐竜の骨の化石があるよ。今度、一緒に観に行こうよ。」
「うん、また連れて行ってね。」
考古学概論の授業を受けながら、今朝のことを思い出して、ちょっと顔がにやけてしまった。
銀ちゃんに、あんな笑顔で『また連れて行ってね』なんて言われたら、次のデートプランを必死に考えてしまうわ~
一年生の内はまだ専門分野に分かれず、日本史、東洋史、西洋史、考古学などを浅く広く学んで行く。他にも研究の方法などの基本的な事を学ぶ。
そして、化石や恐竜なんてことは史学の範囲外である。多分そういうのは古生物学なんかで学ぶことなんだろうけど、人間の営みが始まるよりもずっとずっと遥か昔に、同じ地球上で人間以外の多種多様な生物たちの営みがあった。そして、その証が地層や化石に刻まれている。史学は文系、古生物学は理系とかけ離れている様にも感じるけど、どこか繋がっている気がして興味はある。
そう言えば、銀ちゃんが仕えているという神様って、どのくらい前から地球を見守っているのだろうか?
もしも、神様たちの守備範囲が人類関連に限定されていたら、20万年前のホモ・サピエンスの出現あたりから?そうだとしたら、そんな人類をどんな気持ちで神様たちは見守っていたのだろうか?自分が神様だったら、君たちには伸びしろしかないのだから、もう好き勝手に頑張ってくれ。以上。と思うかもしれないなあ…
じゃあ、もう少し後からかなぁ?
詳しくは知らないけど、6万年前くらいにはグレートジャーニーと呼ばれる、アフリカ大陸からのホモ・サピエンスの大移動があったとかいう話をよく聞くから、その辺り?
う~ん…わからん。考えても分からないことは、考えない。授業に集中しよう。
それに、神様関係のことはあんまり関わってはいけない気がする…何となくだけど。
「ペンダントの持ち主から、連絡はあったんですか?」
ちょっと前までは、夕飯目当てだと思われていたら恥ずかしいなとか、こんなにご馳走になってばかりで申し訳ないなとか思っていたけど、もうこれがルーティンになっている…
今日のメニューは油淋鶏!こういう中華っぽいものは中島さんの十八番だけど、最近は花沢さんも中華やエスニックにもチャレンジしているらしく、中島さんの美味しさとはまた違った味わいの油淋鶏が味わえるのである。幸せすぎる。
鶏肉を揚げ焼きしている花沢さんの横で、タレに使うネギを刻みながらそう尋ねると、
「そうそう、今日、手紙が来たのよ。手紙には差出人の名前も住所も書いてなくてね、消印は大町市南郵便局だったわね。」
「大町市ですか?広いからそれだけじゃ、どこに住んでいる誰かなんて分からないですよね。」
そんな話をしていたら、スイミングスクールに来海ちゃんを迎えに行ったジョシュアさんが帰って来た。
「花沢さぁ~ん、来海ね25メートル泳いだんだよ~」
そう言いながら来海ちゃんが花沢さんに抱きついた。
学童保育だけじゃなくって、スイミングスクールにまでお迎えに行くようになったのか…つくづく溺愛父娘
「明いらっしゃい。」
「今日もお邪魔してまーす。」
毎度お馴染みのやり取りである。
「明お姉ちゃん、来海ね、25メートル泳いだの。褒めて~」
そう言って、来海ちゃんが私にも抱きついて来た。
最近、富に懐かれている気がする。もちろん嬉しいが…溺愛父娘からの巻き込み事故的に周りから益々勘違いされるのではないかと些か心配している。
花沢さんバージョンの油淋鶏を堪能し、食後のココアを飲みながら手紙を読ませてもらった。
差出人は書かれていないし、宛先は私書箱になっている。
「ジョシュアさん、私書箱を使ってるんですか?」
「うん、仕事用の手紙はそっちに届くようにしてる。今のご時世紙じゃなくても良いのにって思うけど、どうしても紙で送って来る人もいるからね。」
そうだった、大河の話だとこの人は…なんだっけ、何だか難しそうなシステムの開発をしてそれを販売する会社をしてるとか言っていた様な…まあ何でもいいや。
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ジョシュア・エヴァンス様
前略
このたびは、私のことでご心配をおかけいたしましたようで、申し訳なく存じます。先日、お嬢さまが熱心に化石をご覧になっているご様子を拝見し、つい胸が熱くなりまして、ぜひこのペンダントをお受け取りいただければと思いました。私にとりましては思い出深い品ではございますが、決して高価なものではございません。どうぞお気遣いなく、お納めいただけましたら幸いに存じます。
草々
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「せめて、メールで連絡をくれたら返信できたんだけどなぁ、まさか手紙で来るとは思ってなかったよ。」
「来海ちゃんの話からすると年配の方みたいだから、手紙になるのも仕方なしかもですね。」
「メールアドレスと電話番号だけ教えておけばよかったなあ。相手の気持ちを無下にするのもなんだし、もう素直に貰っておけばいいのかなあ。本間さんに相談してみるよ。」
そう言って、ジョシュアさんはココアを飲んだ。
「そういえば、私、あの化石園で白髪の女性を見た気がするんですよね。ショートボブで白髪って言うよりはクリーム色って感じで品が良くって、ピアスが素敵で…螺鈿って言うんですか?あのくらいの年齢になったらああいうアクセサリーも似合うようになるのかな~なんて思ったんですよね。」
「螺鈿って貝で作った伝統工芸品のこと?」
凄いな、螺鈿がわかるんだこの人…本当は日本人なんじゃないのか?普通に漢字も読んでたし。
「ねえ、来海ちゃん、化石園であったおばあちゃんって、こんな感じのピアスしてなかった?」
スマホで似たようなピアスを探して、来海ちゃんに見せてみた。
「うん、してた。最初にそのピアスがキラキラしてて素敵だって褒めたら、あのペンダントをくれたの。このピアスはあげられないからって。」
「その人、黒い服着てた?」
「うん、着てたよ。黒いワンピース」
「そうなんだ…私が見た人は、濃いカーキ色のワンピースを着ていたような気がするんだよね…それにおばあちゃんって年齢には見えなかった、もっと若かったような…」
「ふーん、来海が見た女性は白髪のおばあちゃんで黒いワンピースを着ていた。明が見掛けた女性は、クリーム色の髪色で濃いカーキ色のワンピースを着ていて、年齢もそこまで高齢ではなかった。そして二人は同じ様なピアスをしていた…」
「やっぱり違う人ですよね、来海ちゃんと私が見掛けたって女性は…」
どう考えても違う気がするけど、何かが引っかかる…でもそれが分からない。モヤモヤするなあ。
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